ウクライナでの戦争がプーチン氏の指導力を腐食、CIAに絶好の機会=米CIA長官

ゴードン・コレーラ、BBC安全保障担当編集委員

William J Burns speaking during a Senate appearance

画像提供, Getty Images

画像説明, バーンズCIA長官

ロシアがウクライナで続ける戦争は、ウラジーミル・プーチン大統領の指導力を「腐食」させている――。米中央情報局(CIA)の長官が7月1日、イギリスで行った講演でこう発言した。

ロシア国内でウクライナでの戦争に対して不満が募っている現状は、CIAの情報収集に新しい機会をもたらしていると、ウィリアム・J・バーンズ長官は話した。英米関係を主要テーマにするイギリスのディッチリー基金による、毎年恒例の集まりで講演した。

ロシアの雇い兵組織ワグネルとそのエフゲニー・プリゴジン代表による6月24日の反乱から1週間を経て、バーンズCIA長官は、プリゴジン氏による「武装蜂起」と、ワグネルが首都モスクワへと進軍する光景に、誰もが「釘付け」になっていたと述べた。

プリゴジン氏の行動は、「プーチンの行動が本人の社会と体制にいかに腐食的な影響をもたらしているか、まざまざと見せつける」ものだったと同長官は話した。

また、プリゴジン氏の行動だけでなく、ウクライナ侵略をロシア国内で正当化していた根拠そのものを否定し非難したプリゴジン氏の発言内容は、今後かなりしばらくの間、余波をもたらすだろうとの見方を示した。

「戦争への不満が今後も、ロシアの指導体制を侵食し続けるはずだ」、「その不満の高まりは、我々CIAにとって一世一代の絶好の機会を作り出す」と長官は述べ、ロシア国内で情報源となる人をCIAが複数採用するチャンスだと説明した。

聴衆が笑うと、長官は「この機会を無駄にするつもりはない」、「フル回転で営業している」と話した。

CIAは最近、ロシア国内に住む人たちにメッセージを届けようと、新しいソーシャルメディア・キャンペーンを開始。ロシアで広く使われているメッセージアプリ「テレグラム」に動画を投稿するなどしている。このキャンペーンを通じてCIAは、当局の監視を回避しながらダークウエブでCIAに連絡をとる方法を、説明している。

この動画は公開第1週で、250万回視聴された。

バーンズ長官はこの日の講演でさらに、プリゴジン氏の反乱にアメリカ政府は一切かかわっていないという、他の米政府関係者の発言内容を繰り返した。

米紙ワシントン・ポストは6月30日、ワグネルの反乱の少し前にバーンズ長官がひそかにウクライナ・キーウを訪れていたと伝えた。これについてバーンズ長官は、講演では言及しなかった。

ワシントン・ポストによると、バーンズ長官とウクライナ政府幹部との協議では、ウクライナの反転攻勢が成功し、ウクライナが相当の領土を奪還すれば、ウクライナが優位な立場で交渉に臨める状況が開けるかもしれないという内容が取り上げられた。

2005~2008年にアメリカの駐ロシア大使だったバーンズ氏は、プーチン大統領を理解しようと過去20年間の大部分を費やしてきたおかげで、「プーチンやロシアについて偉そうに何か語るのはやめておいた方がいいと、かなり謙虚になれた」とも話した。

ただし、これまでの経験から学んだことだとして、ウクライナ支配を目指すプーチン氏のこだわりを、低く見積もるのは絶対に間違いだ――ともバーンズ長官は述べた。

ウクライナなくしてロシアは大国になれないし、自分自身も偉大な指導者になれないと、プーチン氏はそう信じているのだと、バーンズ氏は述べた。

「そのこだわりは悲劇的かつ野蛮で、すでにロシアに屈辱をもたらし、その弱点をさらけだした」

「プーチンの戦争はすでに、ロシアにとって戦略的な失敗となっている。その軍事的弱点があらわになり、経済は今後何年間も続く大打撃を受けている。プーチンの過ちのせいで、中国の格下のパートナー、中国の経済的植民地という未来が作られ、ロシアを待ち受けている」

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中国の話題になるとCIA長官は、アメリカと中国はすでに経済的に深い相互依存関係にあるのだから、アメリカが自らを中国から「デカップル(切り離す)」しようとするなど、愚かなことだと話した。

「国際秩序の形を変えようという意図を持つだけでなく、実際にそうすることができる経済・外交・軍事・技術の力を拡大し続けている国は、中国だけだ」

それだけにアメリカは、「分別を持って行動し、強靭(きょうじん)な供給連鎖を確保して『デリスク』(リスクを低減)し、(供給の)多様性を確保し、技術的な優位性を守り、生産能力に投資」するべきだと、バーンズ長官は強調した。