【2023年サッカー女子W杯】 かつてない混戦と日本の衝撃 元イングランド代表が今大会を語る

Karen Bardsley

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画像説明, 元イングランド代表GKのカレン・バーズリー氏

これまで目にした女子ワールドカップ(W杯)で、最も競争が激しく、興奮させられる——。BBCスポーツのコラムニストで、元イングランド代表GKのカレン・バーズリー氏が、今大会の特徴を語った。

世界ランキング下位と上位のチームの差が縮まっている。今大会は何か特別なことが起きている。初優勝を果たすチームが出るかもしれない。

格上とされる国々が、格下とされる国々を圧倒できないでいる。それでも、有力チームはどうにかグループステージ(1次リーグ)を突破した。例年、ノックアウトステージ(決勝トーナメント)でギアを上げてくる。

とはいえ、サッカー界の巨人ドイツが、コロンビア、モロッコ、韓国と一緒のグループを通過できなかった。このことは、今大会がこれまでで最も競争が熾烈(しれつ)なW杯であることを示している。

この状況はどうやって生まれたのか。

まず、各国のサッカー連盟が、女子サッカーは投資すればすぐに大きな進歩がみられることを理解し始めていることが挙げられる。知名度アップは助けになる。イングランドの女子スーパーリーグには、無料放送契約などの投資が行われている。

世界的に女子サッカーの人気が高まっていることもある。選手たちは慣習に挑み、以前よりも力を得ていると感じている。

今大会は総じて、サッカーの質がとても向上している。戦術面でも技術面でも進化している。監督たちは興味深い決断をし、ディフェンス、ゴールキーピング、切り替えプレーのレベルが上がっている。試合は激しさを増し、予想外の結果も出ている。

適応力の高いチームが競争で優位に立ち始めている。監督はよりいっそう創造力を高めることが求められている。

信念を持ってプレー

2019年の前回大会では、タイがアメリカにこてんぱんにされた。しかし、そうした試合はもうない。

コロンビアもジャマイカも、数合わせのためにW杯に参加したわけではないと明確にしている。他のいくつかのチームも同じ気構えで臨んでいる。

ただ、そうしたせりふを聞いても、正直、信じられない場合もある。しかし、今大会は違った。それらのチームは、自分たちには才能あふれる選手がいて、何か特別なことができるとわかっていたからだ。

実のところ、ジャマイカがあそこまでやるとは私は思っていなかった。ブラジルに初めて、ベスト16入りを逃させた。ジャマイカは信念を示した。

試合のスピードは数年前から上がっていた。しかし、今大会で一気に加速した。たとえば、コロンビアの激しさはとても印象的だった。

これらの国々がW杯に向けてしてきた準備は、とても興味深い。モロッコは数年前、本戦出場の可能性があると気づくと、同国と縁があり、誇りを持って国を代表できる選手を探した。チーム作りが巧みだった。投資もした。

監督たちも高いレベルで経験を積んでいる。大国の脅威を止める方法を見つけ始めている。

ディフェンスも安定力を増した。各チームはゴールを量産できないかもしれないと気づき、強い決意で組織的に戦うようになった。それが大会での成功につながっている。

強豪は他国の成長を認識しているのか

Alex Morgan reacts during the 0-0 draw with Portugal

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画像説明, アメリカはグループステージを辛くも2位で通過。ノックアウトステージ初戦にPK戦でスウェーデンに敗れた

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アメリカはフィジカル面で抜きん出ていた。しかし、戦術面ではそうではない。

時間を経て、ヨーロッパはフィジカルで追いついた。アジアや中米のチームも同じだ。

私はアメリカでプレーして育った。そこには常に、自分たちの能力を疑わず、揺るぎなく信じる文化があった。

アメリカは技術的には向上している。だが、今のチームには選手たちによる協調がみられない。

アメリカは戦術的に取り残されつつある。他のチームがどれほど優れているか、わかっていないのかもしれない。

ドイツが敗退したのは、無理にパスを通そうとし、その戦略がうまくいかなかったときの代替プランと呼べるものがなかったからだった。

両国が大会を去ったことで、ランキング下位の国々に勢いと信念が生まれた。それらの国々は、優勝カップを勝ち取り、自国民を鼓舞するチャンスを迎えている。

日本の衝撃

日本はここまで、抜きん出たプレーを見せてきたチームのひとつだ。

日本がグループステージでスペインを4-0で、それもあのような方法で破るとは、予想していなかった。

日本はとても印象的だ。ワイドエリアでの動きが非常に速く、ゲームプランに自信を持っている。スペイン相手にフォーメーションの切り替えもできた。

スペインがあれほど苦しむのを目にしたことは、これまでなかった。日本ほど効率的にボールを持てるチームは少ないからだ。日本はスペイン戦で、ボール支配率は23%だったが、5本の枠内シュートを放ち、4ゴールを奪ったのだった。

あの舞台でスペイン相手にそれをやってのけたのは、大きな衝撃だった。女子サッカー界に波紋が広がった。ボールを支配しているからといって、必ずしも試合を支配しているわけではないことを示した。