英官邸スタッフが辞任、昨年のクリスマスパーティーに関する動画流出で

画像提供, PA Media
イギリスで厳しいパンデミック対策が敷かれていた昨年12月に、首相官邸で多人数のクリスマスパーティーが開かれていたと報道されている問題で、当時首相報道官を務めていたアレグラ・ストラットン政府顧問が8日、辞任を表明した。
ストラットン氏をめぐっては、このパーティーの数日後に同僚らと想定記者会見を開き、パーティーに関して冗談を言っていた映像が流出。非難の声が上がっていた。
ストラットン氏は8日、記者団を前に涙ながらに声明を読み上げ、「この発言を生涯、後悔し続けるだろう」と語った。
ボリス・ジョンソン首相はこの件について、この日の議会の質疑応答で謝罪。動画に「怒りを覚えている」と述べ、内部調査を行うと約束した。
しかし最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、パーティーの報道から1週間もの間、首相官邸はパーティーで何があったのか明らかにするのを拒んできたと指摘。首相は「国民をばかにしている」と批判した。
問題の映像をITVが放送してから24時間が立たないうちに、ストラットン氏は自宅前で声明を読み上げ、首相の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)担当報道官を辞任すると発表。国民に謝罪すると述べた。
「イギリス国民はCOVID-19との長引く闘いで大きな犠牲を強いられている。流出した動画が(中略)その闘いの妨げになってしまった」
また、動画内での発言について、「人々があらゆる手段で従っていたルールを軽視しているように見える」と述べた。
「それは私が意図したものではなかった。この発言を生涯、後悔し続けるだろう。愛する人々のために自宅にいた人たちに、心から謝罪する」
下院では首相に非難
ジョンソン首相は8日の下院で、動画によって「嫌な思いをさせたことに、率直に」謝罪すると述べた。一方で、パーティーは行われず、新型ウイルス対策も破られなかったと繰り返し報告を受けていたと主張した。
しかしサイモン・ケイス内閣官房長がこの件について調査を行い、関係者全員に懲戒処分を与えると述べた。
労働党のスターマー党首は、首相の謝罪は「答えよりも疑問を増やした」と指摘。「何百万人もの国民が、首相にばかにされ、うそをつかれていると思っている」と批判した。
その上で、首相が職務を続け、側近らが守らないルールを国民に課す「道徳的な権威」を持っているのかと問いただした。
これに対しジョンソン首相は、スターマー党首がこの件について「政局をもてあそんでいる」と非難。COVID-19をめぐる公衆衛生のメッセージを損なっていると述べた。
首相はその後、記者会見で新たな感染対策を発表したが、その場でも記者からの質問はクリスマスパーティーに関するものが大半を占めた。
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官邸でのパーティーをめぐる問題は、英タブロイド紙ミラーの12月1日付の記事をきっかけに浮上した。
複数の消息筋の話から、ロンドンで厳しい感染対策が実施され、同居人以外との屋内での集まりが厳しく制限されていた昨年12月18日、首相官邸でスタッフがクリスマスパーティーを開いたとされている。
そのパーティーには「数十人」が参加し、食べ物やアルコールが出て、様々なゲームもあり、真夜中を過ぎても続いたという。一方、ジョンソン首相は参加していなかったとされている。
ジョンソン首相がクリスマス期間中の制限緩和を中止し、「クリスマスをキャンセル」したのは、パーティーの翌日の19日だった。これによって国民の多くが年末年始にかけて、家族と会うことができなかった。
ITVが入手した官邸会見室の映像は、問題のパーティーがあったという昨年12月18日から4日後のもの。
記者会見のリハーサルをする中、エド・オールドフィールド首相特別顧問がストラットン氏に対して、「金曜(18日)夜に首相官邸でクリスマスパーティーがあったという話を、ツイッターで見たのですが」と、記者のまねをして「質問」すると、ストラットン氏は「私は帰宅したので……えーと……」など、軽口で返そうとしている。
この場にいたのは官邸スタッフのみで、報道陣はいなかったものの、想定問答は録画されていた。
答えに困った様子のストラットン氏が「どう答えればいいの?」と同僚に尋ねると、別の官邸スタッフが、「パーティーじゃなくて、チーズとワインの夕べだったんですよ」と、冗談めかして提案している。
ストラットン氏は「チーズとワインは大丈夫? これ録画されてるのよね」と言い、さらに「この架空のパーティーはビジネスミーティングで、社会的距離は保たれていませんでした」などと、想定される質問への「回答」を準備している。
ロンドン警視庁は、証拠が不十分なことから、この件については捜査しないとしている。

<解説>まだ終わりではない ――ローラ・クンスバーグ政治編集長
この件はまだ終わっていない。
首相官邸の扉の後ろで起きていたことについて、責任が明らかになっていないし、これから事実確認の調査が行われるからだ。
それから、他にも少なくとも3回、こうした集まりが行われたという主張がある。これについては、否定はされたが十分に説明されておらず、認める関係者もいる。野党各党も、このままで済ませるつもりはなさそうだ。
さらに、ジョンソン首相率いる保守党内の空気も、日に日に険悪なものになっている。
これは単に、パーティーではどんなジョークが受けて、どんなゲームが行われたかといった、不快な詳細が問題になっているのではない。
むしろ、政府がパンデミックと闘うためにこれまで依存してきた、2つの大切な資産が問題になっているのだ。
パンデミック対策には、政策への「国民の信頼」と、その政策を承認してもらうための「政治的な善意」が必要だ。
この2つは科学的に測ることはできないが、感染が再び広がっている今、この両方がしぼんでいってしまう懸念が出ている。












