米政府、グリーンランド領有へ軍の活用も選択肢として検討と

抗議デモに多くの人が集まっている。プラカードやグリーンランドの旗を掲げている人もいる。背景には雪が積もった山が見える

画像提供, Reuters

画像説明, 「私たちは売り物ではない」と書いたプラカードを掲げて抗議する人たち(2025年3月、グリーンランド・ヌーク)

米ホワイトハウスは6日、ドナルド・トランプ大統領が、デンマーク自治領グリーンランドの領有に向け、軍の活用を含む「さまざまな選択肢」について検討していると明らかにした。

ホワイトハウスはBBCの取材に対し、グリーンランド領有は「国家安全保障上の優先事項」だとする声明を出した。

また、「大統領とそのチームは、この重要な外交目標の追求でのさまざまな選択肢を議論している。もちろん、米軍の活用は全軍の最高司令官(訳注:大統領の意味)が常に使える選択肢の一つだ」とした。

トランプ氏は先週末、グリーンランドについて、アメリカが安全保障上の理由から「必要としている」とする、以前からの主張を繰り返した。

グリーンランドを半自治領としているデンマークは、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国。同国のメッテ・フレデリクセン首相は5日、アメリカによる攻撃はNATOの終わりを意味すると警告した。

NATOは大西洋をまたぐ軍事同盟で、加盟国は外部から攻撃された場合に互いに助けることになっている。

欧州6カ国がデンマーク支持の共同声明

ホワイトハウスが今回の声明を出す少し前、欧州6カ国は6日、同盟国デンマークを支持する共同声明を発表した。

イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、デンマークの首脳らは、「グリーンランドはその土地の人々のものであり、デンマークとグリーンランドだけが両者の関係を決定できる」とした。

首脳らはまた、北極圏の安全保障についてはアメリカと同じくらい気にかけていると強調。ただそれは、アメリカを含むNATO同盟国によって「集団的に」達成されなくてはならないとした。

首脳らはさらに、「主権、領土保全、国境の不可侵を含む国連憲章の原則を守る」ことも求めた。

グリーンランドが北米大陸(左側)と欧州・アフリカ大陸(右側)の間に位置しているのを示す地図。グリーンランド南部に首都ヌークの位置が示されている。北米側はカナダとアメリカ、米首都ワシントンが、欧州側はデンマークの位置が示されている

グリーンランドのイェンス=フレデリック・ニールセン自治政府首相は、欧州首脳たちによるこの声明を歓迎。「敬意ある対話」が必要だとした。

「対話は、グリーンランドの地位が国際法と領土保全の原則に根ざしているという事実を尊重した上で行われなければならない」

グリーンランドをめぐる問題は、アメリカによるヴェネズエラへの軍事介入が実施されたことで、再び注目されている。米精鋭部隊は3日、ヴェネズエラに出動し、ニコラス・マドゥロ大統領を拘束。麻薬と武器に関する犯罪の疑いなどで裁判にかけるため、米ニューヨークに連れ去った。

同氏の夫のスティーヴン・ミラー次席補佐官は5日、「グリーンランドはアメリカの一部であるべきだというのが、米政府の公式の立場だ」と米CNNのインタビューで発言。グリーンランド併合のために武力行使はしないと言えるのかと繰り返し問われると、「グリーンランドの将来をめぐって、誰もアメリカと軍事的に戦ったりしない」と答えた。

買い取りの意向を説明か

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、マルコ・ルビオ米国務長官は5日、議会の機密ブリーフィングで、トランプ政権はグリーンランドを侵略するつもりはなく、デンマークから島を買い取りたいと考えていると説明したという。

一方、ロイター通信は匿名の米政府高官の話として、アメリカの選択肢には、グリーンランドの完全な購入か、グリーンランドと「自由連合協定(COFA)」を結ぶことが含まれていると報じた。

これより先、グリーンランドとデンマークは、グリーンランドに関するアメリカの主張について協議するため、早急にルビオ氏と会うことを求めたと明らかにした。

デンマークのラース・ルッケ・ラスムセン外相は、ルビオ氏と会うことで「ある種の誤解」が解けるはずだと述べた。

トランプ氏はこれまで、グリーンランド支配を確保するため武力を行使する可能性を否定していない。

トランプ氏は、アメリカがグリーンランドを併合すれば、その戦略的な位置とハイテク分野に不可欠な鉱物資源が豊富なことから、アメリカにとって安全保障上の利益につながると主張している。

トランプ政権が昨年末にグリーンランド担当特使を任命したことに、デンマーク国内では反発が高まった。

グリーンランドは人口約5万7000人で、1979年以来広範な自治権を持っているが、防衛と外交政策はデンマーク政府が担っている。

グリーンランド人の大多数はいずれデンマークから独立することを支持しているものの、世論調査ではアメリカの一部になることについて圧倒的に反対する結果が出ている。

グリーンランド西部イルリサットに住む先住民イヌイットのモルガン・アンガジュ氏(27)はBBCに対し、「自由世界の指導者がデンマークとグリーンランドを笑いものにし、自分のものにできるもののように私たちについて話すのを聞いて、ぞっとしている」と話した。

アンガジュ氏はまた、グリーンランド自治政府の首相が今後、ヴェネズエラのマドゥロ大統領と同じ運命をたどるのではないか、アメリカが「私たちの国を侵略する」のではないかと懸念していると述べた。