アメリカ、新型ウイルスワクチンの特許放棄を支持 途上国が要求

画像提供, Reuters
米政府は5日、新型コロナウイルスワクチンについて、世界貿易機関(WTO)で提案された知的財産権の保護の放棄を支持すると表明した。
新型ウイルスワクチンの知的財産権の放棄はインドと南アフリカが提案したもの。両国は約60カ国とともに、世界中のワクチン生産量を拡大できるとして、過去半年間にわたりワクチンの特許の無効化を求めていた。
しかし医薬品メーカーは、期待するほどの効果が得られない可能性があると主張している。
米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は「異例な時代には異例の手段が必要」と述べた。ただ、WTO加盟国がこの問題について合意するには時間がかかるだろうと警告した。
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インドと南アフリカの提案をめぐっては、アメリカのドナルド・トランプ前政権やイギリス、欧州連合(EU)から強い反発があがっていた。
しかしトランプ氏の後任のジョー・バイデン大統領は異なる方針を打ち出している。2020年の米大統領選挙戦でも特許放棄を支持していた。
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、新型ウイルス感染症COVID-19との闘いにおける「記念すべき瞬間」だと述べた。
知的財産権の放棄は何を意味する?
知的財産権の放棄がWTOで承認されれば、ワクチンの生産量を増やすことができ、裕福でない国に手頃な価格でワクチンが提供できるようになると、賛成派は主張している。
多くの発展途上国は、特許や知的財産の保護を義務付ける規則が、パンデミックに対処するのに必要なワクチンやその他製品の生産拡大を妨げていると主張している。
アメリカはこれまで、インドと南アフリカが提案した、製薬会社の知的財産を活用して途上国がワクチンを生産できるようにするための知的財産権放棄案に関するWTOの交渉を阻止してきた。
USTRのタイ代表は、アメリカは権利放棄を実現するためにWTOでの交渉に乗り出すと説明した。WTOでの承認には164の全加盟国の合意が必要なため、承認までに時間がかかる可能性がある。
製薬業界の反応は
WHOのテドロス事務局長はアメリカの判断は「歴史的」であり、新型ウイルス感染症「COVID-19との闘いにおける記念すべき瞬間」だと評価した。
一方で製薬会社は、ワクチン生産において特許が最大の障害ではないと主張。こうした動きが技術革新を阻害しかねないと警告した。
国際製薬団体連合会(IFPMA)は「権利放棄は複雑な問題に対する無知で間違った解答」であり、今回の動きに「失望した」と述べた。
米ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの上級研究員、アメシュ・アダルジャ博士はロイター通信に対し、権利放棄は「そもそもCOVID-19ワクチンの開発を可能にした、技術革新と投資を行った製薬会社の知的財産を奪うものだ」と指摘した。










