スコットランド、性別変更手続きを簡易化 イギリス政府は懸念

英スコットランド議会は22日、法律上の性別変更の手続きを簡易化する法案を86対39の賛成多数で可決した。
可決が発表されると、議会にはトランスジェンダーの権利活動家の歓声が響いた。一方、法案に反対する女性の権利活動家などは「恥を知れ!」と叫んだ。
議論を呼んでいるこの法案では、変更に必要なジェンダー認定証明書(GRC)に申請できる年齢を16歳に引き下げた。また申請の際に、性別違和(生物学的な性別と性自認に違和感がある状態)の診断書が不要となり、自己申告での変更が可能となった。
性別変更手続きの簡易化を認めたのは、イギリスではスコットランドが初めて。
イギリス政府は法案に懸念を示しており、各政府の決定を国王が個人的に承認する「国王裁可」を食い止めることで、スコットランドでの正式な法制化を阻止する可能性があるとしている。しかし、スコットランド自治政府はこれに強く反発している。
欧州ではアイルランドやデンマーク、ノルウェー、ポルトガル、スイスなど9カ国が、自己申告での性別変更手続きを可能にしている。22日にはスペイン下院が、身分証明書と申請のみで法律上の性別を変更できる法案を可決し、上院の採決を待つばかりになった。
<関連記事>

虚偽申告には禁錮刑も
スコットランドでは2005年から、出生証明書上の性別を男性から女性に、あるいは女性から男性に変更することが認められている。
変更に必要なGRCの申請では、18歳以上であることや、新たに獲得した性で2年以上暮らしていることなどが条件となる。
しかしスコットランド政府は、既存のプロセスは押しつけがましく苦痛を伴うため、GRCの申請をためらう人がいると考えている。
新法案では、対象年齢の引き下げに加え、新たに獲得した性での生活期間をわずか3カ月に、16~17歳の場合は6カ月に短縮した。
一方で、申請を取りやめられる「熟考期間」を3カ月設けるほか、GRCのために虚偽の申告をした者には最長2年間の禁錮刑を科すという条項も含められている。
また、同じ手続きを再度行って性別を戻すことも可能だ。
賛成と反対と

画像提供, PA Media
法案の支持者は、トランスジェンダーの人々の生活を楽にするための動きは長年遅れていると指摘。この法案によってトランスジェンダーの人々が「誰もが受けるべき尊厳と認識を持って」生きられると述べている。
活動団体「スコティッシュ・トランス」のヴィク・ヴァレンタイン代表は、トランスジェンダーの人々が就職や結婚といった人生の重要な場面で、「自分らしさを反映した」出生証明書を提示することができるようになると話した。
反対派の人々は、女性専用のサービスやスペース、法的保護に対する潜在的な影響を懸念している。反対派には、スコットランド在住で「ハリーポッター」シリーズの著者であるJ・K・ローリング氏も含まれる。
反対派は、攻撃的な男性が女性刑務所などの女性専用施設に入るために性別を変えようとする場合があると指摘。こうした加害者から女性や少女を守るための保護措置が十分でないと主張している。
議会での投票に先立ち、ショーナ・ロビソン社会正義担当相は、「トランスジェンダーの人々の権利と女性の権利は競合しない。差別の被害者を敵と思わず、味方だと思って行動することで、みんなのために前進できる」と語った。
スコットランドのニコラ・スタージョン第一首相(スコットランド国民党)も、「この国で平等を縮小するのではなく、広げていくことについて、絶対に謝罪しない」と話した。
一方、野党・スコットランド保守党のレイチェル・ハミルトン平等担当報道官は、保守党はトランスジェンダーの人々の権利を支持するが、「女性や少女の安全性や、努力の末に獲得した権利を犠牲にするべきではない」と述べた。

画像提供, PA Media
イギリス政府の懸念
イギリス政府はスコットランドのこの動きに対し、法的対抗手段を取ることを否定していない。アリスター・ジャック・スコットランド担当相は、「この法案のある側面、特に女性と子どもの安全問題について、多くの人々が抱いている懸念を共有している」と述べた。
また、ケミ・ベイドノック女性・平等担当相は、この法案の影響に疑問があると指摘。スコットランド政府は法案内で十分に影響について述べていないとした。
その上で、「イギリス政府は現在スコットランド議会の議員に再考を促し、こうした問題に対処できるようにするための規定を検討している」とツイートした。
政府は、GRCを持つ人々がスコットランドからイギリスの他の地域に移動した場合、異なる制度が適用されるため、パスポートや年金、一部の給付金などに影響が出る可能性を懸念しているとみられる。
イギリスの法律では、スコットランドの法律がイギリス全体の平等法に抵触した場合、政府はその取り消しを申請することができる。この権限は、これまで一度も使われたことがない。
スコットランド政府の報道官はこれに対し、「イギリス政府によるスコットランド議会の民主的意思を損なうあらゆる試みに、強力に対抗する」と述べた。










