米FRB、0.75%の利上げを決定 約30年ぶりの上げ幅

Jerome Powell

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画像説明, 米連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長。物価上昇のプレッシャーを受けている

アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は15日、約30年ぶりとなる大幅な利上げを発表した。高騰する消費者物価の抑制に一段と力を入れる。

FRBは、政策金利を0.75%ポイント引き上げ、1.50~1.75%の範囲にすると発表した。

利上げは3月以降で3回目。アメリカでは先月、インフレ率が予想外に上昇していた。

物価は今後もさらに上昇する予想で、経済の先行きは不確実さを増している。

政策金利は3.4%の見通し

FRBが会合後に発表した予想では、FRBが一般の銀行に貸し付ける際の政策金利は年末までに3.4%に達する可能性がある。連動して、住宅ローン、クレジットカード、その他のローンの借入コストが上昇するとみられており、影響は家計にも及ぶ。

借入コストの上昇は、経済活動を鈍らせ、需要を冷やす。理論的には、物価上昇圧力を和らげることにつながる。

各国の中央銀行も同様の措置を取っている。世界的に長年にわたり企業や家庭が低い借入コストを享受してきたが、その世界経済の様相が大きく変わることになる。

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戦略コンサルティング企業EYパルテノンのグレゴリー・デイコウ主任エコノミストは、「先進国の大半と新興国の一部で、中央銀行が同調して経済政策を引き締めている」と述べた。

「過去数十年間みられなかった世界的な環境だ。世界中のビジネスと消費者に影響を与える」

インフレ率の上昇が引き金

イギリスでは、中央銀行のイングランド銀行が16日、12月以降5回目の利上げを発表し、基準金利を2009年以来初めて1%超に引き上げるとみられている。同国の消費者物価は4月に9%上昇している。

ブラジル、カナダ、オーストラリアはすでに利上げを実施した。欧州中央銀行も、この夏に利上げを予定している。

A worker installs shingles on a house on the National Mall in preparation for the Innovative Housing Showcase funded by U.S. Department of Housing and Urban Development and the National Association of Home Builders, on Sunday, June 5, 2022

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画像説明, 利上げの影響は住宅業界などに及んでいる

アメリカでは、新型コロナウイルスのパンデミックが発生した2020年に、景気を下支えするため金利が引き下げられた。しかし今年になってFRBはすでに、3月に0.25%ポイント、5月にさらに0.5%ポイントの、2回の利上げを実施している。

FRBのジェローム・パウエル議長は当時、より急激な引き上げは検討していないと述べていた。

しかし今月10日になり、インフレ率が5月に8.6%上昇したとの統計が発表された。それが、さらに積極的な動きにつながったと、パウエル氏は会合後の記者会見で説明した。

パウエル氏は、「インフレ率を下げることが不可欠だ」と述べ、0.75%ポイントの上昇は「非常に大きい」と認めた。

そして、「インフレ率は明らかにここ1年間、驚くほど上昇しており、今後も予想外の事態が起きる可能性がある」、「そのため機敏な対応が必要だ」と付け加えた。

a woman in a grocery store

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画像説明, 食品価格の上昇がインフレ率上昇の要因の1つになっている

FRBが今回ほど大幅な利上げを発表したのは1994年以来。

政策決定者の行動が遅れ、それを補うため今になって積極的に動いているため、景気後退誘発の可能性が高まっていると、前出のデイコウ氏は指摘する。

「私はますます心配している」、「年末ごろには成長が停滞し、景気後退にかなり近い状況になり、失業率は減少から上昇に転じていても、意外ではない」と同氏は話した。

声明文から異例の削除

FRBのパウエル氏は、アメリカは金利上昇に対応する態勢が整っているとし、依然として雇用が堅調に伸びていると指摘した。

しかしFRBの予測では、今年の経済成長率は1.7%程度にとどまる。これは、3月に発表した予測よりも1%ポイント低い。

失業率は、現在の3.6%から3.7%に上昇し、2024年には4.1%に達すると予想されている。

FRBが会合後の声明文を変更することはほとんどないが、今回は、FRBが利上げをしても労働市場は堅調を維持するだろうという一文を削除した。

この削除についてパウエル氏は、ウクライナでの戦争など、インフレを引き起こす多くの要因は、FRBにとって制御不能なことを反映したものだと説明した。

米国内外への影響

今回の金利引き上げにより、FRBが銀行に課す借入金利は2019年の水準に戻る。長期的にみれば、比較的低い状況が続く。

それでも、今回の引き上げの影響はすでに出ている。

A worker fills up a car with gas outside the Holland Tunnel at the start of the Memorial Day weekend, under rising gas prices and record inflation, in Newport, New Jersey, U.S., May 27, 2022

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画像説明, アメリカではガソリン価格の上昇が続いている

金利の上昇はドル需要を押し上げ、ドルは年初来10%上昇した。多額のドル建て債務を抱える新興国を筆頭に、他国は圧力を受けている。

アメリカでは金融市場が低迷している。米大企業数百社が対象のS&P500種は、年初から5分の1ほど値を下げた。多国籍企業は、インフレとドル高によって利益が圧迫されていると警告している。

住宅販売も急激に鈍化している。住宅ローン金利がFRB金利の上昇に追随しているためだ。

小売売上高も5月は減少したことが、15日発表のデータで明らかになった。ガソリン代の上昇で支出が増えた消費者が、自動車などの高額商品の購入を遅らせていることが影響している。