アルジャジーラ記者射殺、イスラエル兵が「誤って撃った可能性高い」=イスラエル軍

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イスラエル軍は5日、パレスチナ自治区で5月に女性記者が射殺された事件について、イスラエル兵が誤って撃った可能性が高いと結論付けた。
カタールを拠点とする衛星放送局アルジャジーラのベテラン特派員で、米国籍を持つパレスチナ人のシェリーン・アブ・アクレ氏(51)は5月、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のジェニンでイスラエル治安部隊による作戦を取材中、頭を撃たれて死亡した。
イスラエル国防軍(IDF)の高官は5日、「IDFの兵士が誤って撃った」可能性が高いとしつつ、「兵士は当然のことながら、彼女のことをジャーナリストだと認識していなかった」と述べた。
また、捜査当局が当該兵士に話を聞いたことを明らかにし、「彼は自分が何をしたのかを我々に話した。もし彼がそうした(撃った)のなら、それは誤ってのことだった」とした。
「この兵士たちが置かれていた戦闘の状況について、強調しておきたい。兵士たちは防護車両から出られず、あらゆる方向から多角的な攻撃を受けていた」
IDFの法務責任者は、関与した兵士への犯罪捜査は行わないと決定し、この事件の調査を事実上打ち切った。
アブ・アクレ氏の遺族は、IDFが真実をあいまいにし、殺害の責任を回避しようとしているのは「意外ではない」と話した。
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軍の説明に激しい非難
アブ・アクレ氏は5月11日、イスラエル治安部隊による作戦の取材のためジェニン難民キャンプに到着した。兵士とパレスチナ武装勢力との間では銃撃戦が起きた。アブ・アクレ氏はヘルメットをかぶり、「プレス」と書かれた青色の防弾チョッキを着ていた。
アブ・アクレ氏が殺害された経緯に関する軍の説明に対し、激しい非難が上がっている。
複数の目撃者やパレスチナ当局は、アブ・アクレ氏はイスラエル部隊に撃たれたと報告。後に国連や複数の報道機関が証拠を調べたところ、その可能性があることが裏付けされた。アメリカの調査でも、イスラエル兵が致命傷を負わせる銃弾を発射した「可能性が高い」ことが分かった。

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IDFは複数の内部調査を完了したとしている。
しかし、アブ・アクレ氏が撃たれた瞬間を捉えた映像証拠では、ジャーナリストや傍観者が集まっていた場所で武装勢力の銃撃があったとする主張は裏付けられていない。
イスラエル部隊は現場から200メートル離れた場所にいたとみられる。映像では、ジャーナリストたちが歩いていたエリアに向かって数分間、繰り返し発砲があったことが確認できる。
BBCが映像について尋ねたところ、IDFの高官はイスラエル兵は当時銃撃にさらされており、乗っていたジープ車内からは外の様子が見えず、ジャーナリストが集まっていることにも気づかなかったとした。
イスラエルのナフタリ・ベネット首相(当時)を含む政府関係者は当初、アブ・アクレ氏はパレスチナ人の銃撃犯に撃たれたのだろうと主張した。
透明性のある調査を求める圧力が高まる中、IDFは後に、アブ・アクレ氏が死に至った原因と考えられる「可能性」は2つあり、1つはイスラエル兵による銃撃だがもう1つはパレスチナの武装勢力による銃撃だと述べた。

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犯罪捜査を行わず
犯罪捜査を行わないというIDFの発表は、パレスチナ人の怒りを買い、アブ・アクレ氏の遺族にさらなる打撃を与えることになる見通し。
「イスラエルの戦争犯罪者が自分たちの犯罪を捜査できないことは、誰の目にも明らかだ。だが、私たちは深く傷つき、いらだち、失望したままだ」と遺族は述べた。
以前からIDFの内部調査の仕組みを批判しているイスラエルとパレスチナの人権団体は、パレスチナ人に危害を加えた事案について、イスラエル兵はほぼ処罰を免れられると指摘する。
イスラエルの路上でパレスチナ人とアラブ系イスラエル人による襲撃事件が相次ぎ、18人が死亡したことを受け、IDFはヨルダン川西岸での捜索や逮捕、懲罰的な家宅捜索を強化していた。加害者側にはジェニン出身者もいた。5月下旬にはジェニンでイスラエル人警官が射殺された。
アブ・アクレ氏の遺族は先に、犯罪捜査を含む完全な説明責任を求めていた。同氏の兄トニー・アブ・アクレ氏は7月にBBCに対し、「超法規的殺害行為によって暗殺された。誰かが責任を負う必要があると我々は考えている」と語った。
IDFの内部調査をめぐり、その内容を疑問視する声がただちに相次いだ。
イスラエル当局はアブ・アクレ氏の死後数時間後には、特定のパレスチナ人銃撃犯が彼女を撃った可能性があるとの憶測を公に広めた。IDFはパレスチナ当局が調査を妨害していると非難した。
パレスチナ自治政府は検視と銃弾の調査を行い、「銃弾を発砲したのは、殺害の意図を持った(イスラエル)占領軍だけだった」とした。
アメリカの調査では
アブ・アクレ氏の事件をめぐっては、米政府の介入を求める声が高まっていた。
5月には、アメリカの捜査機関による調べを求める連邦捜査局(FBI)と国務省宛ての書簡に、数十人の米連邦議会議員が署名した。国務省はパレスチナ側に、銃撃に使われたとする銃弾を公開するよう圧力をかけた。
米政府は7月、「独立した検査官」が行った法医学的分析で、銃弾の損傷があまりにもひどく、確定的結論に達することができなかったと発表した。
また、アメリカの安全保障調整官がイスラエルとパレスチナの調査を評価した結果、「イスラエル軍の陣地からの銃撃がシェリーン・アブ・アクレ氏の死因である可能性が高い」との結論に至ったとした。
アメリカはアブ・アクレ氏の死を「IDF主導の軍事作戦中の悲劇的状況」の結果だとし、この銃撃が故意によるものだったと「信じるに足る理由」を見いだせないと付け加えた。
アブ・アクレ氏の兄トニー氏はBBCに対し、ジョー・バイデン米大統領が7月にこの地域を訪れた際、自分たち遺族は米政権から「見捨てられた」のだと語った。トニー氏は事件捜査のため、FBI捜査官を派遣するよう求めていた。
遺族はその後、米ワシントンでアントニー・ブリンケン米国務長官と面会したが、正義を求める自分たちの声に対して米政権はまだ「意味のある答え」を出していないと述べた。










