イタリア当局、人工知能チャットボット「ChatGPT」を一時的にブロック

ChatGPT with OpenAI logo in background

画像提供, Getty Images

画像説明, 米企業OpenAIは昨年11月、会話型の人工知能チャットボット「ChatGPT」を公開した

イタリア当局は3月31日、米企業が開発した会話型の人工知能チャットボット「ChatGPT」を一時的にブロックした。プライバシーに関する懸念を理由としている。昨年11月に公開された「ChatGPT」を西側の政府が規制するのは、これが初めて。

イタリアの個人データ保護当局は、米スタートアップ企業OpenAIが開発し、マイクロソフトが支援する「ChatGPT」について「直ちに」ブロックし、欧州連合(EU)の「一般データ保護規則」(GDPR)を順守しているか調査すると明らかにした。

GDPRは、EU加盟国及び欧州経済領域(EEA)の一部における個人情報の取り扱いを定めた法令で、個人データの利用、処理、保管などが保護の対象となり、EU在住者の個人データを扱う場合はEU域外でも規制の対象になる。

イタリア当局は、「ChatGPT」利用者の会話内容や決済情報について3月20日に情報漏洩(ろうえい)が発覚したことにも言及。「ChatGPT」の根底にあるアルゴリズムを「訓練」する目的で「個人情報を大量に収集し保管する」ことを正当化する法的根拠がないと指摘した。

さらに、「ChatGPT」利用者の年齢確認システムがないため、「未成年者の成熟度や理解力に見合わない、まったく不適切な回答」を未成年者に示している」と批判した。

イタリア当局はOpenAI社に、今後20日間で指摘に対応するよう指示。それ以降もGPDR違反が続く場合は、罰金2000万ユーロまたは年間売上高の4%の罰金を科す可能性があるとしている。

昨年11月の公開以来、数百万人が「ChatGPT」を利用している。2021年当時のインターネットをデータベースとして、人間同士が使う通常の言語で質問すると回答するほか、文体の模倣もできる。

マイクロソフトはこの開発に数十億ドルを投資し、今年2月には自社の検索エンジン「Bing」に「ChatGPT」を組み込んだ。マイクロソフトは今後、「オフィス」に含まれるワード、エクセル、パワーポイント、アウトルックのアプリにも、「ChatGPT」の技術を組み込む方針を示している。

「ChatGPT」に利用者の年齢確認システムがないことをイタリア当局が問題視しているのと同様の理由から、競合のグーグル社によるAIチャットボット「Bard」は、18歳以上に利用を限定している。

「ChatGPT」に対するイタリア当局の規制について、アイルランドの個人データ保護委員会はBBCに、イタリア当局に規制の理由を紹介していると述べ、「EUのあらゆるデータ保護当局と調整」していくと話した。

人工知能(AI)については、多くの人間の職が奪われる懸念のほか、偽情報や偏見の拡散などの懸念も広まっている。

3月28日には、イーロン・マスク氏やスティーヴン・ウォズニアク氏などテクノロジー業界の有力者が公開書簡に署名した。非営利団体「Future of Life Institute」がまとめた公開書簡は、「人間に匹敵する知能を持つAIシステムは、社会と人類への甚大なリスクになり得る」と指摘。AI開発の無軌道な競争と人間社会への悪影響に警鐘を鳴らし、計画的に制御された開発環境が確立されるまで、OpenAI社が今年3月に公開した最新のGPT-4よりも強力なAIシステムの訓練を少なくとも6カ月は停止するよう呼びかけた。

イギリスの個人情報保護監督機関(ICO)はBBCに、人工知能開発を「支持」する一方、開発当事者がデータ保護法を「順守しない場合は問いただしていく」用意があると述べた。

企業や組織のサイバーセキュリティーを評価・格付けする米「セキュリティー・スコアカード」社のダン・モーガン氏は、イタリア当局の対応について、欧州で事業展開する企業にとってEU規則の順守がいかに重要か示すものだと指摘する。

「企業は、個人情報保護を優先し、EUが定めた厳格なデータ保護規則に従わなくてはならない。規則順守に選択の余地はない」と、モーガン氏は強調した。

欧州消費者同盟(BEUC)も、「ChatGPT」をはじめとするAIチャットボットを調査するようEUや各国当局に呼びかけた。

EUは現在、人工知能に関する世界初の法制整備に取り組んでいるが、EUの人工知能法が施行されるまでには何年もかかるとBEUCは懸念している。法律が整うまでの間、規制が不十分な技術による危険に消費者がさらされることになると、BEUCは指摘する。

BEUCのウルスラ・パクル副事務局長は、人工知能が人間社会にもたらし得る危害に対する備えが「今は不十分」だと懸念する。「ChatGPTなどのチャットボットが、いかに人をだまし操るか、その危険について懸念が高まっている。AIシステムに対する世間の監視を強化する必要があるし、政府当局は監督権限をあらためて適用する必要がある」

「ChatGPT」はすでに、中国、イラン、北朝鮮、ロシアなどで利用がブロックされている。

OpenAIはBBCの取材に回答していない。