インドで暴動、18人死亡 不法移民への市民権付与めぐり

A burned vehicle in Delhi

インドの首都デリーで連日、イスラム教徒以外の不法移民に市民権を与える「インド市民権改正法(CAA)」をめぐり、賛成派と反対派が衝突し、これまでに18人が死亡、約190人が負傷した。3夜連続で起きているこの暴動では、イスラム教徒の住宅や店舗が標的になっているという。

発端となったCAAは、今年1月に施行された。

CAAは、インドに不法に入国したヒンドゥー教、シーク教、仏教、ジャイナ教、パールシー教、キリスト教の各教徒について、イスラム教徒が多数を占めるパキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンのいずれかの出身だと証明できれば、インドの市民権を申請できるという内容。

一方でイスラム教徒は対象外となるため、差別的だとの声が上がっている。また、インドの世俗的地位が危険にさらされるという不安も高まっている。

ナレンドラ・モディ首相率いる政権側は、反対派のこうした主張を否定。迫害された少数派に恩赦を与えることのみが、CAAの目的だとしている。

宗教ごとに分裂

反イスラム的だと批判されているCAAをめぐっては、法案が可決された昨年以降、大規模な抗議デモが相次いでいる。一部は暴力沙汰につながっていたが、首都デリーでは今回の衝突が起きるまで、抗議デモは平和的に行われていた。

CAA賛成派と反対派の最初の衝突が起きたのは23日。それ以降は、デモ参加者の信仰する宗教によって、攻撃を受けているとの情報がある。

こうした暴力行為は、首都中心部から約18キロ離れた、イスラム教徒が多数を占めるデリー北東部地域に集中して起きている。

ソーシャルメディアには、危険と隣合わせの街を捉えた、ぞっとするような写真や動画が投稿されている。放火や、鉄の棒や石を持って路上をさまよっている男の集団、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が対決しているとの報告が上がっている。

誰が犠牲になったのか

負傷者の多くが入院しているグル・テグ・バハダ病院の関係者によると、死者の中には、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が含まれる。約190人が負傷したという。

病院を取材したBBC記者によると、銃弾によるものなど様々なけがを負った人が、治療を受けようと争っていたという。病院は「ひっ迫」しているようで、負傷者の多くは「怖くて自宅に帰るれない」と言っていたという。

真夜中に異例の審理が行われ、デリー高等裁判所は、政府と警察に対し、治療の設備が備わった最寄の病院へ負傷者を安全に移送するよう命じた。

目撃者によると、暴徒数人が、銃を運んでいたという。建物の屋上から発砲があったとの情報もある。病院関係者は、負傷者の多くは銃弾を受けていると認めた。

破れたコーランを拾い集める人も

BBCヒンディー語のファイサル・モハメドによると、同地域の中心部は、焼けた車両のいやな臭いが漂い、修羅場と化していたという。また、一部が燃えたモスクや、コーランのページが地面に散らばっているのを確認したという。

同記者は、「2人の若い男性が破れたコーランのページを拾い集め、ビニール袋に入れていた」と述べた。

あるジャーナリストは、自分の身元を証明するためにパンツを脱ぐよう暴徒から要求されたという。

イスラム教徒の男性のほとんどは、イスラム教の重要な教えの1つとして、割礼を受けている。割礼に疑問を持つ人は、イスラム嫌悪の罪に問われる場合がある。

Policemen stand on a vandalised road following clashes between supporters and opponents of a new citizenship law, at Bhajanpura area of New Delhi on February 24, 2020, ahead of US President arrival in New Delhi.

画像提供, AFP

「裏切り者を撃て」

デリー北東部で取材するBBC記者は、ヒンドゥー教の暴徒が投石し、スローガンを叫ぶ姿を目撃した。中には、「裏切り者を撃て」と叫ぶ者もいたという。

ヨギータ・リマエ記者は、放火されたタイヤ市場の方から煙が立ち上っているのを確認した。

25日午後には、シャハドラ地域のモスクが破壊された。複数の男が、モスクのミナレット(塔)のイスラム教を象徴する三日月を剥ぎ取ろうとしている様子を捉えた動画が、広く拡散された。

暴力行為の経緯

衝突は23日、デリー北東部のイスラム教徒が多数を占める3つの地域で勃発し、その後も続いている。

デモ隊は宗教ごとに分裂して互いを非難し、衝突した。

A man supporting a new citizenship law throws a petrol bomb at a Muslim shrine during a clash with those opposing the law in New Delhi India, February 24, 2020

画像提供, Reuters

画像説明, イスラム教が多数を占めるデリー北東部の地域で、暴力的なデモが始まった。写真は火炎瓶を投げるデモ参加者(24日)

この暴力行為は、ヒンドゥー民族主義の与党・インド人民党(BJP)のカピル・ミシュラ党首と関係している。ミシュラ氏は週末に座り込み抗議を展開し、トランプ氏がインドを離れたら強制的に立ち退かせると、CAAに抗議するグループを脅していた。

デリー警察のMS・ランダワ報道官は記者団に対し、事態は制御されており、「十分な数の警察官」が配備されたと述べた。

しかし、同地域で取材するBBC記者は、暴徒はスローガンを叫んだり投石を続けていると指摘した。

ラワンダ報道官は、警察はドローンを配備し、監視カメラ映像を精査しているとした上で、騒動を起こした人物に対して措置を講じる方針だと述べた。

同地域では、4人以上での集会を開くことが制限されてる。

目撃者によると、25日朝、ジャフラバードやチャンド・バックといった地域では、黒焦げになった複数の車両が残され、路上は石だらけだったという。警察は、身分証明書の確認ができた人のみ、立ち入りを許可した。

一部の地下鉄駅も封鎖されている。

トランプ氏のインド訪問の最中に

衝突は、アメリカのドナルド・トランプ大統領が24日からインドを初訪問し、首都でインド指導者や外交官、実業家らと会談を行っている最中に起きた。

現在の社会不安によって、トランプ氏の訪問から世間の注目がそれることとなり、モディ首相にとっては決まりが悪い出来事だと、BBC特派員は指摘する。

トランプ氏は記者会見で、今回の暴力行為について質問されると、対処については「インド次第」だと述べ、この問題を煙に巻いた。

一方でトランプ氏は、インド国内の宗教の自由に関する問題を持ち出し、インド政府の対応に感銘を受けたと述べた。