ロンドン警視庁、英首相官邸のパーティー疑惑を捜査

英ロンドン警視庁は25日、新型コロナウイルス対策のための制限が敷かれていた時期に首相官邸などで開かれていた一連のパーティーについて、捜査を開始したと発表した。
デイム・クレシダ・ディック警視総監は、首相官邸や官庁街ホワイトホールで2020年以降にあった「COVID-19規制の違反疑惑」について捜査を進めていると説明。この件について内閣からの依頼で独自調査を進めているレベルアップ・住宅・コミュニティー省のスー・グレイ第二事務次官から警察に情報提供があったため、捜査に踏み切ったと述べた。
ボリス・ジョンソン首相の報道官は、首相は法を破ったとは思っていないと発表した。
BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長によると、グレイ氏の調査はすでに終わっており、26日にも内容が公表される予定。また、首相官邸は25日夜の時点でこの報告書に目を通しておらず、毎週水曜日の議会の首相質疑前には発表されない模様だと報じた。
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ジョンソン首相はこのところ、新型ウイルス対策の各種制限が敷かれていた間に首相官邸を含む政府機関で複数のパーティーが開かれていたことが発覚し、与野党から厳しい批判を受けている。
24日にも、イングランドが最初のロックダウンを経験していた2020年6月に、官邸でジョンソン首相の誕生会が開かれていたことが明らかになったばかり。ITVニュースによると、最大30人が集まり、「ハッピー・バースデー」の歌を歌い、ケーキを食べたという。
先には、2020年5月20日に首相官邸の庭で開かれた「飲み物持参制」の飲み会に参加したことが判明し、ジョンソン首相は議会で謝罪。「業務上のイベント」だと思っていたと説明した。
「深刻な懸念」
デイム・クレシダは、捜査対象となる人物や組織については述べなかった。また、規制違反が判明した場合には罰金が科せられるものの、警察による捜査によって「すべての出来事と関係者全員」が罰金の対象となるわけでないとした。
デイム・クレシダは記者会見で、首相官邸でパーティーが行われた疑惑について「国民が深刻な懸念」を持っていることや、国民がパンデミック中に「大きな犠牲」をはらったことを理解していると述べた。
また、2年も前のルール違反について警察が捜査することは「通常であれば適切な時間の使い方ではない」とした上で、一連の出来事がコロナ対策違反として「最も深刻で目に余る」ものにみえるため、捜査に踏み切ったと説明した。
今後、警察はこの件について「絶え間なくコメント」することはないものの、「大きな進展」については発表していくという。
首相は捜査を歓迎、野党は辞任要求
ジョンソン首相は25日の下院で、警察の捜査を歓迎すると発言。「国民が求めている事柄をはっきりと明確にしてくれるだろう」と述べた。
一方で、「議会と国民の皆さんに繰り返し伝えたいのは、私と政府は国民の優先事項に100%集中しているということだ」と話した。
財務省のマイケル・エリス主計長官も議員に対し、「捜査の行方を見守り、結論を先取りしないようにしよう」と呼びかけた。

一方、最大野党・労働党のアンジェラ・レイナー副党首は、あらためてジョンソン首相に辞任を要求。「この国を混乱させている」と批判した。
レイナー氏は、「首相官邸で違法行為があった可能性が出てきた」と指摘し、警察が首相官邸の捜査に踏み切ったこと自体が「この国の最高機関の深刻な不名誉」を表していると述べた。
自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首はBBCの取材に対し、ジョンソン政権は「メルトダウン状態だ」とコメント。「首相が真実を話せないから警察の捜査という事態になった。首相はうそをつき続け、議会とイギリス国民に不誠実でいる」と、辞任を要求する姿勢を示した。
与党内の不信任案の動きは
与党・保守党内でも、パーティー疑惑をめぐって首相に辞任を求める声が出ている一方、グレイ氏の調査結果を待つべきだと述べる議員もいる。
首相の指導力に疑問を持った保守党議員は、党首選を実施する権限をもつ「1922年委員会」に、不信任を伝える書簡を提出できる。
この書簡が54人分集まると党内で不信任投票が行われる。不信任案が可決されれば保守党の党首選が開かれる。
テリーザ・メイ政権のEU離脱担当相だったデイヴィッド・デイヴィス議員は19日、下院の首相質問に先立ち、警察の捜査は「この悪夢をさらに悪化させる」だろうと述べ、過去の政治家を引用して「神の名において、去りなさい」と強い調子で辞任を求めた。
別の保守党議員もBBCの取材に対し、ジョンソン氏は「首相にはとどまれない、この事態ではさらに不信任の書簡が増えるだろう」と語った。
一方で、これまではグレイ氏の報告を待っていた議員らが、今度は警察の意見を待つことになり、書簡の提出が遅れる可能性もあると話す閣僚経験者もいる。
こうした中、ジェイコブ・リース=モグ下院院内総務は、ジョンソン氏の指導力は「素晴らしいもの」で、政権はパンデミック中「驚くべき仕事を成し遂げた」と擁護した。
サー・エドワード・リー議員も下院で、「欧州が戦争になるかもしれない中、そして国内で生活費の危機が起きている中、首相が自分のオフィスで職員たちからケーキを1切れもらったことをめぐって、私たち(議員)はバランス感覚を持とう」と呼びかけた。

<解説>イアン・ワトソン政治担当編集委員
ジョンソン首相は、警察の捜査で物事が明確になるだろうと話した。だが首相は、何を願うかに慎重になるべきかもしれない。
この捜査で何が明らかになるのかは予想できないが、仮に首相が罰金を科せられなくても、職員に対する処罰が下らなくても、ジョンソン政権における首相官邸の「文化」についての疑問が浮き彫りになるだろう。
マーク・ハーパー元幹事長は、首相自身が警察の事情聴取を受けることになるのか、それが心配だと述べていた。
ジョンソン氏が、たとえ証人としてであろうと聴取を受けることになれば、ここ数週間で落ち込んでいる国民からの信頼を取り戻す助けにはならないだろう。
また、首相が求めている「明確さ」が明らかになるまでに時間がかかり、政治的な痛みが長引くこともあり得る。

<分析>ダニエル・サンドフォード内政担当編集委員
今回の捜査は政治的にも非常に重要だが、捜査そのものは非常にシンプルなものになる。
これはいわゆる「略式起訴」犯罪と言われるもので、最も重い罰も罰金にとどなる。不服申し立てが行われても、イギリスの司法機関で最も下位に位置する治安判事裁判所でのみ審理される。
そのため、非常に詳細で込み入った捜査を行うのはやりすぎと言えるかもしれない。
ロンドン警視庁は今後、疑惑のあるパーティーのうちどれが違法行為に当たるかを捜査する。焦点となるのは、誰が出席していたかだ。
足を使った調査の大半は、すでにグレイ第二事務次官の調査チームが行ってしまっただろう。
なので警察は電子メールや監視カメラ、入館証の記録、そしてグレイ氏や警察が聴取した個人の証言などを見ていくことになる。
また、特定のパーティーの場にいた人のうち、相応の理由があったのは誰かを突き止めていく。
参加者には相応の理由があった者と、そうでない者がいるはずだ。
自分の仕事場がパーティー会場になった人などは、法的にも正しい側にいたことになる。しかし、これが当てはまらない人もいるだろう。











