バイデン米大統領、アフガニスタン撤収の判断を堅持

Biden

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画像説明, 「自分の決定を断固として堅持」とアフガニスタン撤収についてバイデン氏は述べた(16日、ホワイトハウス)

駐留米軍のアフガニスタン撤収後、武装勢力タリバンがアフガニスタンを瞬く間に制圧した事態に、内外から厳しい批判を浴びているジョー・バイデン米大統領は16日、ホワイトハウスで演説し、「自分の決定を断固として堅持する」と述べた。

バイデン氏は、タリバンが支配下に置いた首都タリバンの様子に「断腸の思い」だとしながらも、「米軍撤収に適したタイミングなどはない」と述べた。

「あと何人、アメリカ人が命を失えばいいのか」とバイデン大統領は述べた。週末をワシントン近郊の大統領別荘キャンプ・デイヴィッドで過ごしていたバイデン氏は、ホワイトハウスへ戻り、アフガニスタン情勢について約1週間ぶりに公的に発言した。

バイデン氏はさらに、「自分の決定が批判されるのは承知している。しかし、この決定を次のアメリカ大統領に、実に5人目に引き継ぐよりは、自分があらゆる批判を受けた方がいい。これが正しい決定で、これがアメリカの人たちにとって正しい決定だからだ」とも述べた。

バイデン氏はこの演説後、アフガニスタンからの難民・移民受け入れ支援のため、最大5億ドル(約550億円)を緊急的に拠出すると発表した。

AFP通信によると、タリバンは17日、全ての政府職員に恩赦を提供すると発表した。「普段通りの生活を、完全に自信をもって再開するべきだ」と呼びかけている。

「予想より早く展開した」

動画説明, バイデン米大統領、アフガニスタン撤収を堅持 批判は承知と

バイデン氏は16日の演説で、タリバンによる全国制圧という事態が「予想していたより早く展開した」と認めた。バイデン氏は7月初め、タリバンが全国を掌握するのは「きわめてあり得ない」と記者団に話していた。

「事態は予想より早く展開した。ではいったい何が起きたのか? アフガニスタンの政治指導者たちは諦めて国から逃げ出した。アフガニスタンの軍は、時には戦おうともしないまま、崩壊した」

「むしろ、ここ1週間の出来事から、アフガニスタンでのアメリカの軍事的関与を今終わらせるのは正しい決定だったと、改めて確認できた」とバイデン氏は言い、「アフガニスタン軍が自ら戦おうとしない戦争で、アメリカの兵士が戦って死ぬことはできないし、そうするべきではない」と強調した。

「アフガニスタン特殊部隊や兵士には、きわめて勇敢で有能な人たちもいる。しかし、アフガニスタンが現時点でタリバンに本格的に抵抗できないなら、現地に米兵があと1年いても、あるいはあと5年や20年いたとしても、大差はあり得ない」

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バイデン氏はさらに、アフガニスタンにおける米軍の任務は、決して国造りではなかったはずだと述べ、2009年にバラク・オバマ政権の副大統領だった当時も、アフガニスタンへの増派に反対したと指摘した。

「我々は20年近く前、明確な目標をもってアフガニスタンに向かった。2001年9月11日に我々を攻撃した者たちを捕らえること、そしてアルカイダが二度とアフガニスタンを拠点にして、我々を攻撃しないようにすることだ。それは達成した。アルカイダとアフガニスタンの能力を激しく奪った。オサマ・ビンラディンの追跡を決して諦めず、ついに見つけた。あれが10年前だ」

「アフガニスタンにおける我々の任務は、決して国造りではなかったはずだ。統一され中央集権化された民主国家を造ることではなかったはずだ。アフガニスタンにおいて我々に欠かせない国益はただひとつ、今もこれまでと一緒で、アメリカ本土へのテロ攻撃を防ぐことだ。私はもう何年も前から、我々の任務は反乱鎮圧でも国造りでもなく、対テロ作戦に狭く限定するべきだと力説してきた」と、バイデン氏はあらためて強調した。

トランプ政権の決定を引き継いだ

大統領は、タリバンと交渉して今年5月までに米軍を撤退させると合意したドナルド・トランプ前政権の決定を、自分は引き継いだのだとも述べた。

米同時多発テロを機にアメリカはアフガニスタンに侵攻し、20年間駐留を続けた。昨年2月になると、トランプ前政権が今年5月1日までに米軍を撤退させるとタリバンと合意。バイデン大統領は今年4月、米同時多発攻撃から20年を迎える9月11日までにアフガニスタンの駐留米軍を完全撤退させると表明した。

7月2日深夜に米軍の大半が撤収すると、タリバンは次々と国内の主要都市を制圧。タリバンは15日には首都カブールに迫り、アシュラフ・ガニ大統領の出国と共にアフガニスタン政府は崩壊した。タリバンの電光石火の急進撃は、多くの専門家にも衝撃を与えた。

米軍撤収をきっかけにしたタリバンの全国制圧と、それに伴う激しい混乱について、バイデン大統領は内外から厳しい批判を浴びている。15日から16日にかけて、カブール空港ではタリバンから逃れようとする市民が押し寄せ、大使館職員らを乗せた飛行機によじ登ろうとしたり、しがみついて落下するなど、事態は混乱を極めた。

