イラン外相、イスラエルへの報復を宣言 核施設が「テロの標的に」

A handout picture made available by the Iranian presidency shows a technician working inside the Natanz uranium enrichment plant during a video conference with President Hassan Rouhani on the occasion of Iran Nuclear Technology Day (10 April 2021)

画像提供, EPA

画像説明, ナタンズのウラン濃縮施設(10日撮影)

イランのムハンマド・ジャヴァド・ザリフ外相は12日、同国ナタンズの原子力開発施設が「核テロ」の標的になったとして、イスラエルに報復措置を取ると宣言した。

イラン国営メディアは12日、ザリフ外相が「シオン主義者(パレスチナにユダヤ人の民族的拠点を再建しようとする人)は、我々が(核開発をめぐる)制裁解除に向けて前進したため復讐しようとしている」、「我々はシオン主義者に復讐する」と述べたと伝えた。

イランはかねて、イスラエルの存在権を認めておらず、同国をしばしば「シオニスト国家」と呼んでいる。

イラン外務省のサイード・ハティブザデ報道官はその後、首都テヘランでの記者会見で、11日のナタンズへの攻撃の背後には「もちろん」イスラエルがいると述べた。

「今回の出来事では幸いなことに人命や環境への被害はなかった。しかし、大惨事になっていたかもしれない。これは人類に対する犯罪行為であり、このような行為はシオニスト政権の本質に沿ったものだ」

同報道官は、今回被害を受けたのは最も効率の悪い「IR-1」型の遠心分離機だけだったとし、最新型に交換する方針だと述べた。

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同施設ではウランを濃縮するための高度な遠心分離機が稼動したばかりだった。

イスラエル側はコメントを出していないが、イスラエルの公共放送は情報機関筋の話として、イスラエル諜報機関モサドによるサイバー攻撃の結果だと報じている。実際の被害はイラン側が報告している以上に大きいとしている。

アメリカの情報機関筋が米紙ニューヨーク・タイムズに語ったところによると、大規模な爆発が発生し、地下施設内の遠心分離機に電力を供給する内部電源システムが完全に破壊された。同施設でのウラン濃縮を再開するには少なくとも9カ月かかると、この情報筋は推定している。

イラン国家安全保障最高評議会と提携するヌール通信は、「主犯格」を特定し、逮捕にむけた作戦が進行中だと情報機関筋が述べたと報じた。

核合意めぐる外交努力は

イランの核開発については、2018年にドナルド・トランプ前米大統領が破棄した2015年の核合意を回復させる外交努力が始まったばかり。

欧州連合(EU)はナタンズの施設で起きたことを明らかにする必要があるとしつつ、「核合意に向けた外交努力を損なったり弱めたりするいかなる試み」も拒否するとした。

イスラエルを訪問中のロイド・オースティン米国防長官は、同施設に関する報道は承知しており、イランと外交的に再交渉するためのバイデン政権の外交努力を継続すると述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はオースティン氏との共同記者会見で、この出来事には言及しなかったが、「私の政策は(中略)明白だ。イランが核能力を手に入れ、イスラエルを抹殺するという大虐殺を実行することは決して許さない。そしてイスラエルは、イランによる侵略とテロ行為から自らを守り続ける」と述べた。

Map showing location of underground enrichment sites and July 2020 fire at Natanz uranium enrichment plant, Iran
画像説明, 上図:イラン・ナタンズ(Natanz)のウラン濃縮施設と首都テヘラン(Tehran)の位置関係。下図:2020年7月に火災が起きた組立工場(Location of July 2020 fire)、地下の濃縮施設(Underground enrichment sites)、遠心分離機施設(Centrifuge laboratories)の位置関係 出典:国際戦略研究所(IISS)、マクサー・テクノロジーズの2021年4月3日の衛星画像
Presentational white space

ナタンズの施設が破壊工作の標的になったのは今回が初めてではない。

昨年7月には遠心分離機の組立工場で火災が発生し、大きな被害を受けた。

この施設での濃縮作業はコンピュータウイルス「スタックスネット」によって中断されたことがある。このウイルスはアメリカとイスラエルが作成したものと広く考えられている。2010年に見つかったこのウイルスは、遠心分離機の回転速度を変化させるもので、約1000基の遠心分離機が壊れたとされる。

また、イランで最も著名な核科学者モフセン・ファクリザデ氏が昨年11月にテヘラン近郊で暗殺された事件についても、イランはイスラエルが関与しているとして非難している。イスラエル側は関与について肯定も否定もしていない。

ここ数カ月では、イランとイスラエルは自国の商業船が攻撃を受けたとして、互いを非難している。

核合意をめぐる動き

核合意では、イランでのウランの濃縮率を3.67%と定めている。濃縮率90%以上のウランは核兵器に使用される。

トランプ前米大統領は、この核合意は「殺人を好む政権が平和的な核エネルギー事業しか望んでいないという壮大なフィクション」に基づいていると批判し、イランに代わりの合意を交渉させるため、経済制裁を科していた。

これに対し、イランは核兵器開発を行う予定はないと反論し、核合意の規定を次々と破ることで対抗している。

ウラン濃縮のための先進的な遠心分離装置を導入したのに加え、国連の核施設視察を阻止し、ウラン濃縮を推進できる新法を制定。ウランの保有量も拡大させている。