ゼレンスキー氏、トランプ氏はロシアの「偽情報空間」に生きていると

記者会見するゼレンスキー大統領(19日、キーウ)

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は19日、ドナルド・トランプ米大統領が自分や自分の政権を批判したことについて、トランプ氏が「ロシアが作り出した偽情報の空間に生きている」と反論した。

キーウで記者会見したゼレンスキー大統領は、アメリカが他の国と自分たちの二国間の問題を議論するのはアメリカの権利だが、トランプ政権はロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「長年の孤立から抜け出す」のを支援したと述べた。

トランプ政権は17日にサウジアラビア・リヤドで、ウクライナを除外した米ロ外相会談を実施。さらにトランプ大統領は18日、ウクライナでの戦争の責任はウクライナにあるとしたほか、ゼレンスキー氏の国内支持率は4%しかないと示唆した。さらに、ウクライナは交渉の場に自分たちの席がないことに「気分を害している」ようだが、「この3年間、そしてそれよりもずっと前から席はあった。(戦争は)かなり簡単に解決できていたはずだ」と述べ、「そもそも(戦争を)始めるべきではなかった。取引できたはずだ」と、戦争が始まった責任がウクライナ側にあるかのような発言を繰り返していた。

一方、プーチン大統領はリヤド会談後の最初のコメントで、外相会談を「非常に高く評価している」とコメント。今後の会談プロセスにはウクライナも参加すると、トランプ氏から伝えられたと述べた。

リヤド会談に参加したロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、戦争の「根本原因の一つ」はバイデン前米政権が「ウクライナを強引に北大西洋条約機構(NATO)に引きずり込もうとしたこと」だとするロシアの従来の主張を、トランプ大統領が受け入れたと称賛した。

トランプ大統領のウクライナ特使キース・ケロッグ氏は19日、ウクライナの立場を「じっくりと聞く」ためにキーウに到着した。ケロッグ氏はリヤドでの米代表団には参加していなかった。

ロシアの偽情報をもとに協議と

動画説明, ゼレンスキー氏、「米がプーチンを孤立から解放」

ゼレンスキー大統領は19日の記者会見で、リヤドでの米ロ外相会談を「悪名高い会談」と呼び、その場でロシアが嘘をついたと非難した。

「ドナルド・トランプ大統領には、彼を選んだアメリカ国民の指導者として尊敬しているが(中略)残念ながら彼は、偽情報の世界に生きている」とゼレンスキー氏は述べた。

ゼレンスキー氏はさらに、自分の支持率についてロシアが偽情報を流しているという「証拠」がウクライナにあるとし、米ロが協議しているのはロシアの偽情報にもとづく数字だと述べた。

ゼレンスキー氏は2019年に任期5年で当選した。ロシアの全面侵攻後に戒厳令が発令されて以来、選挙が中断されているため、大統領の座にとどまっている。

ゼレンスキー氏は自分の支持率について記者団から問われると、支持率について自分ではコメントしないことにしているものの、支持率58%という世論調査結果もあると答えた。

ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領のウクライナ特使に「キーウの街を歩き」、「自分の目ですべてを見て」もらいたいとも話した。

ゼレンスキー氏はまた、ウクライナの鉱物資源に対する大規模な権利をアメリカに与えることと引き換えに、自国の将来的な安全の保証をアメリカから確保するつもりはない、自分の国を売るつもりはないと言明した。

ゼレンスキー氏は、これまでの戦争で3200億ドル(約48兆2000億円)の費用がかかり、そのうち約2000億ドル(約30兆円)はアメリカと欧州連合(EU)が提供したと話した。これについてアメリカは、ウクライナ支援の90%はアメリカが出したものだと主張しているとゼレンスキー氏は指摘。自分たちはアメリカの支援には感謝しているものの、「真実は別のところにある」と述べた。

ゼレンスキー氏は会見後にソーシャルメディア「X」への投稿で、「ロシアが病的な嘘つきに支配されていることを、決して忘れてはならない。彼らは信頼できないし、圧力をかけなくてはならない」と書いた。

「侵略開始したのはロシア」

ロシアが2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始してから、間もなく満3年になる中、欧州諸国は情勢への対応に追われている。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は19日、欧州各国やカナダの首脳らとウクライナ問題について非公式に協議した。

イギリスのキア・スターマー首相はゼレンスキー大統領を「民主的に選ばれた指導者」と支持している。英首相官邸によるとスターマー氏は19日夜、ゼレンスキー氏に電話をかけ、ウクライナが「戦時中に選挙を一時休止」することは「まったく道理にかなったこと」だと述べ、「第2次世界大戦中のイギリスもそうだった」と話した。

ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は 「ヨーロッパの真ん中でこの戦争を始めたり求めたりしたのは、プーチン大統領だけだ」と述べ、「私たちはヨーロッパの安全と平和にとって、存亡の節目に立っている」と危機感を示した。

フランス政府ソフィー・プリマ報道官は「アメリカの論理を理解するのは困難だ」と述べ、ウクライナに対する支持を改めて強調した。

NATOに加盟するヨーロッパ諸国の首脳らは17日、パリで緊急首脳会議を開き、ウクライナ支援の方策を協議した。ウクライナに平和維持軍を派遣する案が検討されたものの、ロシアのラヴロフ外相はこの案を拒否した。 一方、トランプ大統領は平和維持軍の案を「素晴らしい」と支持し、欧州がそのつもりならば全面的に賛成するものの、アメリカは「とても遠い」ため、米軍は派遣されないだろうと述べた。

開戦当時のイギリス首相で、西側首脳の中でも率先してキーウをたびたび訪れてゼレンスキー氏を支援したボリス・ジョンソン元英首相はソーシャルメディア「X」で、「もちろん戦争を始めたのはウクライナではない」とした上で、「トランプの発言は歴史的な正確さを目指しているのではなく、欧州の人間に衝撃を与えて行動させるためのものだ」と書いた。

トランプ氏の第1次政権で副大統領だったマイク・ペンス氏も「X」で、「大統領閣下、この戦争を『始めた』のはウクライナではありません。何の挑発もされていないのに、数十万人の命を奪う残酷な侵略を開始したのはロシアです」と書いている。