ゼレンスキー氏、ブチャ訪れ怒りあらわに 和平協議は継続する考え

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4日、ロシア軍が離れた後に多数の民間人の遺体が見つかった、首都キーウ(ロシア語でキエフ)近郊のブチャを訪れた。大統領はロシアに対して強い怒りをあらわにした一方、ロシアとの和平協議は継続する考えを表明した。
ゼレンスキー氏は防弾ベストを着け、ウクライナ兵らに囲まれてブチャを視察した。
現地でロシア軍について、「人を動物以下として扱った」と非難。「ここで見られるのは、まさに集団虐殺だ」と述べた。
なおもロシアと和平協議を続けることが可能かとBBC記者が質問すると、「可能だ。ウクライナには和平が必要だからだ。私たちは21世紀のヨーロッパにいる。外交および軍事による努力を続ける」と答えた。

ゼレンスキー氏は4日夜のビデオ演説でも、ロシア軍による戦争犯罪の疑いについて捜査する考えを表明。残虐行為に関わった人物の特定に全力を尽くすとし、こう述べた。
「私たちはすでに、この犯罪に関与したロシア軍の全員をできるだけ早期に特定するため、できる限りのことをしている」
「ウクライナと欧州連合、とりわけ国際刑事裁判所などの国際機関の共同作業になるだろう」
「占領者によるすべての犯罪が記録されている。有罪のロシア軍による全犯罪について裁くための、手続き上必要な根拠は提供される」
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大統領はさらに、ロシアが戦争犯罪の証拠を隠蔽(いんぺい)しようとしていると主張。ブチャでは民間人300人以上が殺害・拷問されたと述べた。
BBCはこの主張を独自に確認できていない。
ゼレンスキー氏はさらに、5日に国連安全保障理事会の緊急会合で演説することを明らかにした。

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ブチャの惨状
ブチャでは、男性住民が人道回廊を通って避難するのをロシア軍兵士らが認めず、住民に向かって発砲したとの目撃証言がある。
通りでは少なくとも20人の遺体が見つかっており、その多くは体の広い範囲で傷が見られる。処刑のようにこめかみを撃ち抜かれた遺体や、戦車にひかれたとみられる遺体もあった。
衝撃的な動画や写真が明らかになり、世界中で激しい怒りの声と、ロシアに対する制裁の強化を求める意見が出ている。
BBCのヨギタ・リマエ記者は、ブチャの民家の地下室で、後ろ手に縛られた男性5人の遺体を確認した。射殺されたとみられる。
一方でロシア政府は、証拠を示すことなく、残虐行為の画像はウクライナがでっち上げたと主張している。
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ウクライナ政府は、キーウと周辺で410人の遺体を確認したとしており、戦争犯罪の疑いで捜査を開始した。集団で埋葬された遺体や、両手を縛られて至近距離から射殺されたとみられる遺体も見つかっている。
米宇宙企業マクサーの衛星写真には、ブチャの教会近くに全長14メートルの集団埋葬地が写っている。

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村長家族の遺体を確認
キーウ近郊モツジン村では、BBCの取材チームが浅く掘られた埋葬地で4人の遺体を確認した。ウクライナ当局は、さらに多くの遺体がある可能性を示唆した。
遺体のうち3人は、オルハ・スヘンコ村長と、その夫と息子のものだと確認されている。もう1人の身元は不明。4人がいつ殺害されたのかも分かっていない。
キーウのベッドタウンだったイルピンでも、避難しようとした住民らが銃撃された証拠が見つかっている。同市では3月6日、破壊された橋を渡ろうとしていた女性と、10代の息子、8歳前後の娘、その家族の友人の計4人の民間人が砲撃によって死亡した。

ウクライナ危機をめぐってはそのほか、次の動きがみられた。
- 赤十字国際委員会は、ロシア軍が包囲している南東部の要衝マリウポリで住民避難を支援しようとしたメンバーらが、同市付近の町で警察に拘束されたと発表した
- ドイツは、ロシアからの天然ガス供給を止める可能性は、現時点ではないとした。欧州連合(EU)は、ロシア産ガスの受け取りをやめるようドイツに圧力をかけている
- イギリスは、残虐行為の証拠が明らかになったことを受け、ロシアに対する国際的な制裁強化を働きかけるとみられている

「ゲームチェンジャー」
ウクライナのドミトロ・クレバ外相はBBCのインタビューで、「ブチャの大虐殺はゲームチェンジャーだ」と述べ、情勢を一変させるとの考えを示した。
クレバ氏は同時に、「最悪の事態はまだこれから起こる」との見通しを表明。西側諸国に対し、さらなる武器の供与と、ロシアへの制裁の強化を求めた。
ロシアのタス通信によると、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、ブチャの残虐行為とされるものは、ロシア軍が撤退して数日後に「でっち上げられた」ものだと主張した。
ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官は、同国が残虐行為を実行したとする「すべての訴えを全面的に否定した」と記者団に語った。
一方、アメリカのジョー・バイデン大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を戦争犯罪人とする主張を繰り返した。また、米政府として戦争犯罪法廷を開くよう求める考えを示した。
バイデン氏は、「この男は残忍だ。ブチャで起きた事はとんでもないことで、皆が見ている」と述べた。













