警官が罵倒しながら3分間殴打、米黒人男性暴行死で当局が映像公開

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米テネシー州メンフィスで今月上旬、交通違反の取り締まり中に逮捕された黒人男性が3日後に死亡した事件で、捜査当局は27日、当時の映像を公開した。動画には男性が複数の警官に殴られる様子が映っており、動画の公表を受けて、メンフィスをはじめアメリカ各地の都市で抗議行動が相次いだ。
配送大手フェデックスで働く黒人男性のタイリー・ニコルズさん(29)は、今月7日に危険運転をした疑いで逮捕され、10日に病院で死亡した。
ニコルズさんを取り押さえた警官5人は、捜査の結果、「ニコルズ氏への身体的虐待に直接の責任がある」と判断され、先週解雇された。
元警官のタダリウス・ビーン、ディミトリアス・ヘイリー、デズモンド・ミルズ・ジュニア、エミット・マーティン3世、ジャスティン・スミスの各被告は26日、第2級殺人や加重暴行などの罪で訴追された。元警官も全員黒人。
当時の様子を捉えた動画は27日午後7時、4つのパートに分けられて公開された。
動画には、警官が罵倒しながら約3分間にわたりニコルズさんを殴打する様子が映っている。
ニコルズさんの遺族や弁護団、複数関係者など、これまではごくわずかな人たちだけがこの動画を目にしていた。
動画を個別に確認していた人たちからは「気分が悪い」、「ぞっとする」などという声が上がっていた。
アントニオ・ロマヌッチ弁護士はその内容について、「彼は人間ピニャータ(棒でたたいて割る紙製のくす玉のようなもの)のようだった」、「この若者は3分間、ちゅうちょなく、ノンストップで殴られ続けていた」と述べていた。
動画を確認したテネシー州捜査局のデイヴィッド・ラウシュ局長は、「気分が悪い」内容だったと述べた。
メンフィス警察で黒人女性初の本部長を務めるセレリン・デイヴィス氏は、動画の中でニコルズさんが「母親を呼んでいる」声を聞いた、「思いやりを軽視した行為で(中略)心に訴えるものだった」と米CNNに語った。
デイヴィス氏は元警官5人の行為は「凶悪で見境のない、非人道的なもの」だと述べた。

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26日の記者会見で、元警官2人の弁護士たちは、依頼人は法廷で争うつもりだと述べた。
マーティン被告の弁護人は、「あの夜、タイリー・ニコルズ氏を死に追いやろうとした人は1人もいなかった」と述べた。ただ、当該動画は見ていないとした。
「何もしてない」、「ママ!」と叫ぶ逮捕時の様子

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メンフィス警察は27日、交通違反を取り締まる様子とその後の暴力的な出来事を捉えた生々しい4つの動画を公開した。動画の長さは合わせて1時間以上だった。
1つ目の動画には、警官がニコルズさんを車から引きずり出し、地面に伏せるよう怒鳴る様子が映っている。
「僕は何もしていない!」と訴えるニコルズさんを、警官たちは無理やり地面に伏せさせる。
警官の1人が「(罵倒語、「ピー」音で消されている)地面に伏せろ!」と叫び、別の警官は「テーザー銃で撃て!」と言っている。
「手を背中に回せ。さもなければお前の(罵倒語)を折るぞ」と、警官の1人が叫んでいる。
ニコルズさんが「やりすぎだ」、「自分は家に帰ろうとしているだけだ」と言っているのがわかる。
この数秒後に警官1人がテーザー銃を発射。ニコルズさんは飛び上がってなんとか逃げ出した。

2つ目の動画は、住宅地の向かいの電柱に設置された防犯カメラが撮影したものとみられる。これには警官2人がニコルズさんを地面に押さえつけ、ほかの警官たちが交互に蹴ったり殴ったり、警棒のようなもので叩く様子が映っている。
警官はニコルズさんを引きずり、パトカーに寄りかかるように立たせている。
3つ目と4つ目の動画は、警官のボディカメラが撮影したもので、警官に押さえつけられたニコルズさんが殴打され、ペッパースプレーを噴射されているのがわかる。ニコルズさんが「ママ!」と繰り返し叫ぶ声も記録されている。
ボディカメラを装着していた警官は白人で、起訴されていない。同僚警官たちに向かって、ニコルズさんを見つけたら「踏みつけ」ると良いなどと発言するのが聞こえる。
「家にたどり着くべきだった」
ニコルズさんの母親は、自宅から70メートルほどの場所でメンフィスの警官が息子を「殺した」としている。
遺族の弁護士は、今回の事件を1991年にロサンゼルスで警官に殴打されて死亡した黒人男性ロドニー・キング氏の事件と比較している。
ジョー・バイデン米大統領は声明で、「多くの人と同様に、私もタイリー・ニコルズ氏の死を招いた殴打事件の恐ろしい映像を見て憤慨し、深く心を痛めている」と述べた。また、逮捕動画の公表について、「これに多くの人が激怒するのは当然だ。正義を求める人は暴力や破壊を手段としてはならない。暴力は決して容認されない。違法で破壊的だ。私はニコルズ氏の家族とともに、平和的な抗議を呼びかける」と強調した。
カマラ・ハリス副大統領は声明で、「タイリー・ニコルズは家族のもとへ、家にたどりつくべきだった。しかし、またしてもアメリカは、市民を守り市民に仕えると誓った者たちの手でその命を無残にも途絶えさせられた人、息子であり父であった人の死を悲しんでいる」として、「アメリカでいつまでも続く警察の不当行動と過剰暴力の問題は、いますぐ終わらせなくてはならない」と述べた。
刑務所記録によると、勾留されていた元警官5人のうち4人は保釈金を支払い、27日朝までに保釈された。
警察は当初、ニコルズさんが危険運転の疑いで車を止められたと説明していたが、これまでのところ危険運転は立証されていない。
逮捕時の動画公表を受けて27日夜、メンフィスをはじめ、首都ワシントン、デトロイト、アトランタ、ニューヨークなど、アメリカ各地で抗議集会やデモが行われた。










