インド税当局、インドのBBCオフィスを捜索 モディ首相のドキュメンタリー放送後

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インドの税当局は14日、ニューデリーとムンバイにあるBBCのオフィスを家宅捜索した。所得税に関する捜索だという。これに先立ちBBCは1月に、インドのナレンドラ・モディ首相について批判的なドキュメンタリーをイギリスで放送。モディ政権はこの番組の内容を批判し、国内での上映を禁止したり、オンラインで見られないようにしている。
BBC広報は、「所得税当局が現在、ニューデリーとムンバイのBBCオフィスにおり、私たちは全面的に協力している。この状況をできるだけ速やかに解消したいと期待している」と発表した。
モディ首相が率いる与党・インド人民党(BJP)のガウラヴ・バティア広報担当は、BBCを「世界で最も腐敗した組織」と呼び、今回の税務当局による家宅捜索は合法で、政府とは無関係だと述べた。
「インドはあらゆる組織に機会を与える国だ。毒をまき散らさない限りは」とも、バティア氏は述べた。

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インド最大野党・国民会議派のK・C・ヴェヌゴパル幹事長は、14日のBBC家宅捜索について、「見るからに必死で、モディ政権がいかに批判を恐れているかを表している」、「このような威圧の手口を、私たちは最大限に厳しく批判する。こうした非民主的で独裁的な態度がこれ以上続くのは認められない」とツイッターに書いた。
超党派の報道関係者団体「インド編集者ギルド」は、BBCに対する家宅捜索について「深く懸念する」と声明を出し、「政府の方針や国の主流派に批判的な報道機関を威圧し、嫌がらせをするため、政府機関を使うという以前からの流れの一環」だと批判した。
アムネスティ・インターナショナル・インドの理事会は、「BBCが与党BJPを批判的に報道したことを理由に、BBCに嫌がらせをして威圧しようとしている」と政府当局を批判。「政府批判を黙らせるため、所得税局の広範すぎる権力を(政府が)繰り返し、武器として使っている」と指摘した。

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BBCは今年1月17日と24日の2回にわたり、ドキュメンタリー「India: The Modi Question(インド:モディ問題)」をイギリスで放送した。インドでは放送されなかったが、野党指導者や政府に批判的な人々は、ソーシャルメディアでリンクを共有した。
ドキュメンタリーは、2002年に西部グジャラート州で発生した宗教暴動とモディ首相の関係を取り上げたもの。イスラム教徒を中心に計1000人以上が死亡した暴動が起きた当時、モディ氏がグジャラートの州首相だった。
インド政府はこのドキュメンタリーについて、「植民地時代の発想」にもとづくもので、「信用性のない特定の見方を押し付けようとするプロパガンダ作品」だと批判。緊急事態法を発動し、ユーチューブやツイッターで見られないようにしている。
1月25日に首都ニューデリーのジャミア・ミリア・イスラミア大学の学生たちが上映会を開こうとした際には、数十人の警官や機動隊が出動。上映会が開かれる前に学生十数人が拘束された。

BBCは1月に声明で、今回のドキュメンタリーは「綿密な取材」に基づいていると説明。「幅広い声を取り入れ、目撃者や専門家に取材し、BJP関係者の反応を含む多様な意見を取り上げている」と述べた。また、インド政府にはコメントする機会を提供したが、政府はこれを拒んだとした。
所得税局は他の報道機関や慈善団体も捜索
政府に批判的とみなされる組織を標的にする手法は、インドでは珍しくない。
所得税当局は昨年9月にも、貧困対策に取り組むイギリス拠点の国際慈善団体オックスファムなど、複数の非政府組織を家宅捜索した。
2020年には国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが、インドで活動を停止。インド当局による銀行口座凍結などの「報復」が原因だとして、インド政府が「人権団体の魔女狩り」をしていると非難した。
「インド編集者ギルド」によると、2021年には税当局が報道機関4社を家宅捜索。いずれも、政府に批判的な報道をした後のことだという。
非営利団体「国境なき記者団」によると、モディ政権発足以来、インドでは報道の自由が低下している。同団体の「世界報道自由度ランキング」では、インドは2014年からランクを10位下げ、現在は180カ国中150位。
モディ政権が問題視するBBCドキュメンタリーとは

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ドキュメンタリー「India: The Modi Question(インド:モディ問題)」の第1話は、モディ氏がインド人民党で出世し、西部グジャラート州の州首相に就任するまでの、政治家としての初期を追っている。
その中でBBCは、英外務省から入手した未発表の報告書に注目した。2002年にグジャラート州で発生した宗教暴動における、モディ氏の行動を疑問視する内容だった。
この暴動は、ヒンドゥー教徒の巡礼者たちが乗っていた列車が放火され、十数人が死亡したのを受けて発生。イスラム教徒を中心に計1000人以上が死亡した。
英外務省の報告書は、そうした暴力を可能にした「免罪の風潮」に、モディ氏は「直接の責任を負う」としている。
報告書は、当時のジャック・ストロー英外相が作成を指示したもので、「暴力の規模は報告されていたよりもはるかに大きく」、「暴動の目的はヒンドゥー教徒の住む地域にイスラム教徒がいないようにすることだった」としている。
2005年には米政府が、「信仰の自由に対する激しい侵害」に責任があるとされる外国政府関係者の入国を禁止する法律をもとに、モディ氏へのビザ発行を拒否している。
モディ氏は長年、暴動について自分に何らかの責任があるとの非難をはねつけ、謝罪もしていない。最高裁判所は2013年、同氏を起訴するには証拠が不十分だと判断した。

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イギリス議会では1月18日の首相質問で、最大野党・労働党のイムラン・フセイン下院議員がリシ・スーナク首相に対して、ドキュメンタリーについて質問。スーナク首相は「どこであっても迫害は容認しない」とした上で、モディ首相の「描写には同意しない」と述べていた。










