イスラエルとハマス、ガザ和平案の第1段階に合意 トランプ氏と当事者が発表

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アメリカのドナルド・トランプ大統領は8日、自身が提案したパレスチナ・ガザ地区をめぐる和平案の第1段階に、イスラエルとイスラム組織ハマスが合意したと発表した。エジプトやカタールなどの仲介役はこの日、ガザ停戦や人質解放に向けて7時間にわたり交渉したという。イスラエルとハマス、仲介役も合意を認めた。
トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「イスラエルとハマスが我々が提案した和平計画の第1段階に合意した」と投稿した。
さらに、「これにより、すべての人質が間もなく解放され、イスラエルは合意された(撤退)ラインまで部隊を撤退させることになる。これは強固で耐久性のある永続的な平和への第一歩だ。すべての当事者は公平に扱われる!」とし、こう続けた。
「アラブ地域やイスラム圏、イスラエル、周辺諸国、そしてアメリカ合衆国にとって素晴らしい日だ。この歴史的かつ前例のない出来事を実現するために協力してくれたカタール、エジプト、トルコの仲介者たちに感謝する。ピースメーカー(平和を作る人)は幸いである!」
ガザでは、2023年10月7日にイスラエルを襲撃したハマスへの報復として、イスラエルが直後から軍事作戦を続けてきた。ハマスによるイスラエル襲撃では、約1200人が殺害され、251人が人質に取られた。
ハマスが運営するガザ保健当局によると、これまでのイスラエルの軍事作戦で6万7183人が殺害されている。うち2万179人は子どもだという。
イスラエル首相「素晴らしい日」
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「神の助けによって、すべての人質を連れ戻す」とする声明を出した。
ネタニヤフ氏は別の声明で、イスラエルとハマスがガザ和平案の第1段階に合意したことについて、「イスラエルにとって素晴らしい日」だとした。
また、9日に今回の合意の正式承認に向けた政府の会合を開き、「我々の大切な人質全員を連れ戻す」とした。
そして、「人質解放という神聖な使命のために動いた」として、イスラエル軍、トランプ氏、トランプ政権のチームに感謝を表明した。
イスラエル首相府の声明によると、ネタニヤフ氏は合意後にトランプ氏と電話で協議した。「非常に感動的で温かい会話をし、人質全員の解放で合意するという歴史的成果を祝福し合った」という。
ネタニヤフ氏はトランプ氏の「あらゆる努力と国際的リーダーシップ」に感謝し、トランプ氏もネタニヤフ氏の「揺るぎないリーダーシップと行動」に謝意を示したという。
声明には、「両首脳が緊密な協力関係を継続することで合意」し、トランプ氏がイスラエル議会での演説に招待されたとも書かれている。
ハマスは「戦争が終結する」
ハマスも声明で、ガザ戦争終結に向けた合意に達したと発表した。トランプ氏や関係国に対し、イスラエルに合意を完全に履行させるよう求めている。
ハマスはこの合意で「ガザでの戦争が集結し、占領軍の完全撤退が確保され、人道援助の流入が認められ、囚人交換が実施される」ことになると説明したと、BBCがアメリカで提携するCBSは伝えた。
ハマスはまた、カタール、エジプト、トルコ、トランプ氏の仲介努力に謝意を伝えるとともに、「イスラエル占領政府に合意条件を完全に履行させるよう」求めている。
ガザの人々は「比類なき勇気や誇り、勇敢さを示してきた」とも、ハマスは付け加えた。
そして、「我々は自由、独立、自己決定が達成されるまで、我々の民族の国家的権利を決して放棄しない」とした。

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仲介国も合意達成を発表
交渉を仲介したカタールの外務省も、イスラエルとハマスがガザ和平案の第1段階に合意したことを認めた。
同省報道官は、「仲介者たちは今夜、ガザ停戦合意の第1段階に関するすべての条件と実施メカニズムについて合意に達したことを発表する。これにより、戦争終結、イスラエル人人質とパレスチナ人囚人の解放、(ガザへの)援助物資の搬入が実現することになる」とソーシャルメディアに投稿した。
これ以上の詳細については、後日発表されるとした。

画像提供, Rushdi Abualouf / BBC News

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今後の展開は
ホワイトハウスの高官がCBSに語ったところによると、イスラエルは9日の閣議で、ガザ和平案の第1段階への合意について協議する。
正式承認されれば、イスラエルはガザにいる部隊を、合意された撤退ラインまで後退させなければならない。この高官によると、この撤退は24時間以内に完了する見込み。
人質解放は、撤退から72時間以内に開始されることになっている。
ホワイトハウスの高官は、ハマスに拘束されている人質の解放が13日から始まるとの見方を示しつつ、「ハマスは可能であれば、それ以前に開始するかもしれない」と付け加えた。
BBCのラシュディ・アブアルーフ・ガザ特派員は、パレスチナ高官の話として、イスラエルが9日午後2時ごろに合意を正式承認すれば、停戦は即時発効されると報告。
イスラエルは最初の5日間で、1日400台の援助トラックがガザに入ることを認め、その後は段階的に数を増やすという。
パレスチナ高官によると、トランプ氏が提案したガザ和平案に基づくイスラエル軍の撤退予想図に書かれた、人質解放に伴う第1弾の後退の位置を示す「黄色い線」は、イスラエルの安全保障上の要件と、ハマスに確実に人質を解放させる必要性を考慮して、位置が調整されたという。
また、ハマスが強く求めていたパレスチナ高官マルワン・バルグーティ氏の釈放については、イスラエル側が拒否したという。

