ハマス、人質の解放に同意 トランプ氏はイスラエルにガザ攻撃停止を要求

灰色の空を背に、黄色い荒野に灰色のがれきが山積みになり、さらにその向こうには窓が吹き飛ばされ廃墟と化した様子の灰色の建物群が並ぶ

画像提供, Reuters

画像説明, イスラエルとガザの境界のイスラエル側から見たガザ地区(3日)

パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスは3日、約2年前に始まった同地区での戦争を終結させるためアメリカが示した和平案の一部を受け入れ、残るイスラエル人の人質を全員解放すると発表した。ドナルド・トランプ米大統領は5日を回答期限としていた。ハマスは声明で、提案についてさらに交渉を求めた。トランプ氏はハマスの反応を歓迎し、イスラエルにガザへの爆撃を停止するよう求めた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は声明で、イスラエルは「トランプの計画」の第1段階を直ちに履行する準備をしており、トランプ氏との「全面協力」を続けると述べた。またイスラエル軍は、和平案の実施準備に入ったと発表。イスラエル軍の公式メディアの記者は、イスラエル軍がガザでの部隊活動を「最小限」に縮小するとソーシャルメディアに投稿した。

ハマスは声明で、「トランプ大統領の提案に含まれる交換の方式に従い、イスラエル人の人質を、生存者も死者も全員、解放する」ことに同意すると述べた。ただし、「交換のための現場条件が満たされることが前提」だとしている。

さらにハマスは、「パレスチナの民意およびアラブ・イスラム諸国の支援に基づき」、「ガザ地区の統治を独立系(テクノクラート)からなるパレスチナ組織に引き渡すことに改めて同意する」と表明した。

ガザの将来とパレスチナ人の権利については、「関連する国際法および決議に基づく包括的なパレスチナの民の立場に結びつき、全体的な民意の枠組みの中で検討されている」もので、ハマスもその枠組みに参加するとしている。

ただし、トランプ氏の計画に含まれる、ハマスが武装解除に合意し、今後のガザ統治にはかかわらないという項目には言及しなかった。

ハマスの政治部門のタヘル・アル・ヌヌ幹部はBBCに対し、トランプ大統領の発言は「心強いものだ」と述べた。報道官は、ハマスには「(人質と収監者の)交換、戦争の終結、占領軍の撤退を達成するための交渉を直ちに開始する準備ができている」とも話した。

カタールも、ハマスの声明を歓迎。これまでガザ和平協議の仲介で核心的な役割を担ってきたカタール政府は、「我々は、(トランプ)大統領が発表した即時停戦の呼びかけを支持することを改めて表明する。これは人質の安全かつ迅速な解放を促進し、ガザ地区におけるパレスチナ人の流血を終わらせるための迅速な成果を達成することを目的としている」と述べた。

また、共に仲介役を担ってきたエジプトおよびアメリカと協力し、停戦の実施に向けた交渉を再開したと述べた。

イスラエルのネタニヤフ首相は声明で、「ハマスの反応を受けて、イスラエルはすべての人質の即時解放に向けたトランプ案の第1段階を直ちに実施する準備を進めている」と述べた。

「我々は、トランプ大統領の構想と一致する形でイスラエルが提示した原則に基づき、戦争を終結させるため、大統領およびそのチームと引き続き全面的に協力していく」と、首相は表明した。

トランプ氏「中東和平実現に近づいている」

動画説明, トランプ氏、中東和平実現に「とても近づいている」

トランプ氏はまず、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で声明を発表。「ハマスが発表した声明に基づき、彼らに持続的な平和の準備ができていると私は考える。イスラエルはガザへの爆撃を直ちに停止しなくてはならない。そうすれば、人質を安全かつ迅速に救出することができる!」と書いた(太字は原文で大文字)。

トランプ氏はさらに、「それを実施するには、今はあまりに危険すぎる。我々はすでに詳細についての協議を開始している。これはガザだけの問題ではなく、中東で長年の求められてきた平和に関するものだ」と書いた。

トランプ氏は自分とイスラエルが示した和平案について、3日の早い時点でハマスに対して、5日夕を回答期限とすると「トゥルース・ソーシャル」で通告。和平案を受け入れないならガザは「誰もみたことのないような、地獄のような」事態になると警告していた。

トランプ氏は続けて、ホワイトハウスの執務室で撮影した動画をソーシャルメディアに投稿した。カタール、トルコ、サウジアラビア、ヨルダン、エジプトの各国政府が和平案の交渉に協力したと感謝したほか、「今日は大きな日だ。これからどうなるか様子を見よう。最終的な文言と具体的な内容を確定しなくてはならない」と述べ、人質が「親のもとに帰ることを楽しみにしている」と付け加えた。

