イスラエル軍、ガザ住民に2つの避難経路示す ガザの死傷者1万人超える

画像提供, EPA
イスラエル国防軍は14日、パレスチナ自治区ガザ地区の北部に住む約110万人に対して、住民が通るべきという2つの避難経路を示した。イスラエル空軍は同日、7日のイスラエル侵入作戦を指揮したイスラム組織ハマスの司令官をドローン攻撃で殺害したと明らかにした。他方、ガザ当局によると、イスラエルの空爆によるガザの死傷者は1万人を超えた。
イスラエル軍のアヴィチャイ・アドラエ報道官はソーシャルメディアで、ガザ北部から南部へ移動する経路を2つ示し、現地時間の午前10時~午後4時(日本時間の午後4時~午後10時)の間は、「危害を受けることなく」ここを通行できると、ソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」でアラビア語で発表した。
報道官は、ガザ市の住民はハンユニスまで南へ移動するよう指示。沿岸部やザイトゥン地区西の住民にも、特定の道路を使った南への移動が認められるとした。
イスラエル軍の地上部隊によるガザ侵攻が近いとされている。イスラエルは地上攻撃の準備を進めており、ガザ地区との境界付近に兵士や重砲、戦車を集めている。
ガザ市と2つの難民キャンプが位置するガザ北部は、人口密集度の高いガザ地区でも特に人口の多い地域。南へ移動するための幹線道路は1本しかなく、自動車用の燃料はなくなりつつある。

こうした中、米国務省関係者は14日、ガザ地区にいるアメリカ国民は、エジプトへ至るラファ検問所からガザを出られることになったと明らかにした。イスラエルとエジプト両政府の合意を受け、現地時間正午から午後5時(日本時間午後6時~同11時)の間、ラファ経由の退避が認められるという。ただし、ハマスがこれを認めるかは不透明な情勢。
イスラエルとガザの間の通過地点は7日以降、すべて封鎖されてきた。ガザとエジプトを結ぶラファ検問所は、エジプトの管理下にあるものの、イスラエルの空爆が続き、ほとんど閉鎖されているか、通行が厳しく制限されている。

画像提供, EPA
イスラエル政府は12日、ガザ地区のワディ・ガザ(ガザ渓谷)以北の全住民は24時間以内にガザ地区南部に退避すべきだと通告した。退避の対象となるのは、ガザ地区の人口のほぼ半数の約110万人。人口密度が高いガザ市も含まれる。
イスラエルからの通告を受けた国連は声明で、「このような人の移動は、壊滅的な人道的影響なしには不可能だ」とした。
世界保健機関(WHO)は、ガザ地区の保健当局から、危険な状態にある入院患者を病院から避難させるのは不可能だと報告を受けたと明らかにした。
ハマスは、イスラエルによるこの退避勧告は「偽のプロパガンダ」だと主張し、無視するようガザの住民に呼びかけている。しかし、すでに大勢が自宅を離れている。
ただし13日夕方には、ガザ北部から南へ避難する市民の車列が空爆され、多数が死傷したという情報が拡散した。BBCヴェリファイ(検証チーム)が現場映像などを調べたところ、ガザ地区を南北に走るサラ・アラ・ディン通りで13日午後5時半ごろ、車列が攻撃されたのが確認できた。
サラ・アラ・ディン通りは、イスラエル軍が14日の時点で「危害を加えない」避難経路として、ガザ住民に向けて発表したルートのひとつ。
13日午後の現場映像では、少なくとも12人が遺体となってトラックの荷台や路上に倒れているのが確認できる。そのほとんどが女性と子供で、子供は幼児に見える。
パレスチナ保健当局はこれについて、イスラエルの空爆で70人が死亡したとしている。
イスラエル国防軍は、事実関係を調べているとする一方、ガザ住民が北部から避難するのを阻止しようとしているのは、敵の方だと主張した。

ガザの死傷者1万人超える=ガザ当局
ガザの保健省によると、14日までにイスラエルの空爆で死亡した人は少なくとも2215人に達し、負傷者は8714人に上る。報道官によると、死傷者の6割が女性や子供だという。
ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区では、ガザ空爆に抗議するパレスチナ人とイスラエル軍の衝突が続き、パレスチナ人54人が死亡、1100人が負傷している。
国連の人道問題調整事務所(OCHA)は13日、イスラエルによる7日からの空爆でガザ地区では「1300棟」の建物が破壊され多と発表。その中に含まれた「5540軒の住宅」が破壊され、さらに3750棟の民家が居住不可能なまでに破壊されたという。
OCHAは12日、 ガザで33万8000人以上が住む場所を失ったと発表している。
侵入作戦指揮の司令官殺害=イスラエル空軍

画像提供, Reuters
イスラエル空軍は14日、7日のイスラエル侵入作戦を指揮したハマスのアリ・カディ司令官をドローン攻撃で殺害したと明らかにした。イスラエル総保安庁(シンベト)とイスラエル参謀本部諜報局が入手した情報をもとに、カディ司令官殺害を成功させたとしている。
イスラエル軍はこれに先立ち13日、パレスチナ自治区ガザ地区内の一部で「テロリストのセル(小集団)とインフラによる脅威を排除」するため、地上部隊による急襲作戦を展開したと明らかにした。
イスラエル国防軍の報道官は13日、地上部隊による作戦行動は「その地域からテロリストと武器を一掃」し、「行方不明となっている人たち」を探すためだと説明した。
ハマスによって最大150人が拉致され、人質に取られたとみられている。
イスラエル軍は、部隊がガザ地区に入ることで、人質の居場所について手がかりになる証拠を集められたと説明した。
ソーシャルメディアに投稿した動画では、「イスラエル攻撃にガザ地区内のハマスのテロリスト拠点と対戦車ミサイルランチャーが使われた直後、イスラエル空軍はこれを引き続き空爆した」としている。
これに対してハマスの軍事部門「アル・カッサム旅団」は、イスラエル南部アシュケロンへのロケット弾発射を続けていると主張している。
発電所が燃料切れに
イスラエルによるガザの完全封鎖は続き、食料や水や燃料が枯渇しつつある。
イスラエルによる完全封鎖を受けて、ガザ唯一の発電所の燃料がなくなり、主要電源が切れた。電力を失い、ガザの上下水道システムも停止する見通し。
ガザの病院や家庭、事業所などは発電機を使っているが、この燃料もなくなりつつある。
ハマスや軍事部門のアル・カッサム旅団は、イスラエルのほかアメリカ、欧州連合(EU)、イギリスなどからテロ組織として認定されている。
他方でイランはハマスを支援し、資金や装備、軍事訓練などを提供している。
イスラエルによると、ハマスの戦闘員は約3万人にのぼり、自動ライフルやロケット推進式の手投げ弾、対戦車ミサイルなどの武器を所持しているという。
ガザ地区は、イスラエル、エジプト、地中海に挟まれた全長41キロ、幅10キロの領土。約230万人が暮らし、世界で最も人口密度が高い地域の一つとなっている。
ガザ地区の上空と海岸線はイスラエルが掌握しており、人と物の行き来もイスラエルが検問所で制限している。同様にエジプトも、ガザ地区との国境で出入りを管理している。














