トランプ氏、ガザ交渉の仲介役に「迅速な行動」を要求 間接交渉の前日

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ラシュディ・アブアルーフ・ガザ特派員、マロリー・メンシュ
アメリカのドナルド・トランプ大統領は5日、パレスチナ・ガザ地区での戦闘をめぐるイスラム組織ハマスとイスラエルの間接的な和平交渉が6日にエジプトで始まるのを前に、交渉に関わる全員が「迅速に行動」すべきだと訴えた。
この交渉は、アメリカが提案した20項目からなる和平案の一部にハマスが同意したことを受けて行われる。ハマスは、遺体を含む残るすべてのイスラエル人の人質を解放すること、およびガザが技術官僚によって統治されることを受け入れるとした一方で、イスラエルが重視する武装解除には触れず、他の点についての交渉を求めている。
ハマスはまた、今後のガザ統治にはかかわらないという主要な要求にも言及していない。
トランプ氏は、「(交渉は)かなり成功している」、「(交渉の)第1段階は今週中に完了すると聞いている。全員が迅速に行動するよう、私は求める」とソーシャルメディアに投稿した。
さらに、「時間が重要だ。さもなければ、大量の血が流れるだろう」と付け加えた。
トランプ氏は先に、記者団に対し、人質の解放が「間もなく」始まるだろうとの見方を示していた。
条件面で柔軟に対応する必要があるか問われると、トランプ氏は「我々が柔軟になる必要はない。全員がほぼ合意しているからだ。ただし、多少の変更があるのが常だ」と答えた。
「これはイスラエルにとっても、アラブ諸国やイスラム圏、そして世界全体にとっても素晴らしい取引だ。なので、我々は非常に喜んでいる」
ガザ空爆続く
ハマスが和平案の一部に同意し、トランプ氏がイスラエルに「爆撃を即時停止」するよう認めたにもかかわらず、イスラエルによるガザ空爆は続いている。
イスラエル政府のショシュ・ベドロシアン報道官は5日、「ガザ地区内では爆撃は停止しているが、現時点で停戦は成立していない」と述べた。
ベドロシアン氏は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相から「ガザの戦場で命の危険がある場合は(中略)防衛目的で反撃」するよう命じられているとした。
ガザからの報告によると、イスラエル軍は4日夜から5日にかけて空爆や戦車による砲撃を続け、ガザ市内の多数の集合住宅が破壊されたという。
ガザ境界近くのイスラエル南部のキブツ(農業共同体)ベエリ付近で取材していたBBC特派員は5日朝、ガザ側から爆発音が聞こえ、煙が上るのが見えたと報告している。
ハマス運営のガザ保健省によると、5日正午までの24時間で65人がイスラエル軍の攻撃で殺害された。
アメリカのマルコ・ルビオ国務長官はBBCがアメリカで提携するCBSニュースに対し、人質の解放を促進するには爆撃を停止する必要があると述べた。
「爆撃が続いている間は人質を解放できない。(中略)それを止めなければならない。しかし、ほかの調整も進めなければならない」と、ルビオ氏は5日放送のCBS番組「フェイス・ザ・ネイション」で語った。
また、「人質をできるだけ早く解放したい」とも付け加えた。
アメリカが提案した20項目からなる和平案には、ガザでの戦闘の即時停止や、ハマスが残りの人質48人(うち20人は生存しているとみられる)を解放するのと引き換えに、イスラエルが拘束中のガザ住民数百人を釈放することなどが含まれる。
ネタニヤフ氏は4日のテレビ演説で、ガザで拘束されている人質の解放について「近日中」に発表できることを望んでいると述べている。
ベドロシアン氏によると、ネタニヤフ氏は「トランプ政権との合意において、交渉期間を最大数日間に限定すると明確に述べた」という。
ネタニヤフ氏は、この重要な交渉に向けて、イスラエル代表団を6日に派遣するよう命じた。
一方で、ハマス幹部で交渉責任者のハリル・アル・ハイヤ氏率いる代表団は、5日夜にエジプト・カイロに到着予定。アル・ハイヤ氏は、イスラエルが先月、カタール・ドーハで、ハマス幹部5人を殺害した際に標的とされていた。
アメリカ代表団には、スティーヴ・ウィトコフ中東担当特使、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が含まれる。交渉にはカタールのシェイク・ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニ外相も出席する。
この交渉は、ガザ開戦以来最も重要な局面の一つとなる見込みで、停戦への道筋がついに現実的なものになるかが注目されている。
トランプ氏が提案した和平案をめぐってはここ数日間、ハマスが受け入れを拒んだり、厳しい条件を突きつけたりする用意を進めている様子が見られていた。そのため、多くのパレスチナ人は、ハマスが和平案の一部に同意したのは予想外だとしている。
ハマスは今回の公式声明に、従来から主張してきた「レッドライン(越えてはならない一線)」を盛り込まなかった。これは外部から圧力を受けたことの表れだと、多くの関係者は受け止めている。
交渉に詳しいパレスチナの高官がBBCに語ったところによると、カタールやエジプト、トルコの仲介者が、ハマスに対して対決的な姿勢をやわらげさせ、武器の扱いや戦後のガザ統治といった争点を交渉の場に委ねるよう説得するうえで、重要な役割を担ったという。
多くのガザ住民は、この戦術的柔軟性には大きなリスクが伴うと警告している。
交渉が1日長引くごとに、ガザでの死者が増え、破壊が進み、何十万人もの住民が家を追われることになる。
それでも、ハマスが明確な前提条件なしに交渉に臨むと決断したことは、2年近く続く戦争を経て、自分たちの影響力には限りがあることを認識したとも受け取れる。
トランプ氏は、米CNNのジェイク・タッパー司会者から、ハマスがガザでの権力維持を主張した場合どうなるかと問われると、ハマスは「完全消滅」に直面するだろうと、テキストメッセージで回答した。
トランプ氏は、イスラエルがガザでの初期撤退ラインに同意したと、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。これはアメリカが和平案と合わせて公表した、イスラエル軍の段階的な撤退ラインの最初のものを指しているとみられる。

ガザの人口分布データに照らし合わせると、約90万人のパレスチナ人が自宅への帰還を阻まれることが、トランプ氏が公開した撤退案を示す地図から読み取れる。
提案された撤退ラインは、ガザ最南端ラファ、北部のベイト・ハヌンとベイト・ラヒヤ、ガザ市の約4分の1、南部ハンユニスと中部デイル・アル・バラフの半分を切り分けるかたちになっている。
ハマスは3月と5月の交渉では、同様の地図を拒否していた。
ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部への奇襲攻撃を主導。この攻撃で約1200人が殺害され、251人が人質にされた。一方、ハマス運営のガザ保健省によると、直ちに反撃を開始したイスラエル軍の攻撃により、これまで少なくとも6万7139人が殺害された。
開戦以降、イスラエルは、BBCなどの国際報道機関のジャーナリストに対し、ガザへの独立した取材を認めていない。そのため、イスラエルとハマスの双方の主張を検証するのは難しい。
交渉担当者がエジプトでの交渉の準備を進める中、中東地域では人々が固唾(かたず)をのんで成り行きを見守っている。強い不信感や政治的ぜい弱性があるものの、今回の交渉がついに停戦への道を開くことが期待されている。








