住宅地に砲撃、ICCが戦争犯罪の捜査開始 初の都市制圧 ウクライナ侵攻7日目

画像提供, EPA
ロシアによるウクライナ侵攻7日目の2日、南部マリウポリと東部ハルキウ(ハリコフ)の少なくとも2つの主要都市で、ロシア軍が包囲を進めた。ロシア軍は3日朝までに、南部の要衝ヘルソンを制圧した。各地で住宅地も激しい砲撃を受けた。国際刑事裁判所(ICC)は同日、ロシアによる戦争犯罪の捜査を開始したと発表した。
ロシアが南部の要衝制圧
ロシア軍は3日までに、南部の要衝ヘルソンを制圧した。侵攻開始から初めて、主要都市を制圧したことになる。
ヘルソン地方管理局長のヘナディ・ラフタ氏はフェイスブックで3日朝、ロシア軍が地方行政府を完全に掌握したと書いた。
「しかし私たちは職務を諦めていない。私がトップを務める地方行政府のスタッフは引き続き、この地域の住民を支援するために働いている」とラフタ氏は書き、「私たちは人道支援を待っている」と述べた。
ラフタ氏はさらに「偽ニュースを信じないように。パニックしないで」と呼びかけた。
これに先立ちヘルソン市のイーゴリ・コリハエフ市長は2日、フェイスブックで「市役所に今日、武装した客が訪れた」として、「ここにはウクライナ軍はいない。民間人と、この街で生きて暮らしたい人だけだ」と、ロシア兵に伝えたと書いた。
市長はさらに、ロシア軍が現地時間午後8時から午前6時まで夜間外出を禁止したほか、食料や医薬品などを運ぶ車両の市内入場は認めると告げたと書いた。車両は「最低」速度での走行のみが認められ、歩行者は3人以上がまとまって移動することは禁止されたという。
「今のところこういう状況だ。頭上にはウクライナの旗がある。その状態を維持するには、(ロシア軍の)要求に応じなくてはならない」と、市長は続けた。
南部港湾都市マリウポリは
マリウポリのセルヘイ・オルロフ副市長は2日、砲撃が15時間以上続いた後で、市内は人道危機的な状況にあると述べた。
副市長によると、住宅地の1つで数百人が死亡したとみられるという。それらの死者には、攻撃が始まって以来連絡が取れなかった、副市長の父親も含まれているという。
ウクライナ軍は、ロシアの空挺部隊がウクライナ第2の都市ハルキウに降り立ったとした。また、同市近郊では市街戦が発生しているとした。

首都の地下鉄駅でまた不安な夜
首都キーウ(キエフ)の地下鉄当局によると、最大1万5000人が市内の地下鉄駅に避難している。10万人まで収容可能だという。
地下鉄当局は、水、トイレ、食料、医薬品を確保していると説明。「多くの人が行き場を失っている。地面の数メートルと毛布1枚が、人々の住まいとなっている」、「温かい服、食べ物を持参し、特に女性や子ども、高齢者など、身近な人を支援するよう呼びかけている」と、BBCウクライナ語に話した。

画像提供, Getty Images
多くのキーウ市民は2日から3日にかけても、夜を地下鉄駅で過ごした。
市当局は、最大1万5000人が地下鉄駅に避難していると見ている。
この間、4つの大きな爆発があり、地下シェルターに避難するBBC記者たちによると地下2階からでも爆音が聞こえたという。

第3次世界大戦は「核戦争」=ロシア外相

ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は3日、モスクワで記者会見した。
外相は、制裁に代わる選択肢は第3次世界大戦しかないとジョー・バイデン米大統領が述べたと主張した上で、第3次世界大戦は「核戦争」しかあり得ないとした。
外相は、そのようなことを考えているのは西側の政治家のみで、ロシア国民はそのようなことを考えていないと強調。「本当に我々に対して本物の戦争を仕掛けるなら、そのような計画をする者は(核戦争の展望を)考えるべきだ。そういう展開も計画されていると私は思う」と話した。
外相はハリウッドにたびたび言及し、西側メディアが脚本を書いた「このハリウッド映画を見るだけでなく」、「究極の悪がどこにいるのか見るべきだ」と呼びかけた。さらに、北大西洋条約機構(NATO)はロシアを犠牲に西側の安全保障を強化しようとしていると非難した。
ラヴロフ外相はさらに、ウクライナ政府がネオナチ政権で、ウクライナ各地で略奪を行っているのはギャングだというロシア政府の公式見解を繰り返した。こうした主張の裏付けを、BBCは確認できていない。
外相は、ウクライナ政府が「民間人を人間の盾にしようとしている」というロシア政府の公式見解も繰り返した。アメリカをナポレオンやヒトラーになぞらえ、「ナポレオンやヒトラーは当時、欧州を征服しようとした。今ではアメリカが同じことをしている」とも述べた。
民間人227人死亡と国連

