イギリスの中国総領事館で暴行受けた男性、「引きずり込まれた」 会見で主張

Bob Chan speaks to the media on Wednesday

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画像説明, 被害者のボブ・チェン氏は19日、記者会見で当時の状況を話した

イギリス・マンチェスターの中国総領事館で、香港の民主化を求めるデモに参加していた男性が暴行を受けた事件で、この男性が19日、記者会見に臨み、総領事館に入るつもりはなかったと述べた。

男性は香港出身のボブ・チェン氏。英議会の議員らが開いた記者会見で、16日に中国総領事館の敷地内に引きずり込まれ、男性らに殴られ、病院での治療を要するけがを負ったと述べた。精神的にも傷ついたとした。

この事件をめぐっては、イギリスの国会議員が18日、中国の最高レベルの駐英外交官の1人が関与していたと非難している

騒動が大きくなるなか、中国は不法侵入の試みがあったと主張している。

負傷男性の主張

チェン氏によると、総領事館の外で16日、覆面をした男性たちに殴打された。男性たちの何人かは、横断幕などを撤去しようとしていたという。

「その後、総領事館の敷地内に引きずり込まれた。門にしがみついたが、蹴られたり殴られたりした。長くは持ちこたえられなかった」とチェン氏は説明。

「結局、総領事館の敷地に引きずり込まれた。男性たちからのパンチやキックを感じた。他の抗議デモ参加者たちが私を救い出そうとしたが、だめだった」と話した。

そして、「グレーター・マンチェスター警察の制服警官の男性が、私を門の外に引き出し、初めて攻撃がやんだ」と主張。

「改めてはっきり言っておきたい。私は総領事館に引きずり込まれたのであって、総領事館に入ろうとしたわけではない」と強調した。

動画説明, 中国総領事館職員がデモを妨害、暴力も=英マンチェスター

チェン氏はまた、今回の事件で衝撃を受けたと説明。「イギリスでこんなことが起こるとは思ってもいなかったのでショックだ。イギリスは言論の自由と抗議行動が基本的人権になっている場所だと、今も信じている」と述べ、こう続けた。

「暴力や外交的圧力がどれだけ強まろうと、それは変わらない。私は身体的にも精神的にも傷ついている」

さらに、まだ香港にいる家族への不安も口にした。

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グレーター・マンチェスター警察のこれまでの説明によると、事件当時は最大40人の抗議デモ参加者が総領事館の外に集まっていた。

午後4時ごろ、少人数の男性たちが「建物から出てきて、男性1人を総領事館の敷地内に引きずり込み、危害を加えた」という。

そして、「警官たちは男性の安全への危惧(きぐ)から介入し、被害者を総領事館の敷地から外に出した」という。

総領事館の敷地はイギリスの国土だが、同意なしに立ち入ることはできない。

中国側の主張

中国総領事館前で16日に開かれたデモは、中国共産党大会が北京で始まったのに合わせ、同国政府に抗議するものだった。参加者の多くは香港出身者だった。

総領事館の広報担当は、デモ参加者らが「中国の国家主席を侮辱する肖像画を正面玄関に掲げていた」と述べた。

中国政府はその後、総領事館の職員が嫌がらせを受けたと主張。総領事館の敷地内に入ろうとする動きもあったと述べた。

中国は英政府に対し、外交職員の保護を強化するよう要請したという。

Zheng Xiyuan on the right, and the man accused of being involved in the violence on the left

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画像説明, 総領事館での暴力に関わったとされる男性(左)と、郑曦原総領事(右)の写真

英政府の対応に批判

こうしたなか、英保守党のイアン・ダンカン・スミス議員は、今回の事件に対する英政府のこれまでの外交的対応を批判した。

ダンカン氏は、「まったく不十分だ。(中略)これは少しやさしい言い方だろう」と記者会見で述べた。

同氏はまた、この事件に関するイギリス側と中国当局者との会談は、「やさしく叱る」ようなものだったと述べた。

この記者会見に先立ち、ジェイムズ・クレヴァリー外相は英スカイニュースで、今回の事件について、「絶対に容認できない。抗議デモは平和的で合法的だった。参加者らはイギリスの国土にいたのであり、このような行動は絶対に容認できない」と述べた。

「私の理解では、グレーター・マンチェスター警察がこの件を捜査する。私はその結果の詳細を見た上で、私たちがさらに何をする必要があるか決める」

イギリスでは昨年、査証(ビザ)に関して新たな制度が導入され、同国の植民地だった香港の人口の約7割に、イギリスで暮らし、働き、学ぶ権利と、市民権を得るルートが与えられた。

その新たなビザでこれまでに10万人以上がイギリスに入国している。背景には、香港で中国政府の影響力が増し、物議をかもした香港国家安全維持法が導入されたことがある。

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<分析> 英中関係に影響を与える可能性のある事件――キャロライン・ホーリー外交担当編集委員

今回の事件をめぐって、英議員らは政治的な隔たりを越え、英政府に対し、中国により厳しい態度を取るよう求めている。

マンチェスターが地盤のアフザル・カーン議員(労働党)は、中国外交官らの行動について「レッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と述べた。

イアン・ダンカン・スミス議員(保守党)は、中国の影響力がいかに遠くまで及ぶかを示した出来事だと主張。英政府は経済強国の「報復」を招くことを恐れて対応が慎重になっているとし、懸念を示した。

両議院およびボブ・チェン氏は、英政府が事件の関係者を追放すべきだという意見で一致している。暴行は公式には中国の領土とされる場所で起こったので、関係者を訴追できない可能性がある。

グレーター・マンチェスター警察は、「複雑で繊細な調べ」の一環として、証拠となる映像を持つ人に、警察のウェブサイトでアップロードするよう呼びかけている。

たしかに「繊細」な問題だ。イギリスと中国の関係に影響を与える可能性をはらんでいる。

警察は、捜査には「時間がかかる」としている。一方、多くの英議員は、関与した外交官が特定され次第、迅速かつ強力なメッセージを中国に送る必要があるとしている。