「木に抱きつくトラ」の隠し撮り写真が大賞に 野生生物写真コンテスト

ジョナサン・エイモス、BBC科学担当編集委員

The embrace by Sergey Gorshkov, Russia

画像提供, Sergey Gorshkov/WPY2020

画像説明, 大賞に選ばれたセルゲイ・ゴルシュコフさん撮影の「抱擁」

地球上の生き物の極めて珍しい瞬間を撮影するには、見事な技術と途方もない幸運が必要だ。

セルゲイ・ゴルシュコフさんは、その両方を明らかに持ち合わせている。ロシア極東地域の森深くで撮影したシベリアトラ(アムールトラ)の驚異的な写真が、その証拠だ。

彼のこの写真は、今年の「野生生物写真コンテスト」(WPY)で大賞に選ばれたばかりだ。

「ヒョウ国立公園」で、メスのトラが木を抱きしめている。樹皮に体をこすりつけ、縄張りを示すためににおいを残そうとしている。

「ライティング、色彩、質感。まるで油絵だ」と、WPYのロズ・キッドマン=コックス審査委員長は評す。

「さながらトラが森の一部のようだ。尻尾が木の根と混ざり合っている。木とトラはひとつだ」

さらにすごいのは、この写真がセンサーによる自動撮影で撮られたことだ。森の中に撮影機器を設置してから、トラが来て自動シャッターが切られるまで、何カ月もかかった。

もちろん、ゴルシュコフさんは、トラが現れそうな場所を知っていた。経験豊富な野生生物写真家としての腕の見せ所だ。

ロシア東部のトラは、狩猟のせいで絶滅の危機にある。現在生息するのは数百頭ほどとみられている。餌食(主にシカやイノシシ)も減っており、アムールトラは食べ物にありつくため、広大な範囲を移動しなくてはならない。

動画説明, 絶滅危惧のアムールトラ、ロシアの森林に戻され

こうした状況が、今回のような印象深い写真だけでなく、あらゆる写真の撮影を難しくしている。ゴルシュコフさんが自動撮影カメラから、大賞を受賞することになる貴重なデータが刻まれたメモリーカードを回収したのは、森に設置してから10カ月後のことだった。

大賞への選出は、WPYを主催するロンドン自然史博物館のオンラインイベントで、ケンブリッジ公爵夫人キャサリン妃とテレビ司会者のクリス・パッカムさん、メガン・マッカビンさんが発表した。

WPYは今年で56年目を迎えた。

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ガンを捕ったキツネ――リイナ・ヘイキネンさん(フィンランド)

The fox that got the goose by Liina Heikkinen, Finland

画像提供, Liina Heikkinen/WPY2020

若いキツネがカオジロガンを食べているこの写真で、フィンランドのヘイキネンさんは15~17歳部門と、全ジュニア写真家部門の両方で1位を獲得した。このキツネはきょうだいに獲物を奪われないよう、狭いすき間に入り込んだ。

「本当に鋭い感覚をもった若いナチュラリストにしか撮れない写真だという点を、審査員は特に評価した」とキッドマン=コックス審査委員長は説明した。「構成も素晴らしい。若いキツネと目が合っていることからすると、リイナは地面に寝そべっていたに違いない」。

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ポーズ――モウンス・トロルさん(デンマーク)

The pose by Mogens Trolle, Denmark

画像提供, Mogens Trolle/WPY2020

写っているのは若いオスのテングザル。WPYの動物ポートレート部門で1位に選ばれた。撮影場所はボルネオ島のラブックベイ・テングザル保護区だ。

見事な鼻は、大人になるといっそう大きくなる。鼻は鳴き声を響かせる役割を果たしており、群れでの地位を示すとも考えられている。

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エトナ山の火の川――ルチアーノ・ガウデンツィオさん(イタリア)

Etna's river of fire by Luciano Gaudenzio, Italy

画像提供, Luciano Gaudenzio/WPY2020

WPYは動物写真に限らない。ヨーロッパで最も活発な火山であるエトナ山(イタリア)の北側で撮影されたこの写真が、地球の環境部門で1位となった。

被写体に近づくため、ガウデンツィオさんは熱と異臭のする蒸気に立ち向かわなくてはならなかった。当時の状況を、「巨大な恐竜のしわしわの荒れた皮膚の上で、傷口がぱっくり開いた」ようだったと語った。

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宙ぶらりんの生活――ハイメ・クレブラスさん(スペイン)

Life in the balance by Jaime Culebras, Spain

画像提供, Jaime Culebras/WPY2020

クモをおやつにしているこのグラスフロッグの写真が、両生類と爬虫(はちゅう)類の行動部門で1位に選出された。クレブラスさんは、エクアドルのマンドゥリアク保護区で大雨が降る中、これを撮影。片手で傘とフラッシュを持ち、もう片手でカメラを操作したという。

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2匹のジガバチの物語――フランク・デシャンドルさん(フランス)

A tale of two wasps by Frank Deschandol, France

画像提供, Frank Deschandol/WPY2020

フランス北部ノルマンディーでこれら2匹のジガバチを撮影するには、特製の超高速シャッターを備えたカメラが必要だった。

この場面は、異なる種類のジガバチ2匹がそれぞれ、隣り合った巣穴に入ろうとしているところだ。デシャンドルさんは無脊椎動物の行動部門で1位を獲得した。

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黄金に輝く瞬間――ソンダ・ツァイさん(中国)

The golden moment by Songda Cai, China

画像提供, Songda Cai/WPY2020

水中部門で1位となったのがこの作品。非常に小さなソデイカだ。卵からかえって成体になる前の幼生を撮影した。

ツァイさんはフィリピンのアニラオ海岸沖で、夜間ダイビングをしてこの写真を撮った。このソデイカは体長6~7センチメートル。

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母が走れと言うとき――シャニュアン・リさん(中国)

When mother says run by Shanyuan Li, China

画像提供, Shanyuan Li/WPY2020

写っているのは若いマヌルネコたち。中国北西部・青海チベット高原の奥地にある草原地帯で生息している。

リさんは6年間かけてマヌルネコについて学び、跡を追った結果、楽しそうに遊ぶ子猫たちの撮影に成功。哺乳類の行動部門で1位に選ばれた。

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「野生生物写真コンテスト」は通常、英ロンドンのサウス・ケンジントンにあるロンドン自然史博物館の祝賀ディナーで授与される。しかし今年は新型コロナウイルスの影響で、オンラインでの発表となった。

だが、高い人気を誇る写真展は、例年通り同博物館で16日から開催される。鑑賞には予約が必要。

Sergey Gorshkov

画像提供, Sergey Gorshkov

画像説明, ロシアの「ヒョウ国立公園」でカメラを設置するセルゲイ・ゴルシュコフさん
Leopard National Park

画像提供, Sergey Gorshkov

画像説明, トラたちは獲物を求めて広大な「ヒョウ国立公園」を何百キロも移動するという

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