北朝鮮、越境米兵を追放 米当局に引き渡し

Travis King US soldiers who crossed border to North Korea

画像提供, Reuters

画像説明, 米軍のトラヴィス・キング2等兵は7月に韓国から軍事境界線を越えて北朝鮮に渡った

北朝鮮当局は27日、今年7月に韓国から軍事境界線を越えて北朝鮮に渡ったトラヴィス・キング米2等兵(23)を国外追放したと発表した。

キング2等兵は中国でアメリカ当局に引き渡され、その後、アメリカ国内の軍施設に移送された。

偵察のスペシャリストだったキング氏は7月18日、韓国と北朝鮮の国境地域にある非武装地帯(DMZ)へのツアーに参加中、厳重警備の国境地域を走って北朝鮮に越境した。

北朝鮮メディアは、キング氏は米軍内での「非人間的な扱い」と人種差別を受けて逃亡したと報じていた。

米当局は27日、数カ月にわたる「集中的な外交」の結果、キング氏はアメリカの手に戻り、家族と話をしたと話した。

「キング氏は、帰国の途に就いたことを非常に喜んでいる。また、家族と再会することを非常に楽しみにしている」と当局者は語った。

「我々は医学的・精神的な懸念に対処し、キング氏が家族と再会できるよう、再統合のプロセスを通じて導いていく」

また、アメリカはキング氏の解放を取り付けるにあたり、何の譲歩もしなかったという。

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キング氏は、北朝鮮との国境にある中国・丹東市で米当局と会った後、米国務省の飛行機で韓国の米軍基地に移送された。

国務省のマシュー・ミラー報道官によると、キング氏は27日午後にアメリカに帰還する予定。

北朝鮮の国営メディアは27日、キング氏の国外追放を決定したと発表。詳細は明らかにしなかった。

声明では「朝鮮民主主義人民共和国の関係組織は、共和国領土に不法入国したトラヴィス・キング米兵を共和国法に基づいて追放することを決定した」と述べている。

キング氏は2021年1月に入隊し、ローテーションで在韓米軍の任務についていた。

北朝鮮へ越境する前、キング氏は韓国国内で暴行の疑いで訴追され、韓国の刑務所に約2カ月収容されていた。7月10日に釈放された後、アメリカでの懲戒手続きのためにソウル近郊の仁川空港に護送されたが、飛行機には乗らず、DMZ見学ツアーに参加したと伝えられている。

米政権高官はキング氏について、懲戒処分や行政処分の可能性の前に、健康状態の評価が当面の焦点になると述べた。

この高官によると、アメリカは9月初めの時点で、北朝鮮がキング氏の解放を考えていることを知ったという。

米朝は外交関係を結んでいないため、交渉は伝統的にスウェーデンの在北朝鮮大使館が代行している。

キング氏はスウェーデン大使館の職員に伴われて中国国境まで移送され、ニコラス・バーンズ駐中国アメリカ大使と会った。当局は、中国は「建設的な役割」を果たしたが「仲介」はしていないとしている。

キング氏の母親クローディン・ゲイツ氏の代理人を務めるジョナサン・フランクス氏は声明で、ゲイツ氏は米軍とそのパートナーらの「素晴らしい仕事ぶり」に「永遠に感謝するだろう」と述べた。

一方で、家族は「当面の間」取材を受けるつもりはないとしている。

キング氏の親族らは以前、米メディアに対し、キング氏が米軍内で差別を受けていたと話していた。

また、韓国で勾留されている間にメンタルヘルス(こころの健康)の問題に苦しんでいたと述べていた。

母親のゲイツ氏は8月にAP通信の取材に応じ、キング氏は「さまざまな理由から家に帰って来るべきだ」と話した。

「アメリカに家族がいるのに、韓国に留まりたいとは到底思えない」と、ゲイツ氏は話していた。

北朝鮮のアメリカへの態度

首都ワシントンに本部を置く米平和研究所の北朝鮮専門家、フランク・オウム氏は、キング氏の71日間にわたる拘束は、「重大な犯罪を犯したと認識されていない」アメリカ市民が拘束されたケースでは「かなり典型的」なものだと述べた。

一部のアナリストは、北朝鮮がキング氏を外交交渉の切り札として使うことを選んだのではないかと推測していた。

これまでのケースで北朝鮮は、アメリカ人拘留者の釈放を交渉するために、アメリカの上級代表が北朝鮮に出向くことを要求してきた。

以前は米国防長官事務所で北朝鮮に関する上級顧問を務めていたオウム氏は、「北朝鮮は、それが協議を再開させるための何らかの助けになるかもしれないと考えている」と語った。

「しかし今回は、北朝鮮がそうしたことに興味を持っているようには見えなかった。これは北朝鮮が今のところアメリカと関わることに興味を持っていないという事実を反映しているのかもしれない」

国務省のミラー報道官は27日、アメリカは北朝鮮との「外交に前向き」だが、北朝鮮政府はその可能性を繰り返し「拒否」してきたと述べた。

かつて国防副次官補と米中央情報局(CIA)の準軍事担当官を務めていたミック・マルロイ氏はBBCに対し、キング氏は「間違いを犯した若者」だが、アメリカの手に渡ったのは「良いこと」だと述べた。

「彼は米兵であり、彼を帰還させるために全力を尽くすことが重要だった」