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こうした中、パレスチナの情報筋は、イスラエル人人質と引き換えに釈放される予定のパレスチナ人囚人の最終リストを、ハマスがまだ受け取っていないと、アブアルーフ特派員に話した。
この情報筋によると、ハマスが釈放を求めている一部の人物の身元をめぐり、イスラエル国内で圧力が高まっていることが、リスト公開の遅れにつながっているという。数時間以内にこの問題を解決するための努力が続けられていると、情報筋は付け加えた。
今回の合意でイスラエルは、パレスチナ人囚人250人と、今回の戦争が始まった2023年10月7日以降に拘束している1700人を釈放する。
イスラエル紙ハアレツも、イスラエルの情報筋の話として、合意では、釈放されるパレスチナ人囚人の名前は明らかにされていないと報じている。
BBCのヒューゴ・バシェーガ中東特派員は、トランプ氏がガザをめぐる交渉に自ら関与し、ハマスだけでなくイスラエルにも合意を迫ったことで、交渉が進展したと報告。
ただし、今回の合意で、2年におよぶガザ戦争の終結への期待は高まっているものの、戦後のガザ統治や、武装解除を含むハマスの将来など、重要な詳細はまだ協議が必要なままだと、バチェガ特派員は指摘した。
トランプ氏、第1段階後にガザが「再建される」
トランプ氏は合意発表後に米FOXニュースの電話インタビューに応じた。その中で、ガザ和平案の第1段階の完了後に、「みんなが仲良くなり、ガザが再建されるだろう」と主張。「全く違う世界」になり、「ガザには富がもたらされる」だろうと語った。
また、「中東が一つになったと思う」とも発言。
「ガザはもっと安全な場所になると、我々は信じている。復興を遂げる場所になるだろう。周辺諸国が復興を支援するだろう。これらの国々は巨万の富を持ち、その実現を望んでいるからだ」とした。
そして、「中東に平和が訪れると大いに確信している」と述べた。
国際社会の反応
トランプ氏はFOXニュースの電話インタビューの中で、イランはあと1カ月くらいで核兵器を手に入れるところだったと発言。そうなっていれば、ガザ和平計画に悪影響を及ぼす可能性があったとし、こう述べた。
「私がそうなるのを許していたら、合意は実現しなかっただろう。仮に実現したとしても、核兵器を保有する、明らかに友好的ではない国が存在することで、合意に暗い影を落としていただろう」
「ご覧の通り、彼ら(イラン)はこの合意を祝福している」
「私は、イランがこの和平プロセスに関与することになると考えている」
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、国連が合意の「完全な履行」を支援し、人道援助の供給拡大とガザの復興を推進すると表明した。
また、すべての当事者に対し、人質の解放、恒久的な停戦の順守、人道物資の即時搬入を実現するよう求めた。
「この苦しみは終わらせなければならない」とグテーレス氏は述べた。
「すべての関係者がこの重大な機会をいかし、占領の終結やパレスチナ人の自己決定権の承認、そしてイスラエル人とパレスチナ人が平和と安全の中で共存できる2国家解決に向けた信頼できる政治的道筋をつけることを求める」
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は今回の合意を歓迎。「2年以上にわたる紛争、人質の拘束、そして甚大な民間人の犠牲を経て実現した、平和に向けた待望の一歩だ」と声明で述べた。
「我々は、すべての当事者が合意条件を尊重することを求める」
アルバニージー氏は、トランプ氏の「外交努力」と、交渉を仲介したエジプト、カタール、トルコに感謝の意を表明した。
また、オーストラリアは、ガザの将来においてハマスが役割を担うことを認めないという和平案の取り組みを支持するとした。
「ガザの復興や長期的な平和の確保、パレスチナ国家の樹立の道のりは、非常に長い」ものになるだろうと、アルバニージー氏は付け加えた。
イギリスのキア・スターマー首相は声明で、「トランプ大統領のガザ和平計画の第1段階について合意に達したという知らせを歓迎する」と述べた。
「世界中が心から安堵(あんど)する瞬間が訪れた。人質とその家族、そしてこの2年間に想像を絶する苦しみに耐えてきたガザの民間人にとっては、なおさらだ」
スターマー氏は、「この重要な第一歩を実現するために支援してくれた、エジプト、カタール、トルコ、そしてアメリカによる不断の外交努力に感謝する。この合意は遅延なく完全に履行されなけれならない。ガザへの救命を目的とした人道援助に対する制限の即時解除を伴うものでなければならない」とも声明で述べた。
「我々はすべての当事者に対し、自らが交わした約束を守り、戦争を終わらせ、紛争の公正かつ永続的な終結と長期的な和平に向けた持続的な道筋のための基盤を構築するよう求める。イギリスは和平計画の完全な履行を確保するため、これらの重要な即時の措置と、交渉の次の段階を支援する」












