【解説】 ロシアはウクライナ情勢の「語られ方」をどう作っているのか
ケイリーン・デヴリン、オルガ・ロビンソンBBCモニタリング&リアリティー・チェック

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ロシアは、ウクライナとの国境に部隊を集結させている一方で、メディアの報じ方をコントロールしようとしている。では、ウクライナ関連報道のどの部分が、誤った印象を与えているのか。
親ロシアのメディアが使う、いくつかの手法に注目してみた。
未検証の話を広める
ロシアのメディアは、ウクライナのイメージを悪化させるような、感情に訴えるコンテンツや真偽の疑わしい主張を広めてきた過去がある。
2014年に特に注目されたケースでは、ロシア国営テレビ局が繰り返し、1人の難民女性を登場させた。この女性は、ウクライナ兵が3歳男児を殺害したと訴えていた。
女性の主張を裏付ける証拠はまったく提示されず、この報道は後に撤回された。この出来事は「はりつけにされた少年」報道として知られるようになった。
最近も、ロシアやロシア政府寄りのメディアは、確証の取れていない映像を取り上げている。映像は、ウクライナ軍がベラルーシとの国境地帯で移民を撃ち殺している場面だとされるものだ。
赤外線カメラで撮影された低画質のこの映像は、昨年12月前半にフェイスブックに投稿された。ロシアの複数メディアはこれを受け、「現地メディアの報道」を引用する格好で、ウクライナ兵たちが難民に向けて発砲していたと伝えた。


問題の映像が最初に掲載されたフェイスブックのアカウントをもつ兵士は、アカウントがハッキングされたのだと説明している。
移民が射殺されたとする話は、現地のニュースサイトや非政府組織(NGO)もウェブサイトで取り上げた。それらの組織も、サイトがハッキングの被害に遭ったと主張した。
BBCはこれらの主張が正しいのか、独自に検証できていない。
ウクライナを親ナチ国家扱い
ウクライナを、ナチス・ドイツの思想をもった国だとする論調も、ロシアのメディアでよく見られる。
ある報道は、ロシア外務省のソーシャルメディアへの投稿を取り上げた。同省は、ロシアがナチズム礼賛を非難する国連決議案を出したところ、ウクライナとアメリカは反対票を投じたと力説したとされた。

ウクライナとアメリカが決議案を支持しなかったのは事実だ。しかし、ロシア外務省の投稿は、両国の判断の背景を伝えていない。
ウクライナは、決議案がプロパガンダを目的にしていると考えたため、反対したと説明していた。
アメリカは決議案を、「ロシアの偽情報活動を正当化しようとする見え透いた試み」と呼んだ。
投票後、アメリカとウクライナ両国は、ナチズムを非難すると強調した。

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ウクライナ極右団体とネオナチの関係については、以前から懸念する声が出ている。特に、国家主義的な「アゾフ大隊」について不安視する声が目立つ。同大隊は、ウクライナ東部の紛争が最も激しかった時期にその名が知られるようになり、現在はウクライナ軍の一部隊となっている。
ただ、ウクライナで極右は依然として少数派のままだ。2019年の議会選挙では、全ウクライナ連合「自由」(スヴォボダ)など極右のグループや候補者は、議席確保に必要な最低得票率5%を大きく下回った。
ロシア政府寄りのソーシャルメディア・アカウントを何百と追跡調査している、テクノロジー企業ロジカリーによると、昨年11月以降、ウクライナとナチズムを結び付ける報道が急増しているという。
同社のブライアン・マーフィー氏は、「重要な転換点」が来るたびに、親ロシアのさまざまなメディアで、こうした内容の報道が繰り広げられると話す。
「世界的な出来事や、ロシアの外交努力やロシアが大事にしていることに合わせて、急増する傾向がある」
ロシアに詳しく、同国の情報戦に関する北大西洋条約機構(NATO)の報告書を執筆したキア・ジャイルズ氏は、ロシアが「ヨーロッパにおける自分たちの敵や被害者に『ナチス』のレッテルを素早く貼りがち」だと話す。
「これはウクライナについてだけでなく、ロシアがバルト三国と対立した時も同じだった」
読者コメントを世論代表に
ロシア国営メディアの一部はここ何週間か、西側メディアサイトのユーザーコメントだけに根拠に、ウクライナに対する国際的な支持について、誤った印象を与える見出しの記事を次々と掲載している。
国営通信社RIAのウェブサイトは1月末、英紙デイリー・エクスプレスの「イギリス人」読者が、関係地域ではロシア軍がNATO軍より強いため、ウクライナを守るべきでないと考えていると、記事にして伝えた。
別の記事は、読者らがウクライナの軍事力をあざ笑っているとした。


親ロシアの「荒らし」目的の投稿者が、偽のアカウントを使い、イギリスなどの外国メディアを標的にして、ロシアの国益拡大に努めているとの懸念もある。
英カーディフ大学・犯罪治安研究所の昨年の研究では、16カ国の計32有名メディア(デイリー・エクスプレスを含む)のウェブサイトのコメント欄が、親ロシアの悪意ある投稿者によって被害を受けていたとされた。
研究者らによると、反西側、親ロシアのコメントはその後、ロシア語メディアのニュース記事で、報道内容の根拠として利用されていたという。
西側の声をロシア支持の誇張に利用
偽情報に対抗している団体ミソス・ラブスの調べによれば、親ロシアのプロパガンダを拡散しているアカウントの活動が、昨年11月に急激に増えた。
それらのアカウントのウクライナ関連のツイートは同月、1日平均213件に上った。
調査チームが発見した戦略の1つは、ロシアの立場に沿った、ロシア人以外の人の声を共有するというものだった。

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そうした声の1つが、オーストラリア人ジャーナリストのジョン・ピルジャー氏によるものだ。同氏はアメリカについて、2014年にウクライナで選挙で民選政府を転覆させたと非難した。
彼のツイートは、ウクライナ問題で親ロシアのプロパガンダを拡散していると調査チームが認定した、87のアカウントによってリツイートされた。







