殺されたのは、身分の高い人の前で食事をしたから……インドに根強く残るカースト制度
ヴィネート・カーレ、BBCヒンディー語、ウッタラカンド

インド北部ウッタラカンド州のコト村で、ダリットと呼ばれる被差別民のコミュニティーに救いようのない怒りが広がっている。
この村では4月、21歳のジテンドラさんというダリットの男性が、上位カースト(ヒンドゥー教社会の身分制度)のグループに暴行され、9日後に死亡した。
ジテンドラさんにかけられた「容疑」は、ある結婚式でこのグループの前で椅子に座り、食事をしたことだった。
この結婚式はダリットの男性のものだったが、参列した何百人ものゲストの誰一人として、4月26日にジテンドラさんに起きたことを証言する人はいない。
報復を怖れる人々は、ただ結婚披露宴が行われていた場所にいたことを認めるだけだろう。
結婚式では、上位カーストの住民が料理を提供していた。この地域では、身分の低いダリットの人たちが作った料理に手をつける人はいないからだ。
地元警察のアショク・クマル氏によると、「いさかいが起きたのは食事が提供されたとき、誰が椅子に座るかで争いが起きた」と説明した。
この事件は、歴史的に差別されてきたコミュニティーに対する残虐行為を阻止する法律、指定カースト・部族(残虐行為防止法)に基づいて記録された。
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ダリット(壊された民)はカースト制度に属さない最下位の身分とされ、かつてはアヴァルナ(不可触民)と呼ばれていた。
ダリットのコミュニティーは何世代にもわたって、カースト上位の人々から迫害を受けてきた。

ダリットの人々は今もインド全土で虐待を受け、社会的地位を向上させようという試みも激しく弾圧されている。
たとえば北西部グジャラート州では、5月の最初の週にダリットの結婚式4件が襲撃された。取るに足らない理由でダリットが脅迫され、暴行を加えられ、殺される事件は後を絶たない。
こうしたダリットに対する差別文化はどこでも見られる。事件のあったコト村でもそれは同じだった。
この村のダリットの人たちは、ジテンドラさんが結婚式で暴行を受け、侮辱されたとみている。
ジテンドラさんは泣きながら結婚式場を後にしたが、少し離れたところで再び襲撃され、さらに残忍な仕打ちを受けた。
母親のジータ・デヴィさんは次の朝に、今にも崩れそうな自宅の前に、けがをしたジテンドラさんを見つけたという。
「もしかしたら一晩中そこに横たわっていたのかもしれない。あざを作って、体中にけがをしていた」
デヴィさんは、誰がジテンドラさんを家の外に置いていったのか知らないという。ジテンドラさんは9日後、病院で亡くなった。

デヴィさんにとってジテンドラさんの死は二重の苦しみとなった。デヴィさんは5年前に夫を失くしている。
それ以来、ジテンドラさんは学校に行くのをやめ、家族唯一の稼ぎ手として大工の仕事を始めなくてはならなかった。
ジテンドラさんはおとなしい性格で、あまり話さない青年だったという。
家族や友人はジテンドラさんの死に正義を求めているが、コミュニティーからの支援はほとんどない。
ダリットの人権活動家ジャバル・シン・ヴェルマ氏は、「そこには恐怖がある。家族は人里離れたところに住んでいる。土地も持っておらず、金銭的にぜい弱だ」と説明した。
「周囲の村も同様で、ダリットの人たちは上位カーストの人々より数が少ない」
ジテンドラさんが住む村の50世帯のうち、ダリットは12か13世帯しかいない。
ウッタラカンド州では人口の19%がダリットだが、この州にはダリットを虐待してきた歴史がある。
警察はジテンドラさんの死亡をめぐって7人の男を逮捕したが、全員が関与を否定している。

この事件で父親とおじ、兄弟が関与しているとされたある女性は、「これは私たち家族に対する陰謀だ」と指摘した。
「どうして父がダリットの結婚式を中傷しなくてはならないのか」
別の上位カーストの村民は、「(ジテンドラさんは)きっと殴られたことを恥じて薬物を多量摂取し、それで死んだのだ」と話した。
しかし、ジテンドラさんの死に怒り心頭のダリットの人たちは、こうした主張を真っ向から否定した。
ジテンドラさんは確かにてんかんを患っていたが、処方薬を多量摂取する機会はなかったはずだという。
しかし、こうして怒りをあらわにするほかは、村のダリッドの人たちはおおむね沈黙を守っている。
人権活動家のダウラート・クンワル氏は「なぜならダリットは、上位カーストの人々に経済的に依存しているからだ」指摘する。
「ほとんどのダリットが土地を持っていない。裕福な上位カーストの隣人の畑で働いている。もし声を上げたらどうなるか、結果が分かっているのだ」
ジテンドラさんの家族はすでに、この結果を経験している。デヴィさんは、真実を求めるのをやめるよう圧力を掛けられていると語った。
「何人かの男が家に来て、私たちを脅していった。誰も助けてくれないが、正義を求めるのをやめるつもりはない」







