トランプ氏、ゼレンスキー氏を「独裁者」と 「偽の情報空間に生きている」との批判に反発

米大統領専用機エアフォース・ワンを降りるドナルド・トランプ米大統領(19日、フロリダ州のマイアミ国際空港)

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画像説明, 米大統領専用機エアフォース・ワンを降りるドナルド・トランプ米大統領(19日、フロリダ州のマイアミ国際空港)

アメリカのドナルド・トランプ大統領は19日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼び、両者の亀裂を深める「口撃」を展開した。サウジアラビアで開かれたアメリカとロシアの和平交渉の場から除外されたゼレンスキー氏が、トランプ氏はロシアが支配する「偽の情報空間」に生きていると発言したことを受けてのもの。

「ゼレンスキーは早く動いた方がいい。さもないと、国がなくなるだろう」と、トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。

トランプ氏がゼレンスキー氏を「独裁者」と非難したことに、ドイツのオラフ・ショルツ首相ら欧州指導者たちから批判の声が上がった。ショルツ氏は、「ゼレンスキー大統領の民主的正当性を否定するのは単純に間違っているし、危険な行為だ」と述べた。

イギリスのキア・スターマー首相は、ゼレンスキー氏との電話協議で、同氏を支持することを明確に示した。

英首相官邸の報道官は、スターマー首相が「ゼレンスキー大統領を、民主的に選ばれたウクライナ指導者として支持すると表明した」と説明。

「第2次世界大戦下のイギリスのように、戦時中に選挙が実施されないのは全く合理的だ」と、付け加えた。

2019年5月にウクライナ大統領に就任したゼレンスキー氏は、昨年5月に任期を終えるはずだった。しかし、ウクライナでは、2022年2月にロシアが全面侵攻を開始したことを受けて戒厳令が出されており、選挙は実施されていない

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スウェーデンのウルフ・クリステション首相も、トランプ氏が「独裁者」という言葉を使ったことを批判した。ドイツのアナレーナ・ベアボック外相は、トランプ氏の発言は「ばかげている」と述べた。

「ツイートを放つのではなく、現実世界に目を向ければ、欧州で独裁政権下のような状況での生活を強いられているのが誰なのか、それがロシアの人々とベラルーシの人々だということが分かるはずだ」と、ベアボック氏は独放送局ZDFに語った。

ホワイトハウス関係者によると、トランプ氏の今回の投稿は、ゼレンスキー氏の「偽情報」発言に対する反応だという。

トランプ氏は投稿で、「私はウクライナが大好きだ」としつつ、「ゼレンスキーはひどい仕事をしている。彼の国は粉々になり、何百万もの人々が不必要に亡くなった」と続けた。その一方で、アメリカは「ロシアと、戦争終結に向けた交渉をうまく進めている」とした。

アメリカとロシアの高官は18日、サウジアラビア・リヤドで、ウクライナでの戦争終結をめぐる協議を行った。米ロの対面でのハイレベル協議は、ロシアがウクライナ全面侵攻を開始してから初めて。

ウクライナのアルセニー・ヤツェニュク元首相は、ロシアはトランプ氏の発言を受けて、「今まさにシャンパンを開けているところだ」とBBCに語った。

「ウォロディミル・ゼレンスキーは完全に、合法的に選ばれた大統領だ」と、ヤツェニュク氏は述べた。「戒厳令の最中に選挙は実施できない」。

言葉の応酬

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今回の言葉の応酬は、トランプ氏が18日、フロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴで記者団に対し、戦争が始まった責任がウクライナ側にあるかのような発言をしたことが発端だった。

トランプ氏は、裏切られたと感じているかもしれないウクライナの人々へメッセージはあるかと、BBCの記者から尋ねられると、ウクライナは交渉の場に自分たちの席がないことに「気分を害している」ようだが、「この3年間、そしてそれよりもずっと前から席はあった。(戦争は)かなり簡単に解決できていたはずだ」と答えた。

さらに、「そもそも(戦争を)始めるべきではなかった。取引できたはずだ」と述べた。

2022年2月に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻の開始を決めたことには言及しなかった。

ゼレンスキー氏は翌19日、ウクライナの首都キーウで記者団の取材に応じ、「我々は多くの偽情報を目にしている。これはロシアから発信されているものだ。指導者としてのドナルド・トランプ大統領にはしかるべき敬意を表するが(中略)彼はこの偽の情報空間に生きている」と述べた。

さらに、「アメリカはプーチンが長年の孤立状態から脱却する手助けをした」と考えているとした。

ゼレンスキー氏はその後、世界は「プーチンと共存するか、平和と共存するか」の選択を迫られていると述べた。20日にはアメリカのキース・ケロッグ・ウクライナ特使と会談するという。

ゼレンスキー大統領は14日、ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議にあわせて、アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領らと会談した。トランプ氏はウクライナの希少な鉱物資源へのアクセスを求めているが、ゼレンスキー氏は、その見返りとしての安全保障に関する具体的な内容が含まれていないことを理由に、合意案を拒否した。

トランプ氏は、ゼレンスキー氏は国民の4%にしか支持されていないと主張し、ゼレンスキー氏の支持率を問題にしようとしている。しかし、BBCヴェリファイ(検証チーム)によると、今月実施された世論調査では、ウクライナ人の57%がゼレンスキー氏を信頼していると回答している。

19日のトゥルース・ソーシャルへの投稿で、トランプ氏は、欧州諸国にも「口撃」の矛先を向けた。トランプ氏は、ウクライナでの戦争は「我々よりもはるかに欧州にとって重要」な問題だと書いた。

「我々には、(他国と)隔てる、大きな美しい海がある」

欧州諸国は、欧州地域に「平和をもたらすことに失敗した」とも、トランプ氏は投稿した。

こうした中、プーチン氏は、トランプ氏と「喜んで」会うつもりだと、記者団に述べた。

欧州連合(EU)はというと、ロシアに追加制裁を科す方針だとしている。

追加制裁の対象は、ロシアのアルミニウムと、石油を違法に輸出している疑いのある船舶数十隻。また、さらに多くのロシアの銀行を国際決済システム「SWIFT」から切り離すことや、より多くのロシア・メディアの欧州での放送活動を禁止することも含まれるとしている。