米メンフィス警察、「さそり」特殊部隊を解散 黒人男性の死亡で訴追の警官たち所属

動画説明, 米警官に殴打され黒人男性死亡、暴力的な逮捕とらえた映像を当局が公開

米テネシー州メンフィスの警察は28日、交通違反の取り締まり中に逮捕された黒人男性が3日後に死亡した事件に関連し、殺人容疑などで訴追された警官たちが所属する特殊部隊を解散したと発表した。

配送大手フェデックスで働く黒人男性のタイリー・ニコルズさん(29)は、今月7日に危険運転をした疑いで逮捕され、10日に病院で死亡した。危険運転の容疑については、そうした行為があったという裏付けはまだ示されていない。

ニコルズさんを取り押さえた警官5人は、捜査の結果、「ニコルズ氏への身体的虐待に直接の責任がある」と判断され、先週解雇された。元警官のタダリウス・ビーン、ディミトリアス・ヘイリー、デズモンド・ミルズ・ジュニア、エミット・マーティン3世、ジャスティン・スミスの各被告は26日、第2級殺人や加重暴行などの罪で訴追された。5人も全員黒人。

この5人が所属していたのは、「スコーピオン(さそり)」部隊。この名前は「Street Crimes Operation to Restore Peace in Our Neighborhoods(この街に平和を取り戻すための街頭犯罪対策作戦)」を頭文字をとったもの。

2021年10月に、自動車盗やギャング関連の犯行など、市民への影響が大きい事件に専任するため作られた。50人が所属し、市内の特定地域で犯罪発生率を引き下げることを目的としていた。部隊発足以来、逮捕件数は566件。現金10万ドル(約1300万円)超、車両270台、武器253丁を押収したという。

メンフィス警察は声明で、この部隊を廃止することが「全員のためになる」と発表。「数人による悪質な行動が『スコーピオン』の名前に不名誉な影を落としてしまっている中、我々メンフィス警察は、影響を受けた全員の回復のために前向きに行動する必要がある」と述べた。

メンフィス警察はこの前日、ニコルズさん逮捕時の映像を公開していた。動画の公表を受けて、メンフィスをはじめアメリカ各地の都市で抗議行動が相次いだ。

Tyre Nichols

画像提供, FACEBOOK/DEANDRE NICHOLS

画像説明, タイリー・ニコルズさんは逮捕された3日後に死亡した
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ニコルズさんの遺族は弁護士を通じて、特殊部隊の解散を歓迎。「タイリー・ニコルズの悲劇的な死に相応かつ適切な対応で、メンフィスの全市民にとってまともで公正な判断」だと述べた。

訴追された元警官5人のうち、4人は27日に保釈保証金を支払い、保釈された。5人のうち2人の元警官の弁護士は、2人は無罪を主張する方針だと明らかにしている。

ニコルズさんの死後、市内に住むコーネル・マキニーさんが地元テレビ局に対して、自分も今月3日にこの部隊の警官の取り調べを受けたと話した。それによると、覆面車両に乗っていた警官たちが麻薬所持の疑いで自分を調べ、武器を頭に向けて「頭を吹き飛ばす」と脅したという。

マキニーさんはメンフィス警察に抗議したものの、まだ何の回答もないという。

ニコルズさんを逮捕した警官の1人は8年前、別の男性を収監中に殴打したとして訴えられていた。

「メンフィスは立ち上がっている」

「タイリーを殺した部隊は廃止された」。メンフィス警察本部前の広場で開かれた抗議集会で、主催者がメガホンでこう叫ぶと、雨の中で集まった100人足らずの人たちが歓声を挙げた。

メンフィスとアメリカ各地で黒人への暴力を常習化させている警察制度の改革を求める集会で、主催者の1人カシオ・モンテスさんは、「メンフィスは抗議のため立ち上がっている」と述べ、特殊部隊解散について「自分たちのやっていることは正しいというわけだ」と力説した。

Protest organizer Casio Montez, in blue, leads a march in Memphis
画像説明, ニコルズさんの死亡に抗議する人たち。右の青い上着姿がモンテスさん(28日、メンフィス)
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モンテスさんは、自分や他の地域活動家は今後も引き続き、警察の組織犯罪捜査課の改革を含め「地域の要求に応じるまで」メンフィス警察や市当局の幹部に圧力をかけ続けると話した。

セレリン・デイヴィス警察本部長は27日、BBCの取材に対して、「スコーピオン部隊」は市内の銃犯罪に従来より機動的かつ積極的に対応するために作られたものだが、ニコルズさんを激しく殴打した警官たちは「常軌を逸した行動を選んだ」のだと認めた。

「すべての部署を個別に精査している」と本部長は述べ、「これは必要な対応だ。コミュニティーに対する透明性を完全に実現したい」と話した。 

「制度が壊れている」

メンフィス警察は前日の27日、ニコルズさん逮捕時の映像を公開した。動画の公表を受けて、メンフィスでは27日夜に平和的な抗議が行われ、デモ隊が市内の幹線道路を封鎖した。その他、首都ワシントン、デトロイト、アトランタ、ニューヨークなどでも抗議集会やデモが行われ、多くの人が「警察による恐怖」を終らせるよう要求した。

動画説明, アメリカの警察の歴史的問題 脱走奴隷の追跡から始まり
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メンフィスではアリー・ワトキンスさんが「すべての警官は白人至上主義を擁護している」とプラカードを掲げていた。現地で取材するBBCのチェルシー・ベイリー記者に対し、アメリカでの警察活動は奴隷の逃亡を防ぎ、逃亡奴隷を捕らえることから始まっているので、これは歴史的に正確な主張だと説明した。

「これはアメリカの腐敗の問題ではなくて、そもそも制度そのものが黒人に対して作られたという事実が問題だ」とワトキンスさんは指摘し、制度そのものが壊れているなら、細かい組織改革では事足らず、事態解決には一からやり直す必要があると主張した。

動画説明, 人種差別と警察暴力 アメリカの原罪が頭をもたげる