【ミラノ・コルティナ五輪】 ウクライナのスケルトン選手、「追悼ヘルメット」着用続ける IOCは禁止

白黒の顔写真がちりばめられたグレーのヘルメットをかぶった選手が、氷上でスケルトンをしている

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画像説明, ウラジスラフ・ヘラスケヴィッチ選手のヘルメットには、戦争で亡くなったウクライナのアスリートたちの写真があしらわれている
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ミラノ・コルティナ・オリンピック(五輪)で、ウクライナのスケルトン男子選手が着用しているヘルメットが議論を呼んでいる。ロシアによる全面侵攻で殺されたアスリートらの写真をちりばめていることが問題視され、国際オリンピック委員会(IOC)が使用禁止を通告。しかし、同選手は11日の練習でもこれをかぶり、今後も使い続けると表明している。

スケルトン男子は12日に予選が始まり、13日に決勝がある。ウラジスラフ・ヘラスケヴィッチ選手(26)は9、10両日の練習で、問題となっているヘルメットを着用。この日もかぶり続け、「これらのアスリートは競技場に立つに値するからだ」と述べた。

IOCは、このヘルメットがオリンピック憲章に違反するとし、使用を禁止した。同憲章の規則50条2項は、「オリンピックの用地、競技会場、その他の区域ではいかなる種類のデモも、政治的、宗教的、人種的な宣伝も許可されない」と定めている。

IOCは、追悼の意を表する別の方法として、黒い腕章を着用することを提案している。

ヘラスケヴィッチ選手は、ヘルメットの着用を続けてもIOCが制裁を科すことはないはずだとの考えを表明。「私たちにはこのヘルメットを競技でかぶる権利があると信じている。ルールに完全に従っているからだ」と主張した。

また、「これら全ての選手をたたえる分の黒い腕章をIOCは持っていないと思う」と述べた。

ヘラスケヴィッチ選手は、ウクライナ初のスケルトン選手。ロシアによる侵攻の直前に開催された2022年北京五輪では、「ウクライナでの戦争は認めない」と書かれたプラカードを掲げた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、同選手に対し、「私たちの闘いの代償を世界に思い出させてくれた」と、Xへの投稿で感謝の意を表明した。

失格処分にするのか

IOCは、問題のヘルメットをかぶり続けた場合にヘラスケヴィッチ選手を失格させるのか、「仮定の事態を論じるのは有益ではない」として明言していない。

IOCの広報担当マーク・アダムズ氏は、IOCとして予選のある12日にヘラスケヴィッチ選手に連絡を取るとし、「悲しみを表明する多くの機会があると改めて伝える」と述べた。

また、同選手が会場のミックスゾーン(報道陣が選手にインタビューできる区域)やソーシャルメディアでヘルメットを見せることは認めるとした一方、「競技場は神聖だ」と強調。

「彼には競技に出場してほしいと強く思っている。全てのアスリートに自分が輝く瞬間をもってほしいと願っている」、「しかしルールや規則が存在し、それを順守させるよう、選手らは私たちに求めている。最終的にはIOCが判断する」と述べた。

ヘラスケヴィッチ選手は、ヘルメットの写真の多くはアスリートだとし、重量挙げのアリーナ・ペレグドワ選手、ボクシングのパヴロ・イシェンコ選手、アイスホッケーのオレクシー・ロギノフ選手らが含まれていると説明している。また、何人かは自分の友人だと話した。

ヘラスケヴィッチ選手は、「私たちはこのヘルメットで、このアスリートたちの記憶をとどめている」、「何人かはオリンピック・ムーブメントを担っていた。オリンピック・ファミリーの一員だった。ここにいるのにふさわしいと思っている」と述べた。

米フィギュア選手が写真掲げたのを引き合いに

10日にあったフィギュアスケート男子ショートプログラムでは、アメリカ代表のマキシム・ナウモフ選手が演技後の採点待ちの間に、米首都ワシントン近郊で先月起きた航空機事故で死亡した両親の写真を掲げた。

ヘラスケヴィッチ選手は、この件にも言及し、自らの正当性を主張。ナウモフ選手の行為と、自分のヘルメットによる追悼がどう違うのか、理解できないとし、「あの選手たちは罰せられなかったのだから、私も罰せられるべきではない」と述べた。

IOCのアダムズ氏は、ナウモフ選手の件について、「これは非常に感情的で、人間らしい感情の表れだ。そして私たちの主張を裏付けるものだ。このウクライナ人アスリート(ヘラスケヴィッチ選手)も同じことができる。ヘルメットを見せ、ミックスゾーンを歩き、人々と話すことができる」と述べた。

また、「私たちはルールを緩和し、黒い腕章の使用を認めた。ナウモフの件は、私たちの主張を強化するものだ。彼は競技に参加し、その後に、人間らしい感情を表現した」とした。

五輪で政治的メッセージを示した選手がIOCに失格にされた例は過去にある。

2024年パリ大会では、ブレイキンで難民選手団として出場したアフガニスタン出身のマニジャ・タラシュ選手が、予選で「アフガニスタンの女性を解放せよ」と書かれたケープを広げたことで失格となった。