ロシア軍がウクライナ各地に一斉攻撃、侵攻後最大規模 39人死亡とゼレンスキー氏

ジェイムズ・ウォーターハウス、BBCウクライナ特派員(キーウ)

動画説明, ウクライナ・キーウ上空でロシアのミサイルが爆発する様子。ロシアは29日、ウクライナ全土に対して一斉攻撃を行った

ロシアは29日朝、ウクライナの首都キーウをはじめとする各地の都市をミサイルなどで一斉に攻撃した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、死者が39人に上ると明らかにした。ウクライナは、昨年2月の軍事侵攻開始以来、最大規模の砲撃だとしている。

ロシア軍はこの日、ウクライナの首都キーウや南部オデーサ、東部ドニプロペトロウシク、北東部ハルキウ、西部リヴィウを攻撃。合わせて160人以上が負傷した。

ゼレンスキー大統領は、39人が死亡し、160人近くが負傷したと述べた。ロシアが「保有するほぼすべての種類の兵器を使用して」複数の住居と産院1棟を攻撃したという。

ウクライナ空軍は、これほど多くのミサイルが一度に発射されたのは初めてだとした。

ウクライナの防空能力はここ数カ月で劇的に改善されていたが、29日の攻撃の数には対応しきれなかった。

ウクライナ空軍の報道官によると、ロシアは迎撃が難しい「X22」ミサイルを含む、極超音速ミサイルや巡航ミサイル、弾道ミサイルを使用した。「これほど多くの標的が同時に攻撃されたのはこれまでにない」と、報道官は付け加えた。

同空軍は、ミサイルとドローン(無人機)を使った158発の攻撃のうち114発を撃墜したと発表した。

ウクライナではこの日、爆撃された複数の場所から黒煙が上った。私たちはそのうちの一つに向かった。キーウ市ポディルスキー地区では、建設会社が所有する全長200メートルの倉庫が標的にされた。

倉庫は爆撃で大破。ミサイル直撃に特有の破壊の規模だった。この数カ月というもの、ウクライナの人々が絶えず恐れていたのは、主に破片の落下による被害と人命の喪失だった。しかし今や、はるかに大きな脅威が戻ってきた。

動画説明, ロシア軍の攻撃で崩壊した屋根の直撃をかろうじて免れるウクライナ・オデーサの聖職者

そこから数キロ離れた場所でも別の攻撃があり、高層ビルの片側のガラスが衝撃で吹き飛ばされていた。空は煙に覆われて暗くなりつつあった。キーウ市内を車で移動してこのような光景を目にするのは、全面侵攻の開始直後以来のことだ。

キーウでは9人が死亡した。防空シェルターとして使われている地下鉄の駅も、攻撃された。

今回もまた、被害はキーウに限られなかった。ウクライナ当局は、10機以上のイラン製ドローン「シャヘド」と、ミサイル15発が西部の都市リヴィウを標的にしたとしている。

ウクライナ北部のロシア国境に近いスーミ州コノトップ市もミサイル攻撃を受けた。また、オデーサではドローン攻撃を受けた高層ビルで火災が発生したと、当局が発表した。6歳と8歳の子供2人を含む4人が死亡、22人が負傷したという。

北東部の都市ハルキウではロシアの侵攻後、ミサイル攻撃は決してめずらしいものではないが、29日朝のように20発も集中的に飛来してくることはめったにない。イホル・テレホフ市長によると、一連の攻撃で病院1棟と複数の集合住宅が被害を受け、3人が死亡、13人が負傷した。

東部ドニプロペトロウシク州のセルヒイ・リサク知事は、同州ドニプロ市のショッピングセンターと産院が標的にされ、6人が死亡、28人が負傷したと発表した。南部ザポリッジャではインフラへの攻撃で8人が死亡、13人が負傷した。

ウクライナ領内の標的を狙ったロシアのミサイル1発が、ポーランド領空に一時侵入する事案も発生した。

動画説明, ウクライナ全土に「最大規模」の攻撃 ゼレンスキー氏は激戦地の部隊激励

国連のウクライナ人道支援調整官、デニース・ブラウン氏は、29日の攻撃は「破壊、死、そして人間の苦しみという爪痕を残した」とし、「容認できない、ぞっとする現実の新たな一例」だと述べた。

では、なぜロシアは今、今回のような攻撃を実施したのだろうか。

ロシアのミサイル備蓄量は以前ほどではないが、ウクライナ人を抑圧する戦術を維持したいというロシア政府の意向が、今回の攻撃で示された。身の危険をウクライナ人が感じれば、戦意喪失につながると、ロシア政府は期待しているのだ。

この1週間、ウクライナを後押しする動きも見られた。ウクライナは26日、ロシアが占領しているウクライナ南部クリミアでロシアの軍艦を破壊した。27日には、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が、今年最後の支援となる、2億5000万ドル相当の軍事支援をウクライナに提供すると発表した。

しかしこれは、現在米議会での党派対立により承認が阻止されている500億ドル相当のウクライナへの軍事支援策に比べると、比較的小さな変化といえる。

29日の攻撃について、ジョー・バイデン米大統領は、「この壊滅的な戦争が2年近く続いてもなお、プーチン氏の目的に変化がないことを世界にはっきりと思い出させるものだ。彼はウクライナを消し去り、その国民を服従させようとしている。彼を止めなければならない」と述べた。

今回のミサイル攻撃は報復か、あるいは新たな声明なのだろうか。ロシア国防省の報道官は、「指定された軍事目標はすべて攻撃された」と述べるにとどまった。

ウクライナ全土は常にロシアの攻撃にさらされているが、ウクライナはこれまで、侵略者による全土へのドローン攻撃やミサイル攻撃の大半から国を守ってきた。

ただ、今後もその能力を維持できる保証はない。