【ミラノ・コルティナ五輪】 「追悼ヘルメット」のウクライナ選手、失格に スポーツ仲裁裁に提訴

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ミラノ・コルティナ・オリンピック(五輪)で、ロシアによるウクライナ侵攻で殺されたアスリートらの写真をちりばめたヘルメットを国際オリンピック委員会(IOC)が使用禁止にした問題で、着用を続けると表明していたウクライナのスケルトン男子選手が12日、失格となった。選手側は、スポーツ仲裁裁判所に訴えを起こした。
このヘルメットをめぐっては、使用を禁止したIOCと、開会式でウクライナの旗手を務めたウラジスラフ・ヘラスケヴィッチ選手(26)の間で、話し合いが2日間、続けられていた。
IOCは、会場のミックスゾーン(報道陣が選手にインタビューできる区域)やソーシャルメディアでヘルメットを見せることや、競技中に黒い腕章を着けて追悼の意を示すことは認めると提案。同選手に競技への参加を求めたが、同選手は妥協しなかった。
そのため、IOCは同選手を失格とした。
スケルトン男子は12日に予選が始まり、13日に決勝がある。同選手は9~11日の練習で、問題となっているヘルメットを着用。「これら(写真)のアスリートは競技場に立つに値する」と述べていた。
失格となった後、ヘラスケヴィッチ選手はソーシャルメディアに、「これが私たちの尊厳の代償だ」と投稿した。
BBCスポーツの取材には、「メダリストになる可能性もあったのに、突然、私が納得できない規則解釈によって、出場できなくなった。同じ状況の他の選手たちは出場でき、何の制裁も受けていないのにだ」と話した。
失格の決定を受けて、ヘラスケヴィッチ選手はスポーツ仲裁裁判所(CAS)に緊急に訴えを起こした。
CASは大会期間中に臨時委員会を開催でき、訴えは直ちに審理される見込み。決定が出される時期は定かではない。
IOC会長が早朝に説得に
IOCのカースティ・コヴェントリー会長は、この日午前7時半にヘラスケヴィッチ選手と父親を訪ね、問題のヘルメットをかぶらないよう説得に努めた。会長によると、敬意ある話し合いが長時間続いたが、妥協点を見いだすことができなかったという。
会長はメディアの取材に、「メッセージには誰も異論を唱えていない。記憶を呼び覚ます力強いメッセージであり、記憶を伝えるメッセージだ」と説明。
ヘラスケヴィッチ選手側には、競技の前や、直後のミックスゾーンで、追悼の意を表したり、写真を見せたりする案を示したが、問題の解決には至らなかったと話した。会長は話し合いの場を去る際、涙を流していた。
オリンピック憲章は規則40条2項で、「オリンピック競技大会における全ての競技者、チーム役員その他のチーム関係者は、オリンピックの価値観及びオリンピズムの基本原則にのっとり、かつIOC理事会が定める指針に従って、表現の自由を享受する」と定めている。IOCは、同選手の競技でのヘルメット着用は、これに違反すると説明している。
IOCはまた、選手らはメディア取材やソーシャルメディア、競技開始時や紹介時の競技場では自らの意見を表明できるが、表彰式、競技中、選手村の中では、そうした表現は禁じられているとしている。
IOCは当初、「オリンピックの用地、競技会場、その他の区域ではいかなる種類のデモも、政治的、宗教的、人種的な宣伝も許可されない」と定めたオリンピック憲章の規則50条2項に従って、ヘラスケヴィッチ選手を失格にしたと、誤って説明していた。
認めれば「混乱が生じるのは明らか」
この日朝のIOCの記者会見では、広報担当のマーク・アダムズ氏が今回の決定の正当性を主張。「赤十字によると、いつだろうと130の紛争が進行している」、「競技場が表現の場となれば、混乱が生じるのは明らかだ。政治家らの圧力のもとで、アスリートが競技中に表現を強要されるような事態は避けなくてはならない」と述べた。
アダムズ氏はまた、IOCがヘラスケヴィッチ選手を出場禁止にするよう、ロシアのオリンピック委員会や政府から圧力をかけられたことはないとした。
同選手の失格をめぐっては、オリンピック選手らが衝撃や非難の声を上げている。
スケルトンのイギリス代表で五輪金メダルを2回獲得しているリジー・ヤーノルド選手は、「かなり衝撃的だ」、「IOCは彼に謝罪すべきだと思う。これは間違った決定だった」とBBCスポーツに話した。
ボブスレーの元イギリス代表選手で、五輪に2度出場したジョン・ジャクソン氏も、IOCの対応を批判。自らの軍務経験をふまえながら、「彼の姿勢は、亡くなった人たちをしのぼうというものだ」、「彼がしようとしたことを私は支持する。究極的には必要がないことに命をささげた人たちを覚えているのはとても大事なことだ」と話した。