動画説明, カブール空港で大混乱 タリバン逃れようと数千人押し寄せ

米軍関係者は米CBSニュースに対して、武装して空港に侵入しようとしたアフガニスタン人2人を米兵が射殺したと明らかにした。

現地採用の大使館職員やその家族などを乗せて離陸しようとする米空軍機にしがみついていた複数人が、落下して死亡したという情報もある。

16日のカブール空港では7人が死亡したという。

米紙ワシントン・ポストは米政府関係者者の話として、16日にカブールを離陸した米輸送機の車輪格納部から、人の遺体が見つかったと伝えた。車輪を収納できなかったため近くの国に迂回(うかい)して着陸し、点検したところ、遺体があったという。

さらに、ソーシャルメディアで広く拡散している空港での動画に、離陸した飛行機から人が2人落下するように見えていることについて、この政府当局者は「実際にあった」ことだと話したという。

一方、米防衛専門サイト「Defense One」の記者は、カブールを出発した米空軍機内にアフガニスタンの民間人約640人が乗った様子として写真をツイッターに掲載した。米軍から入手した写真という。出国許可を得て飛行場に出ていた人たちがC-17機に乗り込み、定員を超えていたものの、クルーは離陸することにしたという。

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アメリカでの世論調査によると、大多数のアメリカ人はアフガニスタンからの撤収を支持している。

バイデン政権のジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は16日午前、米NBCに対して、アフガニスタンがタリバンに制圧されたのは、国民が自分たちを守る「意志」を欠いていたからだと述べた。

共和党は批判

バイデン大統領の演説を受けて、野党・共和党からは批判が相次いでいる。

党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務は、アフガニスタン情勢を「紛れもない大惨事」と呼び、「バイデン政権による撤退は、アメリカの評判に汚点を残す。こんな形で行われなくても良かったはずだ」と述べた。

マーコ・ルビオ上院議員は、「撤収したことが問題なのではなく、どうやって撤収したかが問題だ。混乱をもたらすのが必至の行程表で、アルカイダの復帰と復活を防ぐ計画もないままに」とツイートした。

下院軍事委員会の野党筆頭委員マイク・ロジャース議員は、「(バイデン氏の)言葉はタリバンの抑圧的な独裁の下で今後暮らさなくてはならない女性や子供たちにとって、何の慰めにもならない」と述べた。

下院外交委員会の野党筆頭委員マイケル・マコール議員も、「大統領の演説はまったく受け入れられない。目下の問題は、撤収すべきかどうかではない。問題は、その撤収が引き起こす悪影響に大統領が備えていなかったことだ。共和党も民主党も、何カ月も前から大統領に準備するよう懇願していた。なのに彼は何もしなかった」と批判した。

ガニ大統領が大金と共に逃亡=ロシア報道

ロシアの国営通信RIAは、在カブールのロシア大使館報道官の話として、アシュラフ・ガニ大統領は「現金をぎゅうぎゅうに詰め込んだ車4台とヘリコプターで、国を脱出した」と伝えた。ニキータ・イシュチェンコ報道官が「複数の目撃者」の話として明らかにしたという。

ロシアのアフガニスタン大使ドミトリー・ジルノフ氏は地元ラジオに対して、タリバン支配下のカブールの状況は「アシュラフ・ガニの時よりましだ」と話した。

taliban

アフガニスタン情勢の変化:アメリカの作戦展開とタリバンの進攻

2001年10月: 9月11日の米同時多発攻撃を受け、ブッシュ米政権主導によるアフガニスタン空爆開始

2009年2月: アメリカはさらに兵士1万7000人の増派を決定。NATO加盟国もアフガニスタンへの増派などを約束

2009年12月: バラク・オバマ米大統領(当時)は、アフガニスタン駐留軍を3万人増員し、計10万人に拡大すると決定。一方で、2011年までに撤退を開始すると表明

2014年10月: アメリカとイギリスが、アフガニスタンでの戦闘作戦を終了

2015年3月: オバマ大統領が、駐留軍の撤退延期を発表。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領の要請を受けたもの

2015年10月: オバマ大統領が、2016年末までは兵士9800人をアフガニスタンに残すと述べた。これ以前は、1000人を残し全軍を撤退させると約束していた

2016年7月: オバマ大統領は「安全保障上の不安定な状態」を理由に、2017年には米兵8400人が駐留すると発表。NATOも駐留を継続することに合意したほか、2020年までアフガニスタン政府軍への資金援助を続けると強調した

2017年8月: ドナルド・トランプ大統領(当時)が、タリバンの勢力拡大を受けた増派表明

2019年9月: アメリカとタリバンの和平交渉が決裂

2020年2月: 数カ月におよぶ交渉の末、アメリカとタリバンがドーハで合意に至る。アメリカは駐留軍撤退を約束

2021年4月: ジョー・バイデン大統領、9月11日までに駐留米軍を完全撤退させると表明

5月: 米軍とNATO各国軍の撤退開始

5月: タリバン、南部ヘルマンド州でアフガニスタン軍へ大攻勢開始

6月: タリバン、伝統的な地盤の南部ではなく、北部で攻撃開始

7月2日: カブール北郊にあるバグラム空軍基地から、米軍やNATO加盟各国軍の駐留部隊の撤収完了

7月21日: タリバンが半数の州を制圧と米軍幹部

8月6日: 南部ザランジの州都をタリバン制圧。タリバンが新たに州都を奪還するのは1年ぶり

8月13日: 第2の都市カンダハールを含め4州都がタリバン支配下に

8月14日: タリバン、北部の要衝マザーリシャリーフを制圧

8月15日: タリバン、東部の要衝ジャララバードを無抵抗で制圧。首都カブール掌握