【解説】 ウクライナ侵攻、ロシア訪問で薄れる中国の「中立姿勢」

スティーヴン・マクドネル中国特派員

Vladimir Putin meets Wang Yi at the Kremlin in Moscow

画像提供, Reuters

画像説明, ロシア・モスクワで会談したプーチン大統領(奥)と中国の王毅氏(22日)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、とても長いテーブルが大好きだ。長いテーブルの端にプーチン氏が座り、その反対側に相手が座るという、プーチン流の会談の様子は有名だ。あまりに遠くに座るので、相手に声が届きにくいのではないかと思うほどだ。

しかし、中国の外交トップ王毅氏との会談では、様子が違った。

2人は楕円形のテーブルの両端ではなく中央部分に、握手ができる距離で、向かい合って座っていた。

中国代表団に、長いテーブルの端にではなく中央に座ってもらうことで、関係の近さを物理的に示したかったのかもしれない。

公開された会談映像は、プーチン氏が重要な友好国の代表とあそこまで接近しても安全だと感じていると示すための、わざとシンボリックなものに見えた。

言うまでもなく、いつもそうだったわけではない。数十年前に造られた北京市内の地下核シェルター網は、ソ連との核戦争から首都の市民を守るために設計されたものだ。

しかし、習近平政権からするとロシアは今や、アメリカの影響力に最前線で敵対する国だ。北朝鮮と同様に国際社会から孤立しているものの、地政学的には役に立つ存在だ。

プーチン氏は中国と「限界のない」新たな関係を宣言し、北京冬季オリンピックの開会式に出席し、帰国してから数週間後にウクライナへの侵攻を開始した。それでも中国政府は特に、きまりが悪そうな様子を見せなかった。

習氏は五輪開会式で隣に座ったロシア大統領から、間もなく戦争を始めると警告されたのだろうか。これを大勢が疑問に思った。当時のプーチン氏は、侵攻開始のことで頭がいっぱいだったに違いないのだし。

ロシアに対して慎重に

中国はウクライナ侵攻をめぐり、きわめて慎重にロシアに対応している。習氏はこのやり方で自信たっぷりに歩いているつもりでいるかもしれない。しかし、侵攻に関する中立の主張が維持しにくくなっている状況で、習氏が進もうとする道は隅の方から崩れつつあるという見方もある。

プーチン氏との会談を終えた王氏は、中国とロシアが共に「平和と安定」を推進していくと宣言した。

ウクライナ侵攻開始1年を目前にしたロシア訪問で、「平和と安定」などという表現を使うのは、よそから見れば滑稽(こっけい)なことだ。

しかし、中国政府はそれを承知の上で、自分たちの評判が落ちることを百も承知で、この表現を使った。現時点ではそれよりも、プーチン氏を精神的にしっかり支えるほうが大事だと計算したからだ。

王氏はロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相と面会した際、「親しい友人のあなたと、相互利益の問題について意見交換する用意がある。新しい合意づくりを楽しみにしている」と述べた。

ラヴロフ氏は、「国際舞台で激しい乱気流」が起きているにもかかわらず、両国は連帯して互いの利益を守っていると述べた。この混乱を引き起こしたのはロシア政府ではなく、「乱気流」がただ自然と空中に漂っているかのような表現だった。

軍事・経済支援は

中国の秦剛外相は今週初めに北京で、特定の国が火に油を注ぎ続ければ、ウクライナでの戦闘は手に負えない状況に陥る可能性があると警告した。

アメリカは中国に対して、ロシアに兵器や弾薬を提供しないよう警告している一方で、ウクライナ軍に公然と軍事支援を行っていると、同外相は指摘した。

プーチン氏が戦場で屈辱的な敗北に直面した場合、中国はどのような選択肢を検討するのかが、今では注目されている。

アメリカの研究者たちによると、中国政府はすでに、軍民両用の装備品や、例えばジェット戦闘機の修理に使えるような技術をロシアに提供している様子だ。

また、侵略後にロシアに科された経済制裁で生じた損失を埋め合わせるために、ロシア産原油やガスを買い占めている事実を、中国は隠そうともしていない。

プーチン氏は王氏との会談で、習氏が近いうちにモスクワを訪問することを認めた。今後数カ月のうちに実現するのではないかとみられている。

ある意味、ロシア政府は中国に代わって厄介な仕事をしていると言える。西側の軍事資源を枯渇させ、北大西洋条約機構(NATO)に圧力をかけている。そのためにロシア経済が悪化したところで、中国政府にとってはそれほど問題にはならないだろう。経済を回復させるために、より多くの中国製品が必要になるだけだ。

しかし、西側諸国がかなり結束していること、ロシアがウクライナで勝てそうに見えないことが、中国にとっては問題だ。加えて、長引く残酷な戦争を欧州でしかけた強圧的な国、つまりロシアと、中国は仲間なのだと、周りから見られるようになっている。

自分たちの手に余るものをむやみにわしづかみにしないよう、中国は注意する必要がある。そして世界のほかの国々もまた、アジアの巨人がこの戦争にこれまで以上に引きずり込まれるような展開を、決して望まないはずだ。