【解説】 北朝鮮が「戦術核弾頭」初公開 高まる核の脅威、今後の見通しは

ジーン・マケンジー、ソウル特派員

Kim Jong Un with what North Korean state media says are tactical nuclear weapons

画像提供, Rodong Sinmun

画像説明, 金正恩総書記(中央)は27日に「核の兵器化活動」を指導したという。国営メディアが掲載した画像には、金氏のそばに戦術核兵器だとする物体が写っている

北朝鮮は28日、短距離ミサイルに搭載可能な小型核弾頭とみられる物体を、国営メディアを通じて初めて公開した。

北朝鮮は長らく、韓国国内の標的を攻撃できる戦術核兵器を保有していると主張してきたが、その証拠を示したのは今回が初めて。

28日付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、金正恩(キム・ジョンウン)総書記と戦術核兵器だとする物体が写った写真を掲載した。

しかし、これが本物なのか検証するのは不可能だ。北朝鮮が実際にこれらの装置のひとつを実験するまでは、推測の域を出ない。

北朝鮮政府はこの2週間、ソウルへの核攻撃を想定し、核弾頭を搭載できるとする兵器の発射訓練を立て続けに行っていた。

近頃、北朝鮮のミサイル発射を追跡することが難しいのは、認めざるを得ない。このような実験が単独で行われた場合、かつてのようにメディアを騒がすことはなくなった。しかし、それらをひとまとめで見てみると、我々が学べることはたくさんある。

北朝鮮はこれらの発射訓練について、アメリカと韓国が過去数年間で最大規模の軍事演習を行ったことへの報復だと主張している。米韓は攻撃された場合に北朝鮮を打ち負かす方法を訓練している。これは北朝鮮の指導者である金氏にとって、面白いシナリオではない。

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Presentational white space

ただ、これは北朝鮮の典型的な抗議のかたちではない。同国はこれまで、短距離、中距離、長距離ミサイルや、一部の砲弾を発射するなどして、軍事演習に反発してきた。

ところが北朝鮮はこの2週間で、理論上、アメリカ本土のどこにでも到達する能力を持つとされる、最も強力な大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。

また、潜水艦からミサイルを発射したほか、地下サイロとみられる場所からも発射している。北朝鮮の朝鮮人民軍は、韓国の飛行場に対する核攻撃のシミュレーションも行っている。

24日には、金氏が核兵器を搭載可能だと主張する、新たな水中攻撃ドローン(無人艇)の存在を明らかにし、「水中爆発で超強力な放射能の津波を起こして敵の艦船集団と主要作戦港を破壊、掃滅する」ものだとした。

そしてついに、ミサイルに搭載可能だとする核弾頭をも公開した。

えりすぐりの、厄介な兵器がそろったといえる。

追跡・迎撃がより難しく

米戦略国際問題研究所(CSIS)のアナリスト、エレン・キム氏は、こうした兵器のラインナップを「北朝鮮のファッションショーに相当するもの」だと称した。これは、金氏の娘が発射実験に立ち会った際にディオール風のジャケットを着用していたことにちなんだもの。

キム氏をはじめとするアナリストたちは、今年の軍事パレードに登場した兵器の多様性に懸念を示している。北朝鮮政府は海や陸からアメリカ、韓国、日本を狙って発射できる、より洗練された新兵器を披露した。

「以前は(北朝鮮が)潜水艦から巡航ミサイルを発射したり、地下からミサイルを発射できることを、私たちは知らなかった。北朝鮮の兵器は、追跡や迎撃がはるかに難しくなってきている」と、キム氏は述べた。

A missile heads towards the sky after being fired from under water

画像提供, KCNA

画像説明, 水中から発射された北朝鮮のミサイル

こうした状況は、北朝鮮の核の脅威を高めている。

潜水艦から発射される、巡航ミサイルを例に挙げよう。ソウルに拠点を置くシンクタンク、峨山(アサン)政策研究院の兵器専門家、梁旭 (ヤン・ウク) 氏は、こうしたミサイルを最も懸念している。梁氏の説明では、水中から発射されるミサイルは発射前の探知が難しい。発射されると、巡航ミサイルは低空で飛行する。また、防衛システムを回避するための飛行中の遠隔操作も可能だ。

金氏はアメリカが北朝鮮を先制攻撃し、自分が使用するよりも前に北朝鮮の兵器を一掃してしまうことを常に恐れている。金氏は今回の一連の実験により、北朝鮮にはいまや反撃能力、さらには先制攻撃能力があるというメッセージを発しているようだ。地中や水中に隠された兵器を破壊するのは容易ではない。

つまり、「我々を攻撃しようなどと考えるな」と伝えたいわけだ。

ただし、我々は慎重になるべきだ。金氏は自軍の能力を誇張する傾向がある。

核弾頭の製造、核実験は

北朝鮮がこれらのミサイルに搭載可能な核弾頭を本当に保有しているのかという疑問は、常につきまとってきた。最近披露された武器の大半は、非常に小型で軽量な核弾頭しか搭載できないとされるものだった。我々にはこれまで、北朝鮮がそうした核弾頭を開発したという証拠は何もなかった。

しかし28日、その証拠のひとつが初めて示されたのだった。労働新聞に掲載された写真には、一列に並べられた小型核弾頭とされるものを金氏が点検している様子が写っていた。

北朝鮮が主張している通り、これらが本当に核弾頭なのかを検証するすべはない。だからこそ、情報機関は長い間息を潜めて、北朝鮮が準備しているとささやかれている核実験の実施を待っている。

北朝鮮が小型核弾頭を大量に製造できるようになった瞬間に、シミュレーションが行われてきた脅威が現実のものとなり、韓国や日本を核兵器で攻撃することが可能になる。

北朝鮮を交渉のテーブルに引き戻し、核実験を回避するために、アメリカや国際社会がもっと努力すべきだと主張する人もいる。米朝の非核化協議は4年以上にわたり停滞している。北朝鮮政府は、話し合いを望んでいる気配を見せていない。同政府は自分たちが最も得をすると思える瞬間を選ぶ傾向がある。

A missile is launched in North Korea

画像提供, KCNA

画像説明, 金正恩氏はしばしば、北朝鮮の軍事力を誇張していると非難されている

今後の動きは

2月の国連安全保障理事会の緊急会合では、中国とロシアの反対により、北朝鮮のミサイル発射をめぐる非難声明は採択されず、北朝鮮は兵器の開発を続けている。いますぐこれを止めなければならない。なぜか? 兵器が改良されればされるほど、北朝鮮は力を増すからだ。北朝鮮はまだ、力を完全に証明していない。

小型化された弾頭に加えて、通常の弾頭が大陸間の飛行に耐えられるかどうかを示す実験も、まだ行われていない。現在のところ、北朝鮮は長距離ミサイルを、通常より角度をつけて高く打ち上げる「ロフテッド軌道」で試している。同国はまた、発射前の燃料供給が不要で、液体燃料ミサイルよりも素早く発射できることから事前探知がより困難な、固体燃料式の、より洗練されたICBMを開発したいと考えている。

ソウルの峨山政策研究院の梁氏は、金氏が自国が絶望的な状況に置かれていることに突き動かされている側面もあるとみている。経済が低迷し、国民が飢餓状態にある中で、核兵器開発を進めることが「彼(金氏)に残された唯一の切り札」だと、梁氏は指摘する。

そのため北朝鮮は、より多様で殺傷能力の高い兵器を開発し、前進を続けるつもりのようだ。

CSISのエレン・キム氏には、確信していることがひとつだけある。「今後さらなる実験が行われる」ということだ。