PK失敗したイングランド選手の壁画、破壊されるも応援メッセージで修復

11日に行われたサッカーの2020年欧州選手権(ユーロ2020)の決勝戦でペナルティーキック(PK)を外したイングランド代表選手3人が、人種差別的な中傷を受けて問題となっている。
そのうちの1人、マーカス・ラッシュフォード選手(23)の地元マンチェスター・ウィジントンでは、同選手の壁画の一部が破壊されたが、差別に反対する人々がハート型に切り取った紙や応援メッセージなどで破損個所を覆い隠した。
壁に貼り付けられたメッセージには、「模範となる人」、「素晴らしい人だ」、「ヒーロー」といった言葉が並んでいる。
メッセージを貼り付けに来た人々は、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)に所属するラッシュフォード選手と連帯し、人種差別に立ち向かいたいと話した。
ラッシュフォード選手は12日夜にツイッターで声明を発表。メッセージで埋まった壁画を見て「涙があふれそうになった」と語った。

画像提供, PA Media
英ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われた決勝戦では、イタリアとイングランドが1-1で延長戦に突入するも決着がつかず、PK戦にもつれ込んだ。
先攻のイタリアとイングランドは、1人目のFWドメニコ・ベラルディとFWハリー・ケインがそれぞれ成功。イタリアは2人目のFWアンドレア・ベロッティが失敗し、イングランドはDFハリー・マグワイアが右上に決めた。3人目ではDFレオナルド・ボヌッチが決め、イングランドのFWマーカス・ラッシュフォードが外して2-2で並んだ。
イタリアは4人目のFWフェデリコ・ベルナルデスキが成功したものの、5人目MFジョルジーニョが失敗。イングランドは4人目のMFジェイドン・サンチョ、5人目のMFブカヨ・サカが外した。サカのシュートをイタリアのGKジャンルージ・ドンナルンマが止めた瞬間、イタリアが優勝を決めた。
こうした試合後のソーシャルメディアには、PKを外したラッシュフォード、サンチョ、サカの3選手に対して人種差別的な中傷が相次いだ。
グレーター・マンチェスター警察は、ラッシュフォード選手の壁画が人種差別を理由に破壊されたという通報を受け、捜査を開始したと発表している。
壁画には上から侮蔑語が書かれ、サカ選手の名前も加えられていた。
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事件以降、ラッシュフォード選手のソーシャルメディア・アカウントには多くの人が応援メッセージを送っている。また、壁画を覆う前向きなメッセージの写真も数多く投稿された。
子どもたちが描いた似顔絵や、3選手を「国民的英雄」と称えるメッセージもあった。

ラッシュフォード選手は昨年6月、貧困家庭の救済措置として、夏休み期間中も学校の無料給食制度を継続するよう政府に求め、実現させた。このことについて、同選手への感謝の言葉をつづったメッセージも多く見られた。
あるメッセージには、「あなたの情熱、他者への同情心、そして人々の生活を変えたいという気持ちに感謝する」と書かれている。
この壁画の修復のために立ち上げられたクラウドファンディングには、すでに1万8000ポンド(約280万円)が集まっている。
BBCニュース・オンラインのルミアナ・ジャハンギル記者は、多くのマンチェスター市民が、弱冠23歳にしてサッカーのグラウンド内外でさまざまざ偉業を成し遂げた「地元の青年」の壁画が破壊されたことにショックを受け、怒りを感じていると報じた。
しかし一方で、人種差別がまた表面化したことは決して意外ではないと、多くの市民が感じていると、記者は指摘した。
ラッシュフォード選手が謝罪と感謝
ラッシュフォード選手は声明で、PKを外したことを謝罪した
「チームメイトや全員をがっかりさせた。チームへの貢献として、自分に要求されたのはペナルティーキックだけ。ペナルティーは寝ていても入れられるのに、どうしてあれは入れられなかったんだ?
ボールを打って以来ずっと頭の中で繰り返しているし、この感覚はたぶん言葉にならないんだと思う。
決勝戦。55年ぶり。1発のペナルティー。歴史
自分には、ごめんなさいとしか言えない。別の結果になったらよかったのに」
その上で選手は、チームメイトや自分を応援してくれる人たちに感謝して、こう続けた。
「自分についてあれこれ書かれたのを目にする、そういうものだというスポーツで自分は大きくなった。自分の肌の色とか自分の地元とか、最近ではピッチの外での過ごし方について。
自分のプレーについての批判はいつまでも受け入れる。あのペナルティーは不十分で、入るべきだった。でも自分がどういう人間で、どこから来た人間かについて、僕は絶対に謝らない。
自分の胸にあの3匹のライオンを着けて、何万人もの観客の中で家族が応援してくれるのを目にした、あれほど誇らしい瞬間はない。こういう日を自分は夢見てきた。
今日自分が受け取ったメッセージは圧倒的にポジティブで、ウィジントンでの反応を見て、涙があふれそうにになった。常に自分を抱きしめて受け入れてくれたコミュニティーは、今も僕を支えてくれる。
僕はマーカス・ラッシュフォード。南マンチェスターのウィジントンとウィゼンショーから来た、23歳の黒人男性。ほかに何もなくても、自分にはそれがある。
優しいメッセージをくれたみなさん、ありがとう。もっと強くなって戻ってきます。みんな強くなって、戻ってきます
MR10」

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