トランプ氏、インドに50%関税と警告 ロシア産原油購入を非難

2月、ホワイトハウスでの記者会見でドナルド・トランプ大統領と握手するインドのナレンドラ・モディ首相。2人の背後にはインドとアメリカの国旗。モディは横顔で、トランプは前を向いている

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画像説明, インドのナレンドラ・モディ首相(左)とドナルド・トランプ米大統領(2025年2月、ワシントン)

アリ・アッバス・アフマディ記者(トロント)、ソウティク・ビスワス記者(ロンドン)、アルチャナ・シュクラ記者(ムンバイ)、BBCニュース

アメリカのドナルド・トランプ大統領は6日、ロシア産原油の購入を理由に、インドに対して、25%の追加関税を課す大統領令を発令した。これにより、インドからアメリカへの輸入品に対する関税率は合計で50%となり、アメリカが課している関税の中でも最も高い水準の一つとなる。

大統領令によると、新しい税率は21日後の8月27日に発効する。

これを受けてインドの外務省は声明を発表し、ロシアからの輸入に関するインドの立場はすでに明確にしていると強調。今回の関税について「不当で、根拠がなく、合理性を欠いている」とあらためて非難した。

「したがって、複数の国が自国の利益のために行っている行動について、アメリカがインドに追加関税を課すことを選んだのは極めて遺憾だ」

そのうえで、「インドは自国の利益を守るために必要なあらゆる措置を講じる」と声明は述べている。

トランプ大統領は以前から関税の引き上げを警告しており、インドについて、「ウクライナでロシアの戦争機構によってどれだけの人が殺されているか、気にしていない」と述べていた。

「非常に多くの2次制裁がある」とトランプ氏

ホワイトハウスは6日の声明で、「ロシア連邦によるウクライナでの行動は、アメリカの国家安全保障および外交政策に対する継続的な脅威となっている。この国家非常事態に対処するため、より強力な措置が必要だ」と述べた。

また、インドによるロシア産原油の輸入は、ウクライナにおけるロシアの活動に対抗するアメリカの取り組みを損なうものだと指摘した。

そのうえでホワイトハウスは、アメリカはロシアから原油を輸入している他の国も特定し、「必要に応じ、大統領に追加の措置を勧める」としている。

石油と天然ガスはロシアの最大の輸出品で、主な輸出先には中国、インド、トルコが含まれている。

その後、ホワイトハウスでのイベントでトランプ大統領はBBCの質問に答え、インドへの関税は始まりにすぎないと述べた。「これからもっと多くのことが起きる。非常に多くの2次制裁がある」とトランプ氏は話した。

商品データプラットフォーム「ケプラー」によると、現在ロシアはインドにとって最大の原油供給国となっており、インドの全体供給量の35%以上を占めている。

また、ロイター通信が共有した貿易データによると、インドは今年上半期にロシアから1日あたり約175万バレルの原油を購入していた。

今回の関税引き上げの警告は、大統領特使を務めるスティーヴ・ウィトコフ氏が6日、ロシアとウクライナの和平を目指してモスクワでウラジーミル・プーチン大統領などと会談した直後に出された。

追加関税が発効すれば、インドの主要輸出品である繊維製品、宝石・貴金属、自動車部品、海産物などに対して50%という高率の関税が課され、雇用を支える重要な産業に打撃を与えることになる。

一方で、iPhoneを含む電子機器や医薬品は、現時点では対象外とされている。

インド政府はこれまでにも、ロシア産原油の購入を理由とした関税引き上げの脅しについて「不当で合理性を欠く」と非難してきた。

インド外務省の報道官は以前の声明で、アメリカは紛争初期に「世界のエネルギー市場の安定を強化するため」として、インドにロシア産ガスの輸入を奨励していたと指摘した。

また、インドが「ロシアからの輸入を始めたのは、紛争勃発後に従来の供給がヨーロッパに振り向けられたためだ」と述べている。

今回の関税措置は、ウクライナ戦争に関連する制裁を、アメリカが同盟国や主要な貿易相手国に対しても辞さない姿勢を示すものと受け止められている。

トランプ大統領は、8日の期限をもってロシアへの新たな制裁と、ロシア産原油を購入する国に対する100%の関税を課すと警告しており、今後、他国にも深刻な影響が及ぶ可能性がある。

トランプ政権が2次制裁として関税を課すのは今回が初めてではない。現在、ヴェネズエラ産原油の購入者に対しても同様の措置が取られている。

インドはこれまでにも、最大の貿易相手国のアメリカが関税を導入したことを批判している。また、アメリカ自身が依然としてロシアとの貿易を続けている点を問題視している。

アメリカは昨年、厳しい制裁と関税にもかかわらず、推定35億ドル(約5160億円)相当の品目をロシアと取引していた。

トランプ大統領とインドのナレンドラ・モディ首相は、過去に互いを友人と呼び合っていた。トランプ氏の第1期中には、互いの政治集会に参加したこともある。

それにもかかわらず、トランプ氏はインドに対して関税を課しており、両国間での利害の不一致が浮き彫りになっている。

インド輸出機構連盟(FIEO)は、追加関税の決定について「極めて衝撃的だ」と述べ、インドの対米輸出の55%が影響を受けると警告している。

関税の導入により、インド製品のアメリカでの価格は大幅に上昇するとみられる。デリーに拠点を置くシンクタンク「グローバル貿易研究イニシアティブ(GTRI)」によると、対米輸出は40〜50%減少する可能性があるという。

GTRIの代表で、元インド通商当局者のアジャイ・スリヴァスタヴァ氏は「インドは冷静さを保ち、少なくとも6カ月間は報復を避けるべきだ。脅しや不信のもとでは、アメリカとの意味のある貿易交渉は進まない」と語った。

(分析協力:アンソニー・ザーカー北米特派員)