イラン大統領選、保守強硬派のライシ師が当選

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18日に投票が行われたイランの大統領選挙で、司法府の代表で保守強硬派のエブラヒム・ライシ師(60)が約62%の得票率で勝利した。イラン国内ではライバル候補の出馬が認められなかったことに批判もある中、人権団体やアメリカ、イスラエルなどがこの結果に懸念を示している。
ライシ師は、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の側近。過去には政治犯の処刑に携わったとされ、アメリカから経済制裁を受けている。
勝利演説でライシ師は、政府への信頼を強化し、イラン全体のリーダーになると約束。「私は勤勉で、革命的で、反汚職の政府を作る」と述べたと国営メディアは伝えた。就任式は8月に行われる予定。
一方、イランの有権者の多くは、今回の選挙はライシ師に有利に運ぶよう計画されていたとみている。投票率は48.8%と、2017年の前回選挙の70%超を大きく下回った。
アメリカ政府は、イランの人々が「自由で公正な選挙手続きのもとで指導者を選ぶ権利を否定された」ことを残念に思うと述べた。
ライシ師とは
ライシ師は検事出身。早くから強力な立場を確保し、20歳のころにはすでに、カラジ市の検事長を務めていた。
2017年に大統領選に初出馬したものの、現職のハッサン・ロウハニ大統領に大敗。その後、2019年に司法府のトップ就任した。
ライシ師は、自身を汚職や不平等、経済問題を解決する政治家として見せている。イスラム教シーア派の厳格な信徒でもあり、ハメネイ師の後継者とも目されている。
しかし、多くのイラン国民や人権擁護団体は、ライシ師が27歳の1988年に、大勢の政治犯が処刑された出来事に関わったものとみている。
この年、イランのテヘラン近郊の刑務所で約5000人が密かに死刑を宣告・執行されたが、ライシ師はこの死刑を取り仕切った「死の委員会」と呼ばれる4人の司法官の1人だったとみられている。人権団体アムネスティ・インターナショナルは、受刑者の遺体が埋められている集団墓地の場所は「イラン当局にが隠している」と指摘している。
ライシ師はこの件について関与を否定する一方、当時の最高指導者ホメイニ師によるファトワ(イスラム法に基づく勧告)により、正当性があることだったと述べている。
アムネスティ・インターナショナルはまた、2019年の反政府デモの参加者を殺害した治安部隊員を、ライシ師が司法府トップとして免責したと指摘している。
同団体のアニエス・カラマール事務局長は、「エブラヒム・ライシ氏は殺人、誘拐、拷問といった人道に対する罪について捜査される代わりに大統領にまで上り詰めたなった。これは、イランでは今なおこうした罪が許されてしまうという、厳しい現実が浮き彫りになった」と述べた。
自由な選挙だったのか
今回の大統領選には40人の女性を含む600人近くが立候補者として登録した。
しかし実際に出馬が認められたのは、監督者評議会が認めた7人の男性立候補者だけだった。その後、投票日までに3人が出馬をとりやめた。
経済誌エコノミストによると、そのうちの1人、改革派のモフセン・メフザリザデフ氏は立候補を取り下げる前に、この大統領選は出来レースになるだろうと発言していた。
また、出馬を禁止されたマフムード・アフマディネジャド元大統領は投稿した動画で「私はこの罪に加担しない」と述べ、投票を棄権すると発表していた。
イスラエルが懸念表明
今回の大統領選の結果については、イスラエルが特に深い懸念を示している。
外務省のリオル・ハイアト報道官は、ライシ師はこれまでで最も過激派のイラン大統領になると指摘。また、イランが核開発の動きを加速させるだろうと警告した。
また、1988年の死刑執行についても触れ、ライシ師を「テヘランの虐殺者」と呼んだ。
イランとイスラエルは、長い間「影の戦争」とも呼ばれる敵対関係にある。全面戦争は避けているものの、お互いに報復措置を取るなど両国間の緊張感は高まっている。
宗教問題やシリア内戦への介入など複雑な状況が絡んでいるが、中でも焦点となっているのはイランの核開発だ。
イラン政府は、昨年11月に同国で最も著名な核科学者モフセン・ファクリザデ氏がで暗殺された事件や、今年4月のウラン濃縮施設攻撃について、イスラエルの犯行だとの見解を示している。
一方のイスラエルは、イランの核開発は平和目的ではなく、同国が核兵器の開発を進めていると主張している。
2015年の核合意をめぐっては20日、ウィーンで加盟7カ国が協議を行うと欧州連合(EU)が発表している。