画像提供, EPA
国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによるウクライナ侵攻の最初の5日間で、民間人227人が死亡したと発表した。民間人の負傷者は、ウクライナ全土で525人に上っているとした。
同事務所は声明で、「これらの犠牲の多くは、広範囲に威力が及ぶ爆発物によるものだった。重砲、多連装ロケットシステム、空爆などによる爆撃が含まれている」とした。
また、報告に遅れが生じており、現実の死者数は「ずっと多い」だろうと指摘。政府が管理する地域で特に死者が多いとの見方を示した。
ICCが戦争犯罪の捜査開始
国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン主任検察官は2日、ロシアがウクライナ侵攻で戦争犯罪を犯した疑いについて、捜査を開始したと発表した。
カーン氏は声明で、「ウクライナの状況の初期調査で、この裁判所の管轄権が及ぶ犯罪があったと信じるに十分な根拠を得た。さらに、証拠となり得る事案を確認した」とした。
カーン氏は先月28日、捜査開始の許可をICC裁判所長会議に求める意向を示していた。しかし、イギリスなど39カ国がICCに捜査を付託したことを受け、直ちに捜査を開始する。
英外務省は2日夜、イギリスが付託に向けて「同盟国をまとめる努力を主導した」とする声明を出した。欧州連合(EU)の全27カ国、カナダ、ニュージーランド、スイスなどが、その中に含まれている。
ドミニク・ラーブ副首相兼法相は、「戦争犯罪となる命令を出したロシアの指導者や将校は全員、法廷に立ち、ゆくゆくは刑務所に入ることになると知るべきだ」との声明を出した。
リズ・トラス外相は、プーチン政権が「無差別に」民間人を標的にしていると主張。「イギリスは同盟国と緊密に協力し、正義が実現がするようにする」とした。
ロシアは戦争犯罪について定めたジュネーヴ条約の締約国だが、ICCからは2016年に離脱した。クリミア半島の併合を、占領と判断されたのを受けてのことだった。
ICCによって起訴された人物は、ICCの管轄権が及ぶ国では拘束されることになる。そのため、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は生涯、ロシアか同国の同盟国内にとどまる可能性が高い。


国外避難100万人以上
ウクライナで砲撃が続き、多くの住民が避難している。国連は3日、すでに100万人以上が国外に逃れたと見方を示した。
欧州連合(EU)は、避難民の数は400万人に達する恐れがあるとして、EU加盟諸国は避難民を歓迎すると述べた。

避難する人たちの大半は西へ向かい、ポーランド、ルーマニア、スロヴァキア、ハンガリー、モルドヴァへ入っている。少数はロシアとベラルーシへ避難している。
ポーランド国境警備隊によると、侵攻開始以来ポーランドはすでに57万5000人以上を受け入れた。3月2日だけでも、9万5000人がウクライナからポーランドに入ったという。これまでの1日の最多記録は2月28日の10万人だった。
ミサイルが傷つけたのはユダヤ人墓地

画像提供, Reuters
首都キーウでは、バビ・ヤール・ホロコースト追悼施設がミサイル攻撃を受けたと、BBCは1日に伝えた。ゼレンスキー大統領も、ロシアのミサイルが慰霊碑を攻撃したとして、「歴史は繰り返す」と非難した。
ユダヤ人団体も、この砲撃を非難した。同施設は、1941年にナチス・ドイツがウクライナに進軍した際、2日間で3万3771人のユダヤ人を銃殺した場所に作られた。
ただし、イスラエル紙イェディオト・アハロノトの記者が攻撃後にバビ・ヤールの慰霊碑を訪れたところ、ミサイル3発が近くに落下したものの、慰霊碑そのものは「無傷」だったという。
また、イスラエルの政治家でバビ・ヤールの広報担当、ナタン・シャランスキー氏は米ユダヤ人誌「フォーワード」に対して、ロシア軍のミサイルは敷地内のユダヤ人墓地に損害を与えたと説明した。

画像提供, Getty Images
国連総会が決議
国連総会は2日の緊急特別会合で、ロシアの侵攻を非難する決議案を賛成多数で採択した。ロシア、ベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリアの5カ国が反対した。
ベラルーシは、シアの長年の同盟国で、ロシアの「顧客国」と呼ばれる。ウクライナ侵攻では、ロシア軍部隊の一部がベラルーシから国境を越えて進軍した。
シリアは、バッシャール・アル・アサド大統領が内戦時、ロシアの大規模な軍事支援を頼りに政権を維持した経緯がある。
ロシアと歩調を合わせ、NATO拡大に反対してきた中国は、採決で棄権した。中国は先週も、国連安全保障理事会における同様の採択で棄権した。
別の現実

ロシアのメディアは、ウクライナが民間人を人間の盾として使うなど、戦争犯罪を犯していると報じている。
情報戦が繰り広げられる中、BBCはウクライナで新たな短波ラジオの放送を開始した。ウクライナとロシアでのニュース提供を、困難な状況でも続けるためだとした。
新たな放送では、ワールド・サービスの英語ニュースを毎日4時間流す。ウクライナとロシアの一部で、グリニッジ標準時の午後4~6時と、午後10~零時に聞くことができる。
BBCのティム・デイヴィー会長は声明で、「戦争の最初の犠牲者は真実だと、よく言われる。偽情報とプロパガンダにあふれた紛争では、人々が信頼できる、事実に基づき独立したニュースが必要だ。注目すべき動きとして、何百万人ものロシア人がBBCにチャンネルを合わせているということが起きている」とした。
また、「私たちはできる限り、ロシアの人々に真実へのアクセスを提供し続ける」とした。
BBCはオンラインでもウクライナ語とロシア語で、今回の紛争の最新情報を伝え続けている。
ロシア車列は「失速」と米国防総省

画像提供, Maxar
米国防総省は2日、ロシア軍が直近の24~36時間でほとんど前進していないとの見方を示した。
キーウに向けて南進する全長60キロの車列は、ウクライナの戦闘員らによって「失速状態のままだ」と、同省のジョン・カービー報道官は報道陣に説明。
「ロシアは再編成と、実現できていない前進について再検討しているとみられる」と述べた。
カービー氏はまた、ウクライナ南部におけるロシア軍への抵抗は、北部に比べて全般的に小さいとした。
ロシアが制圧したと主張している南部ヘルソンについては、陥落が確認できていないとした。
さらにロシア軍について、勢いが減速しているものの未使用の武力を保有しているとし、警戒が必要だとした。











