「AIは仕事を永久には破壊しない」……「AIの父」ルカン教授が主張

画像提供, META
人工知能(AI)研究の先駆者として「AIの父」と呼ばれている米ニューヨーク大学のヤン・ルカン教授はこのほど、AIが世界を征服することも、仕事を永久に破壊することもないと主張した。
ルカン教授は、AIが人類滅亡の脅威をはらんでいるという一部の専門家の意見は、「まったくばかげている」と述べた。
また、コンピューターはいつか人間よりも賢くなるだろうが、それは何年も先のことで、「安全ではないと思ったなら作らなければいい」と語った。
イギリス政府の顧問はBBCに対し、一部の強力なAIは禁止されるべきだとの見解を示している。
欧州連合(EU)の欧州議会は14日、包括的なAI規制案を賛成多数で採択した。ルカン教授の今回の発言は、この採択の前日にあった。
<関連記事>

ルカン教授は2018年、ジェフリー・ヒントン博士とヨシュア・ベンジオ教授と共に、コンピューター・サイエンスに目覚ましい貢献をした人に贈られるチューリング賞を受賞。この3人は「AIの父」と呼ばれるようになった。
ルカン教授は現在、フェイスブックとインスタグラム、ワッツアップを運営する米メタのAI主任となっている。ベントン博士とベンジオ教授は、AIは人類にとってリスクだとしているが、ルカン教授はこれには同意しないと言う。
「AIが世界を征服するのか? そんなことはない、これは人間の性質を機械に投影したものだ」と、ルカン教授は述べ、AI研究を「鍵のかかった状態」に置き続けるのは大きな間違いだとした。
ルカン教授はまた、AIが人間に危害を加えるかもしれないと心配する人たちは、どうすれば安全になるのか想像できないから心配なのだと主張。
「1930年に、どうやってターボジェットを安全にするのかと聞くようなものだ。ターボジェットは1930年には発明されていなかった。人間レベルのAIもまだ発明されていない」とした。
そして、「ターボジェットは最終的に、とても信頼がおける安全なものとなった」とし、AIでも同じことが起きるだろうとルカン教授は話した。
メタは大規模なAI研究プログラムを有しており、人類と同レベルの能力がある知能システムの構築を目指している。また研究に加え、ソーシャルメディア上の有害な投稿を特定することにも、AIが使われている。
ルカン教授は今回、自身の「目的志向AI」の研究について、メディアを招いて話をした。このAIは、「チャットGPT」などにはない、記憶や理由付け、計画、常識のある、安全なシステムを作ることを目的としている。

ルカン教授は、AIがいずれ人間の知能を超えることは「疑いがない」と話した。しかし、その段階にたどり着くための重要な概念を研究者らはなお見つけられていないとし、それを達成するには数十年とは言わないまでも数年はかかるだろうと述べた。
将来、人類レベルかそれを超える機械が現れるかもしれないという人々の懸念は、汎用人工知能(AGI)に関するものだ。AGIは、人間のようにさまざまな課題を解決することができるシステムだ。
ルカン教授は、AGIが存在するようになれば、科学者が「数分以内に世界を征服するようなスーパーインテリジェンス(超知能)システムのスイッチを入れてしまう」のではないかと恐れている人がいると指摘。「まったくばかげた話だ」と語った。
BBCの質問に対しルカン教授は、技術の進展によって、ネズミの脳と同等の力があるAIはできるかもしれないと答えた。しかし、それは世界を征服するものではなく、「どこかのデータセンターで動作するものであり、スイッチでオフにすることもできる」と説明。「安全でないとわかったら、作らなければいい」と付け加えた。
仕事への影響
AIは多くの仕事で人間に取って代わる可能性をもっており、それゆえ企業の中には一部の採用を停止させているところもあると言われている。
これについてルカン教授は、「多くの人が永久に失業することはないだろう」と述べた。しかし、20年後に最も目立つ仕事が何であるかは「全く分からない」ので、仕事そのものは変わるだろうとした。
また、知能を持ったコンピュータは、インターネットや印刷機のように、「人類の新しいルネサンス」を生み出すだろうと語った。
ルカン教授はEUのAI規制法案について、欧州のAIスタートアップ企業と話し合ったところ、「彼らはこの規制を全く気に入っていない。範囲が広すぎる、あるいは制限しすぎかもしれないと思っている」と述べた。一方で、自分はこの法律の専門家ではないと述べた。
ルカン教授は、規制に反対の立場ではないが、システムごとに独自のルールが必要だと考えていると説明。例えば、自動車に搭載されるAIシステムと、医療画像をスキャンするAIシステムでは、異なるルールが適用されるべきだとした。










