ガザ地区の死者2万人超とハマス 停戦交渉続くが行方不透明

画像提供, Reuters
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するハマスは20日、イスラエルによるガザ攻撃で殺害された人数が2万人を超えたと発表した。通信アプリ「テレグラム」に声明を出した。他方、ハマス指導者イスマイル・ハニヤ氏が参加したカイロでの停戦協議は、「結果のないまま終わった」とパレスチナ側の関係者がBBCに明らかにした。
実際はさらに多いだろうと複数の専門家
ハマスが発表した2万人という死者数について、国連のマーク・マロック=ブラウン元副事務総長はBBCのラジオ4に対して、実際はさらに多いだろうと話した。
「死傷者数は通常、破壊された建物のがれきが撤去できるようになり、その下に悲劇的に埋もれていた人たちを発見すれば、倍増するものだ」と、マロック=ブラウン氏は述べ、「現代においてこれほど民間人が集中的に死亡した紛争は、ほかにあまりない」と指摘した。

画像提供, Reuters
ハマスが発表する死傷者数の信ぴょう性については、米イェール大学のダニ・プール博士(集団衛生学)がBBCラジオ4に対して、ハマス保健省の数字はこれまで「国連の客観的推計や、イスラエル外務省の数字とさえも、傾向として一致してきた」と指摘。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)職員の死亡率も、ガザ全体についてハマスが発表する死亡率と合致するという。
これまでに発表されている死者数は、病院や遺体安置所に運ばれた人数なだけに、がれきの下などからの発見が進めば、人数はさらに増えるだろうと、プール博士も指摘する。
ハマスの保健省発表から、10月7日の戦闘開始以来(11月末の7日間の停戦時期を除く)、毎日平均300人近くが殺されてきたと推定できる。世界保健機関(WHO)のリチャード・ブレナン地域緊急事態ディレクターは、この死傷者数は信頼できるとの考えを示している。
BBC記者がラファ空爆を目撃

ラファで取材するBBCのアドナン・エルブルシュ記者は、クウェート病院の近くで取材中にイスラエル戦闘機が少なくともミサイル6発を発射するのを目撃したという。
「爆撃は激しく、いきなりだった。私の下で地面が揺れて、あたりは煙だらけになった。急いで向かった現場は、パニック状態でほこりだらけだった。大勢が走り回り、女性たちが悲鳴を上げていた」
「子供が一人、ぼうぜんと歩き回っていた。誰かを探している様子だった。見るからに衝撃を受けている高齢の女性が、周りの人たちに助けられていた」
「目撃した人たちによると、大勢が死傷し、今もがれきの下に閉じ込められている人もいるという」
「私が現場で撮影していると、救急車が次々とやってきた。ハマス運営の保健省はのちに、少なくとも12人がこの攻撃で殺されたと明らかにした」
カイロの停戦会議「結果なく終了」=消息筋
ハマス指導者イスマイル・ハニヤ氏が参加したカイロでの停戦協議について、パレスチナの消息筋は「結果のないまま終わった」とBBCに話した。カイロでの協議について知るパレスチナ高官が、トルコ・イスタンブールで取材するBBCのガザ特派員、ラシュディ・アブアルーフ記者に明らかにした。
それによると、交渉を仲介するエジプト政府が「人道的休戦の再開について提案した」ものの、戦争の「一時的な解決」を図るその案をハマス側が拒絶したのだという。
ハマスはエジプトに対し、「最終的な停戦が実現するまで、(人質と囚人の)交換取引は受け入れない」とのこれまでの立場を堅持すると伝えたという。
「協議は今後も続く。エジプト側は、今後数日中に打開策が見つかると楽観している。しかし、状況は厳しく交渉は長く難航するとも確信している」と、このパレスチナ側の消息筋はアブアルーフ記者に話した。
ふだんはドーハに住むハマスのハニヤ指導者は「高官級」代表団と共に、エジプトのアッバス・カメル情報長官と協議するためカイロを訪れている。

