ブチャなどキーウ近郊で殺人の証拠相次ぐ、410人の遺体発見と

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ウクライナの首都キーウ(ロシア語でキエフ)周辺地域からロシア軍が撤退したことで、ロシア軍による無差別殺人の痕跡が次々と発見されている。ウクライナ検察庁は3日、ブチャなど近郊の町でこれまでに410人の遺体を発見したと発表した。
ウクライナは2日、イルピンやブチャなどを含むキーウ周辺の全域を奪還したと発表した。その後、イリーナ・ウェネディクトワ検事総長は、身元の判明している140人の遺体を調査していると述べた。同検事総長はさらに3日、「ロシアの侵攻の証拠を収集・保存し、法と秩序を維持し、軍人の権利を尊重する」と話した。
ウクライナのドミトロ・クレバ外相は、ロシア軍が「計画的な大量殺人」を行ったと批判した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の報道官、セルゲイ・ニキフォロフ氏は3日、BBCの番組に対して、ブチャなどロシア軍から解放された地域では、民間人が手足を縛られ、後頭部を撃たれて処刑されていたと話した。証拠隠滅のため焼かれたかのような遺体も複数見つかったという。
西側諸国からも次々と「戦争犯罪だ」との声が上がっており、国連のアントニオ・グテーレス国連事務総長は、独自調査を呼びかけた。
国連の人権当局によると、ロシアのウクライナ侵攻でこれまでに民間人1400人超が死亡、2000人以上が負傷したもよう。実際の数はこれよりはるかに多いはずだと、国連は見ている。
キーウから約24キロ北西のブチャには現在、BBCを含む複数の報道機関が入っている。BBCのジェレミー・ボウエン中東編集長は、ウクライナ軍がこの町に入った段階で、少なくとも20人の遺体を発見したと報告。中には、後ろ手に縛られていた遺体もあったという。
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ロシア軍後退後、4月1日にブチャに入ったAFP通信記者は、路上で少なくとも20人の遺体を発見したという。そのうち少なくとも1人の男性は、両手を後ろに縛られていた。ロイター通信のカメラマンも、ブチャの路上に点在する複数の遺体や大破した車両、砲撃で大きな穴の開いた集合住宅などの様子を撮影している。
教会の敷地に穴、集団埋葬地か
ブチャのアナトリー・フェドルク町長はAFP通信に対して、280人を集団埋葬したと話した。ウクライナ軍司令官の1人は、18歳から60歳の男性がロシア兵に取り押さえられ、処刑されたと述べた。
アメリカの人工衛星企業マクサー・テクノロジーズは、ブチャの教会の敷地内に長さ13メートルの塹壕(ざんごう)が掘られているのを、衛星写真で確認したと発表した。

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写真は3月31日に撮影されたもので、集団墓地がある場所と一致するという。
マクサーによると、この地域では3月10日ごろからこの塹壕が掘られていた様子があった。
BBCはこの写真について独自に確認が取れていないが、米CNNは、この場所の集団墓地で遺体を見たと報じている。
ブチャ以外でも数々の遺体
ブチャとは別に、BBCのジェレミー・ボウエン中東編集長と取材チームはキーウ西郊の高速道路で、ロシア軍に殺害されたとみられる13人の遺体を発見。そのうち2人はかつて殺害の様子がドローン映像に捉えられていた民間人の夫妻で、他の犠牲者の一部はウクライナ兵だった可能性がある。
また、ウクライナのイリナ・ウェレシュチュク副首相は3日、ロシア軍に拉致されていたキーウ近郊モツジン村のオルハ・スヘンコ村長が、遺体で発見されたと発表した。
ウクライナの司法長官が3月26日、スヘンコ村長と夫が拉致されたことを明らかにしていた。AFP通信によると、ウェレシュチュク副首相は会見で、2人が「拘束状態で殺された」と説明した。
「ウクライナ全土が拷問を受けている」
ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、米CBSニュースの取材に通訳を通じて応じ、ウクライナの状況を「全土が拷問を受けている」と表現した。
ゼレンスキー大統領は、ウクライナはロシアに屈するつもりはなく、そのため破壊と皆殺しに遭っているのだと述べた。
取材の中でロシアの行動はジェノサイド(集団虐殺)かと問われると、「もちろんこれはジェノサイドだ。国全体と国民を撲滅しようとしている」と答えた。
その上で、「私たちはウクライナの市民だが、100以上の国籍が混ざり合っている。(ロシアは)これらの国民すべてを破壊し、皆殺しにしようとしている」と話した。
クレバ外相も、ロシアの目的は「できる限り多くのウクライナ人を殺すことだ」と非難。主要7カ国(G7)に対し、ロシアの石油やガス、石炭産業、貿易、金融セクターなどにさらに制裁を加えるよう訴えた。

