フィリピン大統領にマルコス・ジュニア氏が就任 一族の復権を象徴

Marcos and Duterte

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画像説明, フィリピン大統領に就任したフェルディナンド・マルコス・ジュニア氏(中)と、前任のロドリゴ・ドゥテルテ氏(右)

フィリピンで30日、フェルディナンド・マルコス・ジュニア氏(64)が新大統領に就任した。首都マニラで宣誓式が行われた。

「ボンボン」のあだ名で呼ばれるマルコス・ジュニア氏は、5月の大統領選で地滑り的勝利を収めた。副大統領には、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の娘のサラ・ドゥテルテ氏が就任した。

マルコス・ジュニア氏は、1986年に民衆蜂起で権力の座を追われたフェルディナンド・マルコス元大統領の息子。今回の大統領就任は、マルコス一族の復権として大きな意味を持つ。

宣誓式は現地時間の正午、マニラの国立博物館で行われた。マルコス・ジュニア新大統領は、妻と3人の息子と共に、フィリピン軍などのパレードに手を振り、笑顔を見せた。

大統領として初の演説では、集まった支持者に対し、「フィリピンの民主主義史上最大の、選挙による信任」を与えられたとして感謝した。

Military officers march during a parade rehearsal, a day before the inauguration of president-elect Ferdinand "Bongbong" Marcos Jr., outside the National Museum in Manila, Philippines, June 29,

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画像説明, 大統領就任式のパレードのリハーサル風景

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マルコス・ジュニア大統領は今後、数年にわたるパンデミックからなお回復途上にあり、インフレ上昇と債務増加で経済に明るい見通しの立たないフィリピンを引き継ぐ。

同大統領に批判的な人々は、雇用拡大や物価上昇対策といった公約について、実際の政策をどう改革させるかの議論がほとんどされていないと指摘している。

一方で、ドゥテルテ政権で顕著だった、多くの死者を出してきた麻薬撲滅戦争や報道の自由への抑圧というイメージから、フィリピンを脱却させる役割を期待する声もある。

就任式の数日前には同国の最高裁が、脱税での有罪判決は新大統領の就任資格を剥奪するものではないとの判決を出している。

さらに29日には、フィリピン当局が政権批判を重ねてきたニュースサイト「ラップラー」の事業免許を再び取り消したと発表した。ラップラーは、国内でドゥテルテ政権を公然を批判してきた数少ない報道機関。共同創設者で編集長のマリア・レッサ氏は昨年、表現の自由のために闘ったとしてノーベル平和賞を受賞している

「息子もまた、多くを成し遂げる」

マルコス・ジュニア氏は就任演説で、亡き父フェルディナンド・マルコス元大統領に賛辞を贈った。

マルコス元大統領は、20年にわたってフィリピンで独裁体制を敷いていた。戒厳令を発し、裁判所や企業、メディアを掌握。また、軍や警察を使って何千人もの反体制派や政敵を逮捕・拷問した。その間、多くの人が殺害された。

1986年の民衆蜂起を受けて政権を追われると、マルコス一族はハワイへと逃亡。マルコス・ジュニア氏は1991年にフィリピンに戻り、政治家となった。

マルコス・ジュニア氏は演説で、「フィリピンが独立してから、ほとんど何も達成されていないことを目の当たりにした男を、かつて私は知っていた。彼は多くを成し遂げた」と語った。

「その息子もまた、多くを成し遂げるだろう。私が弁解するなどあり得ない」

一族の復権闘争の集大成

新大統領はまた、大統領選中に繰り返した「国家の一致団結」を唱え、「怒りや過去への郷愁」をもってはいけないと強調した。

マルコス・ジュニア氏の就任は、マルコス一族が数十年にわたって行った、政治的栄光を取り戻す闘争の集大成といえる。

同氏はソーシャルメディアでの人気に支えられており、独裁時代を知らない若い世代へのアピールに成功したとされる。

一方で、マルコス・ジュニア氏の発信は誤情報に満ちており、旧マルコス政権における残虐行為を隠蔽(いんぺい)しているとの非難もある。同氏はこうした疑惑を否定している。

また、サラ・ドゥテルテ氏を副大統領候補として指名したことで、北部のマルコス一族の支持者らと、南部ミンダナオ島のドゥテルテ一族の支持者らが合流し、さらに勢いが増したという。

追加取材:ヴィルマ・シモネット