画像提供, EPA
米ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は20日、ガザ停戦の実現を向けて、「きわめて真剣な協議と交渉が続いているので、結果につながることを我々は期待している」と話した。
カービー氏は、ウィスコンシン州に向かうジョー・バイデン大統領に同行中、大統領専用機内で記者団に話した。
イスラエル・メディアの複数報道によると、停戦交渉はガザに残るイスラエル人人質とイスラエル刑務所に収監されているパレスチナ人囚人の交換が焦点になっている。

画像提供, Getty Images
イスラエルの主要メディアによると、イスラエル政府は仲介者を通じて、人質30~40人の解放を確保するための停戦案を提示している。残る女性のほか、男性のうち高齢者や緊急の医療手当を必要とする人を、解放の対象としているという。
人質解放と引き換えにイスラエルは、11月末に釈放した囚人よりも重い罪で収監しているパレスチナ人を釈放する意向とされる。今回の停戦期間は1~2週間と提案されているという。
イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は19日、諸外国の外交官に対して、イスラエルが「人質解放を実現するため、再度の人道的休戦実施と人道援助物資の追加搬入を認める用意がある」と述べた。
大統領はまた、イスラエルの対外情報機関モサドのダヴィド・バルネア長官がこの新しい提案を示すため、欧州を2度訪問したばかりだと明らかにした。18日にはバルネア長官がポーランドを訪れ、米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官と共に、カタールのシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アル・サーニ首長と会談したという。
<関連記事>
他方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は20日に声明をソーシャルメディアに投稿し、「最後まで戦争を続ける。ハマスが排除されるまで、勝利が得られるまで、戦争は続く」と主張。「我々がやめると考えている者たちは、現実から切り離されている。我々はすべての目標を実現するまで、戦いをやめない。目標とは、ハマスの排除、人質の解放、そしてガザからの脅威を取り除くことだ」と述べた。
ハマスによる10月7日の奇襲で人質にされた約240人のうち、100人以上が今もガザで生存していると考えられている。11月の一時休戦では、イスラエル人の女性や子供を中心に民間人105人が解放された。これに先立ち人質4人が解放されていたほか、兵士1人がイスラエル軍によって奪還されていた。
少数の遺体も発見されている。イスラエル首相府はハマスに捕らわれた人のうち20人以上が死亡したと確認した。
エルサレムで取材するBBCのヨランド・ネル中東特派員は、イスラエルの政府幹部はハマスを交渉の席に着かせるには強力な軍事的圧力をかけ続けるしかないと主張しているものの、ガザに残る人質の家族はその政府見解に否定的だと指摘する。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は20日、フランスのテレビ局「フランス5」に対して、「テロリズム」と戦うことは「ガザを焦土にしたり、無差別に民間人を攻撃することではない」と主張。大統領は「すべての生命の価値は等しく、私たちはそれを守る」として、イスラエルの現在の戦術は「不適切」と呼び、中止を求めた。
AFP通信によると、大統領は「イスラエルの自衛権およびテロと戦う権利」を認めたうえで、民間人保護や「人道的休戦につながる停戦合意」を求めた。
イスラエル軍、ガザ市の「ハマス中枢」制圧と
イスラエル国防軍(IDF)は20日、ガザ地区中心都市のガザ市においてハマスの「行政・軍事指導中枢部」だった地域を制圧し、ハマス幹部が使っていたトンネル・ネットワークを発見したと発表した。
IDFは、ガザ市アル・リマル地区にあるパレスチナ広場を中心とした一帯がハマスの「エリート区域」だったとし、その制圧を発表。パレスチナ広場は「ランティシ病院とシファ病院の地区にある地下インフラ」を結びつける「戦略的トンネル・ネットワーク」の中心だとも説明した。
IDFは、自軍兵士が複数のトンネルを探索する様子や、トンネルの入り口だとする位置を示した衛星画像の動画を発表したが、トンネルが二つの病院につながっているという証拠は示さなかった。











