IS指導者、シリアで死亡 米軍が長期計画の作戦実施

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アメリカのジョー・バイデン大統領は3日、同国軍がシリア北部で夜間の急襲作戦を実行し、イスラム国(IS)の指導者と幹部が死亡したと発表した。
バイデン氏らによると、米特殊部隊は3日未明にかけて、銃撃戦の末にアブ・イブラヒム・アル・ハシミ・アル・クライシ指導者の隠れ家に攻め込んだ。同指導者は住居ビルの3階で、妻と子ども2人を巻き添えに自爆した。同指導者の死亡は、指紋とDNA解析によって確認されたという。
バイデン氏は演説で、クライシ指導者が死亡したことにより、「世界にとってのテロの脅威が取り除かれた」と話した。
また、「村全体を消滅させた、胸が張り裂けそうな集団虐殺の話を私たち全員が覚えている。何千人もの女性、少女が奴隷として売られ、レイプされ、戦争の武器として使われた」と主張。「私たちの国の勇敢な部隊のおかげで、このおぞましいテロ指導者はもういない」と述べた。
子どもや女性も死亡か
作戦は数カ月前から計画されていた。米国防総省のジョン・カービー報道官は、クライシ指導者の副官の1人(氏名は未発表)とその妻も、今回の作戦で死亡したとした。夫妻は米部隊に向けて発砲してきたという。
また、作戦実施中の約2時間に米部隊に近づいて来た、「敵対的と思われた」少数の集団と戦闘になり、2人を殺したと明らかにした。カービー氏は、付近で「子ども1人が殺されたようだ」としたが、「殺された人すべてについて完全に把握」はしていないと述べた。
ISは正式なコメントを出していない。
「シリア民間防衛隊」の名前でも知られる、現地の救助団体ホワイト・ヘルメッツは、今回の作戦が実施された住居で、少なくとも子ども6人と女性4人を含む13人の死体が見つかったと発表した。


今回の作戦は、トルコ国境に近い、反政府勢力が支配するイドリブ県アトマ郊外にある、3階建て住居ビルを狙った。
一帯は、ISと激しく対立しているジハーディスト(イスラム聖戦主義者)グループや、トルコの支援を受けてシリア政府と戦っている反政府勢力の拠点となっている。
米当局によると、事前の情報で、クライシ指導者はこの住居ビルの2階で家族と暮らしていることがわかっていた。同指導者は伝令人を使って、シリアなどのISに指令を発していた。屋上での入浴以外、建物の外に出なかったという。
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1000万ドルの報奨金
クライシ指導者は1976年にイラク・モスルで生まれた。武闘派ジハーディストとして悪評が高く、「破壊者」と呼ばれていた。ハジ・アブダラなどの別名でも知られた。
2019年10月、IS指導者アブ・バクル・アル・バグダディ容疑者が米軍の襲撃を受けて自爆死したのを受け、その役割を引き継いだ。
ISはバグダディ容疑者の死の4日後に、クライシ指導者の昇任を発表した。だが、同指導者はそのしばらく前から、昇任に備えて戦闘から離れていたとされる。
米当局はクライシ指導者に関する情報に、1000万ドル(約11億5000万円)の報償金を出すと呼びかけていた。

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今回の作戦について、バイデン氏は昨年12月に詳細な説明を受けていた。
同氏は3日、作戦実行の最終的な指示を出した。その後、ホワイトハウスのシチュエーションルーム(指令室)で進展を見守った。
現地情報筋によると、夜間にヘリコプターで降り立った米特殊部隊は、地上で強固な抵抗にあい、車両に搭載された対空砲による砲撃も受けた。戦闘音は、米軍のヘリコプターが去った後、約2時間続いたという。
米国防総省のカービー報道官は、米部隊が住居ビルから、子ども8人を含む10人を退避させたと述べた。
バイデン氏によると、米兵は全員無事に帰還したという。

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BBCのゴードン・コレラ安全保障担当編集委員は、ISの支配地域や求心力は以前と比べて縮小していると指摘。だがここ数カ月、イラクとシリアで再編成に向けた動きがあるのを、西側の対テロ当局が確認していると説明した。先月、シリア北東部で起きた大規模な刑務所襲撃も、その1つだとした。
その上で、アメリカはクライシ指導者を殺すことによって、ISの再興を食い止めたい考えだと解説した。
米シンクタンクの外交専門家らは、クライシ指導者の死亡でISは打撃を受けるものの、組織は再編して存続するだろうとみている。