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3日夜の米グラミー賞授賞式では、事前収録されていたゼレンスキー大統領の動画が流れた。大統領は「ウクライナの音楽家はタキシードではなく、防弾服を身に着け、病院で負傷者のために歌っている」と英語で述べ、ウクライナ国民は「生きて愛して音を出す自由のため」戦っているが、ロシアの爆弾が街に沈黙をもたらしていると話した。
その上で大統領は、ウクライナへの支持を呼びかけ、「沈黙しないでください」と求めた。
国連事務総長、ブチャめぐり独立調査を呼びかけ
グテーレス国連事務総長は3日、ブチャで起きた殺人疑惑をめぐり、独立した調査を行うよう呼びかけた。
同事務総長はツイッターで、「ウクライナのブチャで殺害された民間人の映像に深い衝撃を受けている。独立した調査が実際の説明責任につながることが重要だ」と述べた。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)も、ロシアがウクライナで戦争犯罪を犯した可能性が指摘されているとの声明を発表した。
「現時点で判明していることが、戦争犯罪や重大な国際人道法違反の可能性について、深刻かつ憂慮すべき問題を明確に提起している」
また、すべての遺体を掘り起こし身元を特定することで、「親族が知らせを受け取れること、そして正確な死因を確定し、説明責任と正義を確保すること」が重要だと指摘した。
各国首脳が非難声明
イギリスのボリス・ジョンソン首相は、ロシアによるブチャやイルピンでの民間人への「おぞましい攻撃」を非難。一連の行為は「戦争犯罪」だと述べ、「正義が行われるまで休まず動く」と表明した。
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、ブチャの状況を見て「腹を殴られたような衝撃」が走ったと述べた。CNNの取材でブリンケン氏は、「ロシアがウクライナで残虐行為を続ける限り、毎日こうしたことが現実に起きるということだ」と語った。」
北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ事務総長も、「欧州でここ数十年起きていなかった民間人への残虐行為」が行われたと述べ、「民間人が標的になり殺されることは全く許容できない恐ろしいことだ」と話した。
欧州連合(EU)のウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は、「ロシアが撤退した地域から報じられる言葉にできない惨事に動揺している」、「ただちに独立調査が必要だ。戦争犯罪の加害者は責任を問われるだろう」とツイートした。
侵攻開始以降、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と話し合いを続けているフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ブチャの写真は「見るに堪えないものだ」と語った。
その上で、「ロシア当局はこれらの犯罪について答える必要がある」と述べた。
ドイツのロベルト・ハーベック副首相は独紙ビルトの取材で、ブチャでの出来事は「恐ろしい戦争犯罪であり、答えを出さないわけにはいかないこと」だと述べ、制裁強化につながるとの見解を示した。
ロシアは「ウクライナの犯行」と主張
ロシア国防省は声明で、ブチャでロシア軍によって市民が傷つけられたという疑惑を否定している。
ブチャで撮影された写真などについては、「ウクライナ政権が西側メディアのために用意した作品 」だと主張。ロシア軍が町を占領している間、地元住民が暴力行為の犠牲になった事実はないとして、ロシア軍は3月30日にぶちゃから離れたと説明した。
こうした中、ロシア政府は4日、国連安全保障理事会の緊急会合を開くことを要求した。ロシアは、15カ国からなる同理事会の常任理事国の1つ。
ロシアのドミトリー・ポリヤンスキー国連次席大使は、「ウクライナの過激派による露骨な挑発行為に鑑みて」、安保理開催を要請したと述べた。
2月末の侵攻開始以来、ロシアは国連安保理で他国と頻繁に議論し、特にアメリカとは人権侵害の疑惑について非難の応酬を繰り返している。
オデーサでさらに爆発、ハルキウでも多数の犠牲者

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ウクライナ南部の港湾都市オデーサ(オデッサ)では、3日夜に爆発があったとの報道が相次いでいる。
地元メディアやロイター通信の目撃者証言について、同市当局はまだコメントを出していない。
黒海の戦略都市であるオデーサの人口は約100万人。3日の朝にはロシアのミサイル攻撃を受けた。
ウクライナ当局は、このミサイルが「重要なインフラ施設」に着弾したものの、犠牲者は出なかったと述べている。
ロシア軍はその後、ウクライナ軍がこの地域での供給に使っている石油施設を標的にしたと発表した。
一方、東部ハルキウ(ハリコフ)州のオレフ・シネフボウ知事は3日、ロシアの砲撃により多数の死者が出たと発表した。
同知事は、メッセージアプリ「テレグラム」で、「夕方に(ロシアの)占領軍はハルキウのスロビツキー地区を砲撃。残念なことに、民間人に死傷者が出ている」と説明した。
「現時点では、子供を含む23名の死傷者が出ている。数字は確認中のものだ」
マウリポリ制圧が「ロシアの主目標」=英国防省
イギリス国防省は3日、定例の戦況分析で、マウリポリ制圧が「ロシア侵攻の主要目的であることは、ほぼ間違いない」と発表した。
英国防省は、南東部で包囲されれているこの港湾都市が陥落すれば、ロシアは同国からロシアが実効支配するクリミア半島への陸上回廊を手に入れることになると述べた。

3日にも、ロシア軍がマウリポリの奪取に向けて激しい戦闘と無差別の砲撃を行ったと、再び報じられている。
しかし英国防省は、ウクライナ軍兵士は「頑強な抵抗を続け」、街の重要な部分をなお維持していると付け加えた。
マリウポリは、ウクライナの対ロシア戦争で最も大きな爆撃を受け、被害を受けている都市となっている。
(英語記事 War in Ukraine live page)












