米マクドナルド、ロシアから恒久的に撤退 事業を売却へ

A woman walks past a McDonald's restaurant in Moscow in March 2022

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ファストフードの米マクドナルドは16日、参入から30年以上がたつロシアから恒久的に撤退すると発表し、レストランの売却を開始した。同社は3月、ロシア全土の850店舗を一時的に閉鎖していた。

マクドナルドは撤退の理由として、ウクライナでの戦争による「人道危機」と「予想できない運営環境」が決定打となったと説明した。

同社は1990年にモスクワに1号店を出店。冷戦の緊張緩和を象徴する出来事として受け止められた。

その1年後にソヴィエト連邦が崩壊し、ロシアは欧米諸国の企業に市場を解放した。しかし30年以上がたった今、欧米企業は次々とロシアから撤退し、マクドナルドも続くこととなった。

動画説明, マクドナルドがロシアから撤退 市民の反応は

マクドナルドのクリス・ケンプチンスキー最高経営責任者(CEO)は、社員とサプライヤーに向けたメッセージの中で、「これは前例のない、重大な結果をもたらす複雑な問題だ」述べた。

「食料を供給し、何万人もの一般市民を雇用し続けることは、確かに正しいことだと言う人もいるかもしれない」

「しかし、ウクライナでの戦争による人道的危機を無視することはできない。また、我々のロゴである『ゴールデンアーチ』が、32年前にロシア市場に参入した時と同じ希望と約束を象徴しているところを想像できない」

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マクドナルドは今後、ロシア国内の全店舗を現地の買い手に売却し、店名やブランディング、メニューの撤去を含む「脱アーチ化」を進める。その上で、ロシアでの商標は維持するという。

また、店舗売却が完了するまで従業員6万2000人に給与を支払い続けることや、従業員の「将来的に買い手となる可能性のある企業への雇用」を保証することが最優先事項だ述べた。

同社はロシア市場からの撤退に伴い、最大14億ドル(約1800億円)の非現金費用を計上する見通し。

ロシア市場では先に、仏自動車ルノーが事業売却を発表している。ロシアの同業アフトバスの保有株式68%をロシアの科学研究所に、ルノー・ロシアの株式をモスクワ市にそれぞれ譲渡する。

モスクワ市は、ルノーのロシア資産はすでに国有資産になったと明らかにしており、大手外国事業の国有化としてはウクライナ侵攻以降で初の事例となった。

People queue to enter a newly opened McDonald's on Gorky Street in Moscow in 1990

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画像説明, マクドナルドは1990年、モスクワにロシア1号店を出店。冷戦の緊張緩和を象徴する出来事だった

ロシアとウクライナは昨年、マクドナルドの世界売上高の約9%を占めていた。

ウクライナの108店舗は紛争のために現在も閉鎖されているが、同社は従業員全員に給料を全額支払い続けている。

マクドナルドは当初、ロシア事業の停止が遅れていると批判を受けていた。3月に事業を停止する以前には、ボイコットを呼びかける声も出ていた。

ロシアのウクライナ侵攻以降、これまでにスターバックス、コカ・コーラ、リーバイス、アップルなどの国際企業がロシア市場から撤退したり事業を停止したりしている

一方、バーガーキングや英小売マークス・アンド・スペンサーなどは、複雑なフランチャイズ契約のために店舗を閉鎖できないとしている。

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<解説>スティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長

これは一時代の終わりだ。私は1990年1月、モスクワにマクドナルドのロシア1号店が開店した時、行列に並んだ1人だ。ソヴィエト連邦時代の話だ。

たくさんの人が店舗の外に並び、中に入るまでに数時間がかかった。しかしその熱気は素晴らしいものだった。

アメリカのハンバーガーやフライドポテト、パイといったものは、モスクワが欧米を迎え入れた象徴だった。温かな食事が冷戦を終わらせたといってもいい。

だが時代は変わってしまった。ロシアと西側諸国は、互いへの興味を失ってしまった。

ロシアのウクライナ侵攻は国際的な非難と制裁を引き起こし、ロシア政府は世界ののけ者になってしまった。

ロシア政府はその一方で、西側諸国がロシアの沈没を目論んでいると、いつものように非難を返している。

今年3月には多くの国際企業がロシアでの事業停止を発表したが、各社は状況が自然と解決し、事業を再開できると願っていた。

今回マクドナルドが事業売却と完全撤退を決めたことは、現状が元通りになることはなく、ロシア政府が「特別軍事作戦」と呼ぶウクライナでの行いが、状況を長期的に変えてしまったと、同社が判断したことを示している。

これは始まりに過ぎない。多くの国際ブランドが今後、ロシアを離れていくだろう。

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