さらに、「我々は(中東における)平和の実現にとても近づいている」と、トランプ氏は述べた。

ガザでは現在、ハマスに拉致された48人が人質となっており、そのうち生存しているのは20人だけと考えられている。

イスラエル軍、ガザでの活動縮小か

ハマスの声明を受け、イスラエル国防軍(IDF)は声明で、イスラエル軍の最高司令官と軍および情報機関の幹部らが集まり夜通し話し合ったと発表。

声明によると、イスラエル軍参謀総長は「今回の情勢変化を受け、特別な状況評価会議を招集した」。この会議には人質・行方不明者対策本部の関係者も含まれていたという。

IDFによると、政府関係者の指示に基づき、参謀総長は「トランプ案の第1段階の実施に向けた準備を進めるよう指示した」という。

IDFはさらに、イスラエル軍兵士の安全が「最優先事項」だと強調。「IDFのすべての能力は南部司令部に配備される」と述べた。南部司令部はガザでの作戦を管轄している。

声明には、ガザでの軍事活動の縮小に関する具体的な計画は記されていないが、必要に応じて再び戦闘に備えるよう部隊に呼びかけている。

「参謀総長は、作戦の難しさを踏まえ、すべての部隊が高度な警戒態勢と注意力を維持する必要があると指摘した。また、あらゆる脅威を無効化する迅速な対応の必要性も強調した」と声明は付け加えている。

イスラエル軍の対応について、イスラエルの公式軍事ラジオ局「ガラツ」のドロン・カドシュ記者は、イスラエル軍がガザでの部隊活動を「最小限」に縮小するとソーシャルメディアに投稿した。

「トランプの発表を受けて、政治指導部はIDFに対し、ガザ占領作戦を停止するよう指示した」とカドシュ記者はXに書いた。

カドシュ記者の投稿によると、軍は防衛的な作戦のみを実施するよう指示されたという。

スターマー英首相も支援誓う

イギリスのキア・スターマー首相は、イスラエル人とパレスチナ人の持続可能な平和実現に向けた今後の交渉と作業を支援すると誓った。

スターマー首相は、ハマスが和平案の少なくとも一部を受け入れたことが、戦闘を終わらせ、人質を帰還させ、人道支援を「切実に必要としている人々」に届ける機会をもたらすと述べた。

「我々はすべての当事者に対し、合意を遅滞なく実行するよう求める」と、スターマー氏は強調した。

トランプ氏の計画とは

トランプ氏が和平へ向けて提示した20項目の計画の概要は次の通り。

第1段階では、ガザを「過激思想のない、テロのない地域とし、近隣諸国に脅威を与えない状態にする」。

第2段階では、ガザが「ガザの人々の利益のために再開発される」。

第3段階では、上記の2段階の実現を受けて「戦争は直ちに終結する」。イスラエル軍は「合意されたラインまで撤退」し、両者が人質と収監者を交換する準備を進める中で、すべての敵対行為が停止される。

ハマスが生存者・遺体を含むすべてのイスラエル人の人質を解放した後、イスラエルは約2000人のパレスチナ人囚人を釈放する。

トランプ氏は3日のハマス声明を受けてソーシャルメディアで、自分の計画の第3段階に言及し、「イスラエルはガザへの爆撃を直ちに停止しなくてはならない。そうすれば、人質を安全かつ迅速に救出することができる!」と書いた。

ホワイトハウスは9月29日の時点で、トランプ氏の計画が実現した場合のイスラエル軍の撤退範囲を示した概略図を公表していた。

BBCヴェリファイ(検証チーム)のマーリン・トマス、ベネディクト・ガーマン両記者によると、単純化された地図は正確ではないものの(たとえばガザとエジプトの境界は実際には直線ではない)、和平案でイスラエル軍がどう後退するのかが、うかがえる。

イスラエル軍の現在の位置を青い線で示したこの図によると、ハマスによる人質解放を受けたイスラエル軍の後退(地図の黄色線まで)で、占領下にあるガザ地区の面積は約55%となる。

計画に沿って国際安定化部隊(ISF)が動員された時点で、イスラエル軍はさらに図の赤線まで後退し、占領されている面積は約40%になる。

さらに、「安全保障緩衝地帯」が設置された時点でイスラエル軍はまた後退し、同軍による占領はガザ地区の約15%になる。

簡略化されたガザの概略図で、青い線がイスラエル軍の現在の位置を示し、黄色い線が人質解放に伴う第一弾の後退の位置を示す。国際安定化部隊(ISF)が動員された時点でイスラエル軍がさらに後退する位置を赤線で示している。

画像提供, 米ホワイトハウス

画像説明, ホワイトハウスが9月29日に発表した、トランプ案に基づくイスラエル軍の撤退予想図

ガザの死者少なくとも6万6288人

ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部への奇襲攻撃を主導。この攻撃で約1200人が殺害され、251人が人質にされた。一方、ハマス運営のガザ保健省によると、直ちに反撃を開始したイスラエル軍の攻撃により、少なくとも6万6288人が殺害された。

同保健省によると、現地時間3日正午までの24時間で、住民63人がイスラエル軍に殺害されたという。

イスラエルは北部ガザ市で地上侵攻作戦を続けている。イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は1日、イスラエル軍が「市の包囲を強めている」と述べた。

イスラエル軍はガザ市の住民に、南部に指定した「人道地域」への避難を命じている。これまでに数十万人が避難を余儀なくされたが、さらに数十万人が市内にとどまっているとみられている。