コービン党首の思惑は? 首相不信任案を野党・労働党はどうする

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イギリスのテリーザ・メイ首相が欧州連合(EU)離脱をめぐって瀬戸際に立たされる中、最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は党内や他の野党から、首相不信任決議案を下院に提出し、メイ政権の息の根を止めるべきだと迫られている。
メイ首相は12日、保守党内の不信任投票に勝利した。この時は保守党議員317人が対象だったが、野党が下院に不信任案を提出すれば、全650人の議員がメイ首相の命運を決めることになる。
1979年に当時のマーガレット・サッチャー保守党党首が不信任投票を実現させた際には、わずか1票差で労働党のジェームズ・キャラハン首相が退任に追い込まれ、次の総選挙でサッチャー政権が誕生した。
それ以降、不信任投票の規則は変更された。投票で過半数の議員が不信任を表明した場合、その後14日の間に後任首相が投票で信任を得る必要がある。14日以内に信任を得られなければ、総選挙となる。
労働党幹部は常に、総選挙の前倒しを目指してきた。その場合、コービン氏が勝利するという目算だ。
労働党は何を待っている?
労働党のイアン・レイヴリー委員長はフェイスブックに投稿した動画で、「勝利できるタイミングで不信任案を提出する十分な用意がある」と話した。しかし、急ぎすぎれば「メイ首相の力を強くするだけだ」とも付け加えた。
なぜ現時点では勝算がないのか?
下院に10議席を持つ北アイルランドの民主統一党(DUP)は、不信任案が提出された場合は保守党政権を支持するという約束をメイ首相と交わしている。
また、ブレグジット(イギリスのEU離脱)で北アイルランドとアイルランドの国境問題が焦点となっている中、DUPはメイ首相に離脱協定を修正する猶予を与えたいと考えている。
しかし、DUPによる閣外協力の約束はメイ氏個人に対するものではなく、DUPが反対する北アイルランドの「バックストップ(防御策)」を首相が捨てずに離脱協定を可決させようとした場合、DUPが寝返る可能性もある。
ではなぜ大勢が不信任案提出を急ぐのか

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スコットランド国民党(SNP)や自由民主党などの他の野党は、コービン氏が徹底抗戦の姿勢を見せず、保守党がブレグジットをめぐって空中分解するのを座視して待っているだけで、「臆病」だと批判する。
一方で、コービン氏の有力支持者で英最大労組「ユナイト」のレン・マクルスキー議長は、労働党党首は「労働党が与党になることに、ほとんどあるいはまったく関心のない人たち」から不信任案提出を「無理強い」されてはならないと釘を刺す。
コービン氏はこれまで、現政権を信任しないが、政権打倒のために「適切な」時期を待っていると発言してきた。
一刻も早い不信任投票を求める人たちの大半は、ブレグジットについて2度目の国民投票を希望し、そのためには労働党の支援が必要だと考えている。
これにはSNP、自由民主党、ウェールズの政党プライド・カムリ、緑の党、保守党の一部議員グループに加え、チュカ・ウムンナ議員やマーガレット・ベケット議員など、通常はコービン氏派ではない労働党の親EU「穏健」派も含まれる。
労働党で影のEU離脱相を務めるサー・キア・スターマーとトム・ワトソン副党首も、「いいから前に進もう」という姿勢で、不信任案提出に前向きだとされる。
労働党員の大多数が新たな国民投票を望んでいるという世論調査もある中、コービン党首は今年の労働党大会で党内からの圧力に屈した。離脱協定が下院で否決されても総選挙の実現に至らなかった場合は、党として新たな国民投票を支持することを考慮すると、党幹部が方針を改めたのだ。
つまり、コービン氏に不信任案を提出させたい人々の戦略は、離脱協定の否決にかかっている。
なぜ他の野党は不信任案を提出しない?
SNPなども自ら提出すると脅しはかけているものの、労働党の支援がなければ、ほとんど象徴的なものになってしまうだろう。
下院議員ならば誰でも不信任案を提出できるが、大政党の支持がなくては議会審議の時間を割いてもらえない。また、最大野党の指示がなくては成功する見込みもほとんどない。
不信任案の提出はいつになる?
メイ首相は17日、13日に出席したEU首脳会議について下院に報告する。その時点で、不信任投票を行うべきだという意見もある。
しかし、最終的に離脱協定の投票が行われる年明けが有力だ。
一方で、新たな国民投票を望む勢力は、年明けでは遅すぎるのではないかと懸念している。
また、プライド・カムリのリズ・サヴィル・ロバーツ議員は、合意なしブレグジットの方が「居心地がいい」コービン氏にとっては、その方が都合がいいかもしれないと話している。
合意なしブレグジットについて野党は?

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労働党幹部は、合意なしブレグジットは最も望まない結末だと頑として譲らない。自分たちは総選挙で与党に返り咲き、ブレグジットを延期してEUと再交渉し、EU関税同盟に残るための良い条件を引き出すことが狙いだと主張する。
労働党のジョン・マクドネル影の財務相は、合意なしブレグジットを避けるための代替案をメイ首相と協議する準備があるとしている。
マクドネル氏はBBCのラジオ番組に出演し、「この情勢では野党にとって、保守党の自滅を待つのが一番簡単なことだ。しかし、国の未来にとって問題はあまりに大きいので、そうもしていられない」と述べた。
その上でマクドネル氏は、合意なしを含むブレグジットのさまざまなシナリオについて下院で採決を取り、議員らが受け入れられる道を模索することをメイ首相に求めた。
「下院では合意なしに反対する議員がほとんどだと思う」とマクドネル氏は話した。
「それを一度はっきりさせて、議会を使って選択肢を狭め、合意なしブレグジットを可能性から排除するべきだ。その上で今度こそ、正しい議論を始めるべきだ」










