【ルポ】 ロシアが再び奪うかもしれない前線の街 ウクライナ東部クピャンスクのいま
ジェイムズ・ウォーターハウス、BBCウクライナ特派員(クピャンスク)

ウクライナ東部クピャンスクでのクリスマスは、名前だけの祝賀だった。子供たちの大半は避難しており、人口2万6000人のほんの一部だけが残っている。
前線に近いところにいると、直感的な緊張感を覚える。私たちが到着して1時間もしないうちに、2回サイレンが鳴り砲撃があった。
この街は半年間、占領され、昨年解放された。
しかし、西側諸国の支援が弱まり始めると、ロシア軍は反撃に転じた。
住民のスウィトラナさんは、「私たちは皆、死の恐怖におびえながら、ぎりぎりのところで生きています」と話す。スウィトラナさんは、地元の市場の小売店で働いている。

ここでは緊張感が最も伝わってくる。人々は私たちを不審に感じ、携帯電話で撮影し始めた。遠くで爆発音がこだましている。
「仕事に行くとき、何が起きるか分からない」とスウィトラナさんは語る。「ロシアのロケット弾に当たるのか、生きて家に帰れるのか」。
市場から離れ、緊張感から解き放たれると、街がいかに空っぽかが分かった。歩道を歩いているのは高齢者がほとんどだ。
しかし、私たちは木造の小屋で17歳のソフィアさんと出会った。ロシアの侵攻と共に育った世代だ。父親は前線で戦っていると語るソフィアさんを、この戦争がいかに硬化させたか、私たちはすぐに理解することになる。

「全面侵攻が始まった時、あらゆる場所に死があると気付きました」とソフィアさんは言う。「これを理解することでもっと強くなるし、砲撃の中のような、ストレスのかかる状況でさえ耐えられるようになります」
近隣の都市イジュームにあったソフィアさんの自宅は破壊されたため、一家はクピャンスクに移ってきた。友達は全員、かなり前に、ここから強制移動させられたという。
一見、ほとんど恐れを感じさせないソフィアさんだが、ウクライナの運命が懐疑的な西側の政治家たちによって決定されることには、明らかに不満を抱いていた。
「私はそれらの人々に、ここがどのような状況なのかを自分の目で見てもらいたいと思います。そうすれば、援助が必要かどうかの疑問はなくなるでしょう」。

<関連記事>
東部の別の街アウディイウカと同様、ウクライナ軍は丘の上にあるクピャンスクを高台から防衛している。街を二分するオスキル川を挟み、ロシアの進撃を食い止めようと奮闘している煙が見える。
ロシア軍はここから8キロメートルほど離れたところにいる。しかし、川の東岸まで押し戻してくるのではないかという恐れが出ている。
ウクライナの領土完全解放という野望は、ここでは実現が程遠く感じられる。代わりに、ウクライナの部隊がロシア軍の波状攻撃をはじき返す状況が続いている。

ロシア軍のドローン(無人機)が日常的に上空を旋回しており、大きな集まりは危険だ。クピャンスク近郊の小屋では、15人ほどのウクライナ兵がほんの短時間立ち止まり、クリスマスの祈りをささげた。
ろうそくのあかりが、兵士たちの吐く白い息を照らす。外の凍った土には薄く雪が積もっている。
第14独立機械化旅団のオレクシイさんは、私たちと自由に話すよう将校から強引に説得され、常に防衛態勢にあると説明してくれた。
「昼夜問わず、休みはありません。毎日24時間ずっとです」
オレクシイさんが戦っている間、アメリカの主要政治家らは500億ポンド近いウクライナへの軍事支援策に合意できないまま、クリスマス休暇に入っている。
「ロシアの標的は増えているため、こちらも砲弾がもっと必要だ」とオレクシイさんは話した。「ロシアは多くの人員と設備を投入しています。そこに慈悲はありません」

ウクライナ政府は、ロシアがクピャンスクを再び陥落させた場合、そこでとどまることはないだろうと主張している。ウクライナ全土をまだ狙っていると。
ウクライナが本当に望んでいるのは、ウクライナの勝利というアイデアを売り込むことだ。しかし、クピャンスクで吹いている戦いの風をみる限り、それはますます難しくなっている。
追加取材:ハンナ・コルヌス、カイラ・ヘルマンセン、マリアナ・マトヴェイチュク









