G7首脳宣言、新型コロナウイルスワクチン10億回分を低所得国に提供へ

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イギリス南西部コーンウォールで3日間、開催された主要7カ国(G7)首脳会議は13日、閉幕した。首脳宣言で各国は、新型コロナウイルスのパンデミック終息へ向けて、途上国などにワクチン10億回分に相当する支援を表明した。議長国イギリスのボリス・ジョンソン首相は、「世界全体のワクチン接種へ向けた大きな一歩」だと評した。
2年ぶりに対面で行われたG7首脳会議を終えて、ジョンソン首相は世界全体にワクチンを提供することで、G7各国の民主的価値観の長所を世界に示すことができると述べた。
「パンデミック当初に世界的な取り組みを妨げた、自己中心的で国家主義的な対応を拒絶するよう、世界は我々に求めていた。そして、各国の外交力、経済力、科学力を駆使して、COVID-19を根絶するよう求めていた」と、首相は話した。
ジョンソン氏によると、G7各国首脳は低所得国に直接、あるいは世界保健機関(WHO)のワクチン分配枠組み「COVAXファシリティ」を通じて、ワクチンを提供する。イギリスは1億回分を提供する方針。
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G7首脳会議のコミュニケ(首脳宣言)は、「パンデミックを終わらせ、未来へ備えるため、安全なワクチンをできる限り多く、できる限り大勢に、できる限り素早く届けるため、国際的な取り組みを直ちに強化・推進する」と表明している。
気候変動対策については、遅くとも2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという、いわゆるカーボンニュートラルの目標をあらためて確認した。また、石炭火力発電のほとんどを廃止する方針も示した。
首脳宣言の主な内容は次の通り。
- 未来の健康危機に備えるため早期警告システムを改善する
- 二酸化炭素回収・貯留技術を使っていない石炭火力発電所の廃炉を進め、途上国の排出削減を支援するため1000億ドルを提供する
- 世界の気温上昇を1.5度に抑制し、雇用創出、排出削減につながる「緑の革命」を支援する
- 「雇用創出、インフラ投資、技術革新、住民支援を推進し、どの場所も、年齢・人種・ジェンダーにかかわらずどの人も、誰も置き去りにされないよう、全体の水準を引き上げる計画」で経済の再活性化を実現する
- 途上国のインフラ開発のため、クリーンでグリーンな成長基金を設立し、「より良く再建」する
- 世界貿易に対する中国の影響に対応し、「世界経済の公平で透明な活動を損なう」商慣行に対抗する
- 中国に対し、新疆のウイグル族虐待問題などの指摘に関し人権尊重を呼びかける
- 教育を受ける女子の数を2026年までに4000万人増やす
先進国のワクチン提供 「不足」と批判も

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ワクチン10億回分では十分に途上国に行き渡らないため、G7として道義的責務を果たしていないという批判も出る中、ジョンソン首相は首脳会議閉幕後の記者会見で、「私たちは全力を尽くしている。できるだけ素早くワクチンを作り、できるだけ早く供給している」と強調した。
ジョンソン首相は、英オックスフォード大学とアストラゼネカ社が共同開発したワクチンが、世界各国に原価で提供されているのは英政府が関与したからだと強調。「すでに世界中に供給された15億回分のワクチンのうち、5億回分は、オックスフォードの科学者とアストラゼネカに原価で提供するよう英政府が行動して合意をまとめたからだ。このことをこの国の人たちは大いに誇りに思うべきだ」と述べた。
来年末までに世界全体のワクチン接種を完了させるという目標実現は、「今日ここに集まった各国の努力によるところが非常に大きい」ことになると、首相は話した。
世界的なワクチン供給量を増やすため、製薬各社はワクチンの特許を一時放棄すべきだという意見については、ジョンソン首相は「技術革新の意欲」を守るため特許を尊重すべきとの考えを示した。ワクチンの特許放棄については、アントニオ・グテーレス国連事務総長やジョー・バイデン米大統領が支持している。
新型コロナウイルスの起源について
G7首脳宣言は、新型コロナウイルスの起源について「適切な時期に、透明性が確保され、専門家が主導し、科学に立脚する」調査をWHOが実施するよう呼びかけた。
ジョンソン首相は、「今回のこの人獣共通感染症は、実験室から来たものには見えないというのが、これまでに得ている専門家の意見だ」と述べつつ、「ただし、分別のある人なら、この件については先入観を持たないようにするはずだ」とも付け加えた。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ウイルスの起源についてはっきりした知見を国際社会は必要としているものの、調査するかどうかはWHO次第だと述べた。
バイデン米大統領は5月末、新型コロナウイルスの発生について改めて調査するよう情報当局に指示。その際に、新型ウイルスの起源に関する報告書を提出するよう、大統領就任後に求めていたと明らかにした。「人間が感染動物と接触したからなのか、それとも研究施設の事故によって出現したのか」といった点を調査するよう指示していたという。
新型ウイルスが中国・武漢のウイルス研究所から外部に出たという説について、中国は否定している。
気候変動対策に不満も
気候変動対策については、世界の温室効果ガス排出量の2割がG7各国によるものだけに、ジョンソン首相は「まず自分たちこそ行動しなくてはならない」と各国首脳が合意したと説明した。
ただし、拘束力の伴う合意や予定表が決まらなかったことについて記者団から繰り返し質問されると、首相は「自分たちのやるべきことが終わったと言うつもりはない」と認めた。さらに、今年11月1日から英スコットランドで予定される第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けて、国際社会の取り組みが前進するよう、自ら「全員に働きかける」つもりだと述べた。
「セーブ・ザ・チルドレン」や「オックスファム」など世界的なNGOや慈善団体の連合「Crack the Crises」のカースティー・マクニールさんは、G7首脳会議について、新型ウイルス対策や気候変動対策にとって「歴史的なチャンスを逃した」と批判した。
各国首脳は「善意だけもって集まったが、小切手帳を持ってこなかった」と、マクニールさんは話した。
「ユニセフUK」のジョアナ・レイさんは、ワクチン提供をG7が公約したことは「このパンデミックを終わらせるために必要な行動の始まり」だと評価しつつ、「最もワクチンを必要とする国の人たちに数百万回分を届けるよう、今から3カ月のうちにワクチン共有を急速に加速しなくてはらない」と呼びかけた。

<解説> アダム・フレミングBBC政治担当主任編集委員

来年中に途上国の新型コロナウイルスワクチン10億回分を提供するという目標に、各国首脳はわずかながら上回る公約をした。個別の注射分だけでなく、新規開発のための資金援助も約束したからだ。
将来的なパンデミックを予防し、対策をとるための枠組み作りも、各国は関与を約束した。25ページにわたるコミュニケの中には、中国への言及もいくつかあった。バイデン大統領はこれは、過去数回のG7首脳宣言と異なる成果だと指摘した。
今回のG7は、世界貿易に中国が与える影響に対応するため、結束すると約束した。
パンデミックからの回復については、ジョンソン首相が内政問題で格差解消の方策として繰り返す合言葉「レベルを上げる」という表現まで盛り込まれた。
様々な非営利団体や活動団体が、首脳宣言の約束は曖昧で、せっかくのチャンスを逃したなどと批判するコメントを相次ぎ出した。しかしジョンソン首相は、欧州連合離脱後のイギリスとして、自信を示しながら優れた外交イベントを見事に主催できたと感じているだろう。











