プーチン氏支持の戦争ブロガー、プロパガンダで金もうけ

グリーゴリ・アタネシアン、BBCグローバル偽情報チーム

Pro-war blogger Alexander Kots in Ukraine

画像提供, Alexander Kots/Telegram

画像説明, 好戦派ブロガーのアレクサンドル・コッツ氏は自分の「テレグラム」チャンネルで1本の広告出稿に8万円~10蔓延の値段をつけている

ロシアによる戦争遂行を支持し、オンラインで影響力をもつ好戦派の「インフルエンサー」が、ウクライナ侵攻についてソーシャルメディアで投稿を続けることで、高額の広告収入を得ていることが、BBCの取材で分かった。

ロシアで人気の戦争ブロガーは、ドローン攻撃被害の無残な動画や、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に関する虚偽の内容などを連日投稿しながら、ありとあらゆる広告を拡散する。広告の内容は、暗号通貨からファッションまでとりとめもない。

こうしたブロガーはロシアでは「Zブロガー」と呼ばれる。「Z」の文字はロシアで、現在の戦いを象徴するからだ。戦争を支持する「Zブロガー」たちは、頻繁にロシア軍に同行取材し、前線から写真や動画を投稿し、ロシアの若者に軍に志願するよう呼びかける。

2022年2月にロシアがウクライナの全面侵攻を開始して以来、戦争を支持するロシアのインフルエンサーたちは、ソーシャルメディア「テレグラム」でフォロワーを数百万人単位で増やしてきた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がロシア国内でインスタグラムやフェイスブック、X(旧ツイッター)の使用を禁止して以来、ロシアで使われるソーシャルメディアはもっぱら「テレグラム」となっている。

利用者が爆発的に急増したことで、「テレグラム」の広告市場も一気に拡大した。

好戦派インフルエンサーたちは、この変化を自分たちの利益につなげている。若者へのリーチを獲得したい企業に、広告枠を販売するようになったのだ。

広告料がどれくらいなのか調べるため、BBCのグローバル偽情報取材チームは、このインフルエンサーたちにホテルのオーナーを装って接触した。彼らの「テレグラム」チャンネルに広告を掲載したいのだがと、特に著名な戦争ブロガーに持ち掛けたのだ。

その1人は、アレクサンドル・ノッツ氏。政府系新聞のベテラン記者から戦争インフルエンサーになり、今では60万人以上がその「テレグラム」チャンネルをフォローしている。

セミヨン・ペゴフ氏にも接触した。「Zブロガー」の代表格かもしれない同氏は、「WarGonzo」(戦争ブンヤ)として知られ、フォロワー数は130万人以上。

Pegov (L) in the Kremlin

画像提供, Gavriil GRIGOROV / SPUTNIK / AFP

画像説明, プーチン大統領が今年6月に複数の「インフルエンサー」と会談した際、戦争ブロガーのペゴフ氏(左)も招かれた
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コッツ氏は私たちの問い合わせに対し、自分のチャンネルに広告を載せる場合、1投稿あたり4万8000ルーブル~7万ルーブル(約8万円から10万円)だと回答した。自分の「テレグラム」チャンネルのタイムラインで一番上の目立つところにどれだけ長く掲載するかによって、その代金は異なるという。「WarGonzo」は同じ問い合わせに、1本あたり約28万5000円だと答えた。

最も人気の高い戦争インフルエンサーは、毎日少なくとも広告1本は投稿する。つまり、彼らの収入はロシアでの平均月収6万6000ルーブル(約10万円)をはるかに上回ることになる。

ロシアの民間軍事会社ワグネル系のテルグラム・チャンネルを提携する広告代理店は私たちに、ワグネル系チャンネル「グレイ・ゾーン」に広告出稿するには、1本あたり約4万8000円だと提示してきた。「グレイ・ゾーン」はワグネル情報を独占的に入手するチャンネルとして知られ、60万人以上がフォローしている。

Ad in a Telegram channel
画像説明, コッツ氏をはじめとするロシアの戦争ブロガーは、「テレグラム」にさまざまな広告を投稿する
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同じ広告代理店によると、ワグネル創設者エフゲニー・プリゴジン氏が所有したメディア・グループのニュースサイト「RIA FAN」の記者、アレクサンドル・シモノフ氏のチャンネルに広告を出稿するには、1本あたり約3万3000円だという。

別の「RIA FAN」記者、アレサンドル・ヤレムチュク氏はフォロワー数が比較的少ないため、広告出稿費もそれに応じて安く、1本あたり約1万6000円だと

「Zブロガー」の一部は、元国営メディア記者として戦争取材の経験を持つが、中にはマリヤナ・ナウモヴァ氏のように記者訓練を受けていない人もいる。

ナウモヴァ氏は元重量挙げの選手で、ワグネル基地で記者研修に参加。今では国営テレビで自分が司会する番組を持っている。

Maryana Naumova sent this image to the BBC but refused to speak to us

画像提供, Maryana Naumova

画像説明, ナウモヴァ氏はBBCにこの写真を送ってきたが、取材は拒否した
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BBCは複数の著名な戦争ブロガーに取材を申し込んだが、応じたのはコッツ氏だけだった。

