西側諸国の武器供与は効果を上げているのか ロシアと戦うウクライナ
ジョナサン・ビール、防衛担当編集委員
ロシアがウクライナに侵攻して以降、ウクライナ軍はロシア軍のヘリコプターが地対空ミサイルで撃墜される様子を捉えた動画を複数公開している。
先週公開された上の動画には、ロシア軍のヘリコプターが、この後に起こることを避けるために、木々の上すれすれを低空飛行する様子が映っている。そこに向かって、地対空ミサイルの一筋の煙が延びていくのが分かる。数秒後にはヘリコプターは火の玉となって墜落、炎上した。
このように、ロシア軍機はウクライナ軍によって撃墜されている。別の動画には、ハルキウ(ハリコフ)近郊でウクライナ軍に攻撃されたロシア軍戦闘機が映っている。複数の軍事アナリストは、西側諸国からウクライナ側に最近供給された兵器がすでに使用されている証拠があると見ている。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のリサーチ・フェロー(空軍力担当)、ジャスティン・ブロンク氏によると、これまでにウクライナで撃墜されたロシア軍機は、ヘリコプターとジェット機あわせて少なくとも20機が目視で確認されている。これは、ウクライナ国防省が撃墜したと主張する数(ロシア軍戦闘機48機、ヘリコプター80機。3月8日時点)よりもはるかに少ない。とはいえ、ロシアがウクライナの制空権を確保するのに苦戦していることはうかがえる。
ウクライナ側もロシアとの戦闘で損失を被っている。しかしロシアは今のところ、ウクライナの防空能力と空軍の破壊には至っていないと、ベン・ウォレス英国防相はBBCに語った。
戦闘開始前は、ロシアがウクライナ国境に集結させた軍用機は、ウクライナの軍用機を少なくとも3倍上回っていた。
ウォレス氏によると、ウクライナの防空能力の影響で、ロシア軍はすでに、軍用機が検知されないよう夜間の飛行を余儀なくされている。

マンパッズ(Manpads、1人で持ち運び可能な防空システム)とも呼ばれる、肩撃ち式の防空ミサイルは、西側諸国がウクライナに供給してきた武器の1つに過ぎない。このほか、1980年代に旧ソ連がアフガニスタンに侵攻した際、ソ連軍の戦闘機を苦しめた悪名高いアメリカ製地対空ミサイル「スティンガー」などもウクライナに渡っている。
ウクライナに渡った武器の数を正確に知るのは難しい。ウォレス氏は先週BBCに対し、西側諸国は現在「数千」の対戦車兵器と「1000以上」のスティンガーをウクライナに届けていると述べていた。米CNNは米国防当局者の話として、アメリカと北大西洋条約機構(NATO)同盟国から対戦車ミサイル1万7000基とスティンガー2000基がウクライナに輸送されたと伝えた。
イギリスとアメリカは2月24日の侵攻開始前からウクライナに武器を提供しており、イギリスからは軽対戦車ミサイル(Nlaws)2000基が届けられた。それらが、ロシアの機甲部隊を破壊するためにすでに使用されているとの報道について、「そのことを立証する事例証拠がある」とウォレス氏は述べた。
ライフルと弾薬
英米以外のほとんどの国は、ロシアの侵攻に対応するためにウクライナへの武器の輸送を開始した。武器をウクライナに提供しているのはあわせて14カ国で、長らく中立を維持し、NATOに加盟していないスウェーデンやフィンランドも加わってる。両国とも、数千もの対戦車兵器をウクライナに送っている。
ドイツはウクライナに対戦車兵器1000基とスティンガー500基を提供している。バルト諸国はスティンガーや、射程2.5キロメートルで世界で最も効果的な対戦車兵器の1つである対戦車ミサイル「ジャベリン」など数千基を提供している。ウクライナはすでに、ロシア軍のT-72戦車数台の破壊に成功したとしている。
最近ウクライナに輸送された武器には、アサルトライフル銃や機関銃が数万丁、対戦車地雷、弾薬数百トンのほか、防弾チョッキやヘルメット、医療品も含まれる。

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武器の輸送方法は
イギリスは、こうした武器の輸送を「促進」するために協力しているとしているが、西側の政府関係者は実際にどのように運んでいるのか詳細を明らかにしていない。
ただ、ロシアの軍事作戦がウクライナ東部に集中している間は、人や物資が近隣の欧州諸国を経由してウクライナ西部へと流入していることは周知の事実といえる。BBCがエストニア、スウェーデン、デンマークの国防省に話を聞いたところ、いずれの国も、供給した武器の流れを追跡し、ここ数週間でウクライナに無事到着したことを確認したことを認めた。
では、こうした武器を提供することで、ウクライナの戦況にどれほどの違いを生んでいるのだろうか。
西側諸国から提供された武器が効果を発揮するのは、ウクライナ側にそれを扱える軍隊が存在し続ける場合のみだ。
RUSIのブロンク氏によると、ウクライナは(射程距離がより長い)ソ連時代の古い防空システムを保持しているため、ロシア軍機は兵空飛行を余儀なくされているという。一方で、西側から供給される短距離地対空ミサイルにはそれほど精通していない。
射程距離がより長い防空システムがなければ、ロシア軍機は射程の短い防空システムを回避するためにより高い高度を飛行できるようになる。
こうした中、アメリカと欧州の同盟国はウクライナへの武器供給を増やそうとしている。ロシアが武器の供給ルートを標的にするまで、残された機会は限られているかもしれない。
アントニー・ブリンケン米国務長官はポーランドがロシア製のMIG-29戦闘機をウクライナ空軍に提供することについて、ポーランドと協議したとしている。これが実現したとしても、ウクライナには訓練を受けたパイロットが必要となる。
ロシアに抵抗するウクライナにとって、西側諸国による武器の供給は後押しとなる。ただし同時に、その扱いに慣れている軍隊も必要になる。













