米保健福祉省、mRNAワクチンへの5億ドルの助成を停止

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米保健福祉省は5日、インフルエンザや新型コロナウイルスなどのウイルスに対抗するために開発されているmRNA(メッセンジャー・リボ核酸)ワクチンに対する5億ドル(約740億円)の助成を打ち切る方針を示した。
この決定により、ファイザーやモデルナなどの大手製薬会社が主導する、22件のプロジェクトが影響を受けるという。これには、鳥インフルエンザなどのウイルスに対するワクチン開発が含まれている。
ワクチン会議論者のロバート・F・ケネディ・ジュニア保健長官は、「mRNA技術は、これらの呼吸器系ウイルスに対して利益よりもリスクが大きい」との見解を示した。
ケネディ長官は長年にわたりワクチンの安全性や有効性に疑問を呈してきたことで知られている。その保健政策に対する姿勢については、医師や専門家からは批判の声が上がっている。
新型コロナウイルスに対応するmRNAワクチンの開発は、パンデミックの抑制と数百万人の命を救う上で極めて重要だったと、アメリカ食品医薬品局(FDA)の元高官、ピーター・ルーリー氏は述べた。
ルーリー氏はBBCに対し、保健省の方針転換は、アメリカが「次のパンデミックに対抗するための特に有望な手段を見限ったことを意味する」と語った。
一方、ケネディ長官は声明で、担当チームは「この分野の科学を精査し、専門家の意見に耳を傾け、行動した」とした上で、「データは、これらのワクチンが、COVID(-19)やインフルエンザのような上気道感染症に対し、効果的な防御を提供できていないことを示している」と主張した。
ケネディ長官は、保健福祉省の予算を「ウイルスが変異しても有効性を維持できる、より安全で汎用性の高いワクチンプラットフォーム」に振り向けるとしている。
さらに、mRNAワクチンは「新たな変異を促進し、ウイルスがワクチンの防御効果を回避するように絶えず変異することで、パンデミックを長引かせる可能性がある」との見解を示した。
将来のパンデミック対応に懸念
専門家らは、ワクチンの有無にかかわらずウイルスは変異すると指摘している。
米フィラデルフィア小児病院ワクチン教育センターの責任者で小児科医のポール・オフィット博士は、インフルエンザウイルスは、人々のワクチン接種の有無に関係なく、毎年変異していると述べた。一方で、麻疹(はしか)ウイルスは大多数がmRNAワクチンを接種しているにもかかわらず、変異していないと説明した。
オフィット博士は、mRNAワクチンは「驚くほど安全」だとした上で、新型コロナウイルスなどの重症感染症を防ぐ重要手段だと語った。
保健福祉省は、ワクチン開発を担当する生物医学先端研究開発局(BARDA)が「安全性の実績がより高く、臨床および製造データの透明性が確保されたプラットフォーム」に注力すると説明している。
一部のワクチンは不活化ウイルスを使い免疫反応を引き起こすが、mRNAワクチンは、細胞に免疫反応を誘導するたんぱく質の作り方を教える。モデルナとファイザーのmRNAワクチンは、実用化前に数千人を対象に試験が行われ、安全性と有効性が確認されている。
ロタウイルス・ワクチンの開発者でもあるオフィット博士は、今回の資金打ち切りにより、アメリカが将来のパンデミックに対応する上で「より危険な状況」に置かれる恐れがあると警鐘を鳴らした。また、mRNAワクチンは開発期間が短いことから、新型コロナウイルス対応で極めて重要だったと述べている。
ケネディ長官は就任以来、アメリカの保健当局がワクチンを開発・規制する方法を大きく変えるための措置を複数講じている。
6月には、予防接種に関して米政府の公式勧告を出す諮問委員会のメンバー17人全員を解任し、ワクチンの安全性と有効性に疑問を呈してきた人物らを新たに任命した。
また、健康な子どもや妊婦に対する新型コロナウイルスワクチンの接種を、疾病対策センター(CDC)の推奨予防接種スケジュールから削除した。