ロシアが制圧したウクライナ東部バフムートで取材に応じたコッツ氏は、自分は情報戦の渦中にある記者なのだと自称した。それでも、ロシアのプロパガンダ作戦は自分のような人間も必要としているのだと、コッツ氏は理解していた。

「国防省はしばしば、我々の言うことに耳を貸してくれるし、こちらは情報を内々に直接提供するための連絡手段を持っている。すべては舞台裏でのことで、私はそれにかかわっている」と、コッツ氏は話した。

戦争ブロガーたちは、独占入手した動画をひっきりなしに投稿することで、フォロワーを増やし続けている。戦場からの動画を提供し続けることで、戦争ブロガーは国内の好戦派フォロワーから支持されるだけでなく、ロシアの塹壕(ざんごう)で本当は何が起きているのか理解しようとする西側やウクライナのアナリストからも注目される。

fake video
画像説明, 著名戦争ブロガーの多くがこの動画を共有したが、BBCが検証した結果、これは作為的に演出された「やらせ」動画の可能性が高い
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しかし、戦争ブロガーが投稿する動画の一部は、偽物だ。

今年3月にコッツ氏を含む複数の著名インフルエンサーが投稿したある動画は、車載カメラが撮影したもので、女性と幼児を乗せた車をウクライナ兵2人が制止するという内容だった。

銃を手にした兵士たちはこの動画で、女性がロシア語を話すからと「ブタ」呼ばわりして脅した。ロシアの戦争ブロガーたちは、この動画はまさにウクライナが民間人をどう扱うか、ありのままを示すものだと大いに力説した。

しかし、私たちはこの動画の撮影場所を特定した。ウクライナ東部ドネツクに近いマイイウカだ。この地域は2014年以来、親ロシア勢力に実効支配されている。つまり、このロシア占領地域でウクライナ軍の軍服を着た兵士が活動するのは、不可能なのだ。

それに加えて、ウクライナでは車載カメラの使用は違法だ。ロシアの全面侵攻開始を受けて、部隊の移動情報をもらさないために、この禁止措置がとられた。

また、動画内の車両についている十字は、ウクライナ軍のものと異なっている。こうした複数の要素から複合的に、動画は仕組まれた「やらせ」だと言える。

戦争ブロガーたちはロシアの若者に、軍に志願するよう繰り返し呼び掛けており、こうした偽動画がそのために使われる。効果は出ているようだ。

Putin with Semyon Pegov

画像提供, MIKHAEL KLIMENTYEV/KREMLIN/POOL/EPA-EFE/REX/Shutte

画像説明, プーチン氏は戦争を支持する人気ブロガーたちに勲章や公職を与えてきた。写真は、ペゴフ氏とプーチン氏
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そうした動画の一つでは、動員されたロシア人男性が自分が入隊することになった経緯を話している。それによると、著名ブロガーだったヴラドレン・タタルスキー氏の動画をいくつか見てから、募兵センターに向かったのだという。タタルスキー氏は今年4月、ファンが集まった会場で殺害された。

ウクライナでの戦いに志願した別のロシア人男性は、自分は「WarGonzo」の投稿をたくさん見ていたから、志願したのだと、ブロガーに話した。

「自分はテレグラムの軍事ニュースと分析を全部追いかけている」のだという。見ているのは「Zブロガー」、つまり戦争ブロガーだ。

プーチン支持者の戦争ブロガーが影響力を増していることについて尋ねられ、「テレグラム」はこう回答した。

「ロシア人がメドゥーザのような独立系メディアや、BBCなどの外国メディア、あるいはゼレンスキーの演説を見ようと思ったら」、テレグラムを見るしかないのだというのが、その答えだった。

「テレグラム」広報は、すべての当事者を「平等に扱う」とする一方で、国際社会の制裁は尊重するし、「法律が禁止する地域」ではロシア国営メディアをブロックしているとも説明した。

現在の戦争を通じて、プーチン大統領は戦争ブロガーたちの努力を認め、感謝の意を示している。

大統領はコッツ氏を大統領人権委員会の委員に任命し、ペゴフ氏など複数のブロガーを、動員に関する作業部会に任命している。

今年6月には、複数の好戦派インフルエンサーと国営メディア記者たちをクレムリン(大統領府)に招き、2時間にわたって会談した。

「情報空間での戦いは戦場だ。きわめて大事な戦場だ」とプーチン氏はその場で述べ、「あなたたちの助けを実に頼みにしている」と語った。