ロシア一部撤収の説明、「虚偽」と米高官 NATOなども「確認できない」

A Russian tank on a train

画像提供, EPA/Russian defence ministry

画像説明, ロシアはウクライナ国境地帯からの部隊撤収を開始したとしている

ロシアがウクライナ国境付近からの部隊の一部撤収を発表したことについて、米政府高官は16日、「虚偽」の主張だと述べた。北大西洋条約機構(NATO)トップも16日、そうした動きは確認できないと話した。

米政府高官は記者団に、ロシアがここ数日で最大7000人の兵士を増派したと説明。ロシアは「虚偽の」口実にかこつけて「いつでも」ウクライナに侵攻し得るとした。

高官はまた、「ロシア政府は昨日、ウクライナ国境から部隊を引き上げているとした」、「その主張は世界各地で大きな注目を集めた。だが現在、それは虚偽だったとわかっている」と話した。

ドイツ首相府は同日、オラフ・ショルツ首相とジョー・バイデン米大統領がこの日の電話会談で、ロシアは緊張緩和に向けて実際に部隊撤収の動きを見せなくてはならないと、一致したと明らかにした。

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NATOトップも懐疑的

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はこの日、ブリュッセルの本部で国防相らと会合をもった。

事務総長も、ロシアが一部部隊を撤収させたとの情報に懐疑的な見方を表明。「現地で撤収の動きは見られない」と記者会見で述べた。

そして、「もちろんこれは変わるかもしれない。だがロシアは、攻撃準備を整えた大規模な侵攻軍を維持している」と指摘した。

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領もBBCに、「部隊撤収はまだ確認できない。その話を聞いているだけだ」と話した。

ロシアはウクライナ国境付近に10万人以上の兵士を集結させている。だが、侵攻計画はないと主張。西側の懸念を「ヒステリー」と呼んでいる。

ロシア高官はこの日のストルテンベルグ氏の現状評価についても、正しくないとした。

ロシアの政府報道官は16日、軍事演習の終了を受けて、部隊の一部を撤収させていると強調。国防省はこの日、ロシアが併合しているクリミアから戦車が引き上げている場面だとする映像を公表した。

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脅威が「新しい日常」に

ストルテンベルグ事務総長はまた、ロシアの脅威が欧州にとって「新しい日常」になってしまったと警告。「ロシアは軍を使って他国を脅し、要求をのませようとしている」とし、NATOとして東方強化を検討していると述べた。

同時に、対話の用意はできたままだと説明。ロシアが「紛争の瀬戸際から一歩下がる」のはまだ可能だとした。

ストルテンベルグ氏によると、NATOは欧州中部と南東部で、新たな戦闘部隊の創設を検討している。自給自足型の最少規模の部隊だという。

これは、2014年以降で2700億ドル(約31兆円)を投じてきた欧州防衛の強化策の一環だと、ストルテンベルグ氏は説明。それでもNATOは脅威ではないと、ロシアに印象付けることに努めた。

同氏はまた、ルーマニアでそうした部隊を主導することを、フランスが申し出ているとした。

そうしたなか、ロシア外務省はストルテンベルグ氏の発言に「もはや興味を失っている」と述べた。

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英首相も「証拠ない」

イギリスのボリス・ジョンソン首相は16日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長と電話で協議した。その中で、「ロシア撤収の証拠は現在ほとんどない」と述べた。

英国防情報当局トップのジム・ホッケンハル中将は、ロシアがむしろ軍を増強し続けているとの見方を示した。

「追加の装甲車やヘリコプター、野戦病院がウウクライナ国境に向けて移動していることなどが目撃されている」とホッケンハル氏は主張。「ロシアはウクライナ侵攻を実行すべく、軍を大規模配置している」とした。

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ウクライナではサイバー攻撃被害と

ウクライナでは「団結の日」とされた16日、国内各地で青色と黄色の同国国旗がはためいた。

同国のゼレンスキー大統領は、この日にロシアによるウクライナ侵攻があるかもしれないと米情報機関が報告したことから、「団結の日」にすると宣言をしていた。

ウクライナは15日、国防省と銀行2行のウェブサイトがサイバー攻撃を受けたと発表した。原因は不明。ウクライナは過去にも、オンラインのインフラが大規模な攻撃を受けており、その時にはロシアによるものだとしていた。

ロシア政府は関与を否定している。

ロシアについては、全面的な軍事侵攻ではなく、基幹インフラへのサイバー攻撃など、より目立たない方法でウクライナの不安定化を図るのではないかとの懸念が、以前から指摘されている。

ロシアの情報戦を警告

一方、米国務省は16日、ロシア当局がメディアに情報を流し、ウクライナ侵攻の際に世論に影響を与えようとしていると警告した。

同省のネッド・プライス報道官は、ウクライナ東部で「民族虐殺」が起きていると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が主張しているとして懸念を表明した。

ロシア当局は、ウクライナ東部の紛争地帯にある、民間人数百人の大規模墓地とされる場所を調べているとした。

A graphic showing Nato's expansion since 1997
画像説明, 紫色は1997年より前にNATOに加盟した国。黄色は1997年以降に加盟した14カ国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、ルーマニア、スロヴェニア、クロアチア、モンテネグロ、アルバニア、北マケドニア、ブルガリア)